2022年6月17日、アメリカ合衆国エネルギー省(DOE)が主導する「住宅向けの寒冷地用ヒートポンプ技術チャレンジ」において、アメリカのテキサス州リチャードソンに本拠を置くLennox International(レノックス・インターナショナル)の開発したプロトタイプが要求される基準を満たしたことが発表されました。冬になると厳しい寒さに襲われるアメリカ北部の住宅に高効率なヒートポンプを導入することで、エネルギーコストの削減や環境保護に役立つと期待されています。

DOE Announces Breakthrough in Residential Cold Climate Heat Pump Technology | Department of Energy

https://www.energy.gov/articles/doe-announces-breakthrough-residential-cold-climate-heat-pump-technology

国土の広いアメリカでは毎年厳しい寒さに襲われる地域も多く、建造物の二酸化炭素排出量の46%は空調や給湯によるものであり、アメリカの住宅や商業設備で使用される一次エネルギーの40%以上を占めています。また、全建造物におけるエネルギーコストの42%、一般家庭における電気代の56%が空調や給湯によるものだそうです。

そのため、高効率なヒートポンプの開発・配備は一般家庭の公共料金を年間500ドル(約6万8000円)も削減すると推定されており、2050年までに二酸化炭素排出量をゼロにするという環境目標の達成にも必要不可欠です。

そこでDOEは2021年、アメリカの寒冷地において住宅用の高効率ヒートポンプの配備を加速させるため、「住宅向けの寒冷地用ヒートポンプ技術チャレンジ」というプロジェクトを立ちあげました。このプロジェクトではエネルギー関連機関や民間企業と協力し、より環境に優しい効率的な方法で寒冷地の住宅を温めるヒートポンプの開発を進め、一般住宅の次世代ヒートポンプ導入にも補助や支援を行うとしています。

「住宅向けの寒冷地用ヒートポンプ技術チャレンジ」にはダイキンや三菱電機、LGなどのメーカーが参戦しています。今回DOEは、レノックス・インターナショナルが開発したプロトタイプが、DOEの要求する基準を満たしていたと発表しました。レノックス・インターナショナルのプロトタイプは従来の2倍の効率を持ち、セ氏-15度の環境で100%の効率を発揮し、-26度〜-15度の環境でも70〜80%の効率を発揮するとのこと。



DOEのジェニファー・グランホルム長官は、「DOEの『住宅向けの寒冷地用ヒートポンプ技術チャレンジ』はヒートポンプの冷暖房効率とエネルギー使用効率を向上し、消費者にとってより魅力的な選択肢とするようにアメリカの企業に求めています。レノックスは最新のプロトタイプでこの要求に応えたのです」「新興のクリーンエネルギー市場に参入することは、テキサス州や全米の地域社会において製造業の強化、高収入の雇用、より明るくクリーンな未来をもたらす大きな経済的機会なのです」と述べました。

レノックスやその他のメーカーが開発したプロトタイプは今後2年間にわたって寒冷地でテストされ、冬季にどれほどの性能や快適性を発揮するのかを確かめた上で、2024年の商業展開が予定されているとのことです。