※この記事は2015年09月01日にBLOGOSで公開されたものです

プリウスPHVの開発責任者を務める豊島浩二氏（撮影：田中丸善治） 写真一覧
ガソリンエンジン＋モーターというパワーユニットで駆動するハイブリッド車、いわゆる環境対応車の先駆けとして登場して以来、グローバルマーケットにおいて累計約700万台を売り上げ（トヨタ調べ／2014年9月末時点）、今や「世界の常識」となったプリウス。 そのプリウスの進化形として、2011年11月にリリースされたのがプリウスPHVだ。

ちなみに、名前にある「PHV」とは「プラグイン・ハイブリッド・ビークル」の頭文字をとったもので、某アイドルグループがCMで“充電プリウス”と歌っていたのを覚えている方も多いだろう。低燃費なプリウスがさらに充電も出来るように進化したというのである。つまりは、ガソリンエンジン＋モーターのハイブリッド走行に加え、外部から取り込んだ（充電した）電気をバッテリーに蓄えることでプリウスに比べ格段に優れたEV走行性能を有することが最大の特徴となっているのだ。

とは言え、カタログやHPをぼんやり眺めていても、「プリウスよりどんな所が優れているの？」「電気自動車とどう違うの？」「コストパフォーマンスは本当に高いの？」など、わからないことが多いのも正直なところではないだろうか。今回はユーザー目線で生じるそれらの疑問を払拭すべく、プリウスPHVの開発責任者（CE）を務める豊島浩二氏にわかりやすく解説していただいた。

電池寿命、充電時間を考慮した結果としてのEV走行距離26.4km


冒頭でも触れたが、プリウスPHVのEV走行距離(充電電力使用時走行距離)は26.4km(※1※2)で、EV走行時も最高速度100km/hで走行することが可能。プリウスのEV走行時の最高速度約55km/h以下という条件で数百ｍから2km程度(※3)で解除されてしまうことを考えれば極めて優秀だ。一方で、内燃機関（エンジン）を持たないピュアEVの走行距離が100 ～200 km程度とされているので、それに比べると26.4km(※1※2)というのは少々心許ない数字でもある。

『そのような声は多いです。ただ、国交省が算出している道路交通センサスというデータによると、クルマに乗られている方が一日で走る走行距離がだいたい30kmとされているので、26.4km(※1※2)あればガソリンの消費量を効率的に削減できると考え、この数字にしました。

例えば携帯電話などもそうですが、半分ぐらいなくなると心配になって充電していませんか？ それはおそらく日本人の特性だと思いますが、本来は「使い切って充電、また使い切って充電」という使用方法が電池にとって優しい使い方なんです。なので、クルマの場合もやはり1トリップで「使い切る量」ということを重視すると、電池の寿命も含めて適切ではないかと考えます。

また、26.4km(※1※2)相当のバッテリーだからこそ、200Vで約1.5時間、100Vでも約3時間(※4)もあれば満充電できる。これによって自宅での充電作業の負担も減りますし、ちょうどいい数字だと思います』

プリウスPHVにとって必要な電気インフラは家庭にこそある


充電と言えば気になるのが充電スポットの数＝インフラの問題だ。せっかくのEV走行性能もバッテリーが空っぽでは意味がないし、そもそもガソリンスタンドのように「ちょっと走れば」といった気軽な感覚で探して見つかるものなのだろうか。

『充電スポットではガソリンスタンドに比べ1日にこなせる台数が圧倒的に少ないので、行政をはじめ「とにかく充電機の設置箇所はできるだけたくさん……」という取り組みはなされています。とは言え、現状では十分と言える数字ではないでしょう。それを補うべく弊社の採用ナビゲーションであるG-BOOKや、eConnect(＊)というスマホアプリでも充電スポットが検索できるようにしています。

ただ、インフラ問題はピュアEVの場合と混同されがちなのですが、そもそもプリウスPHVにとって必要な電気インフラは家庭（自宅）にこそあるということをご理解いただきたいんです。満充電で行って帰って来る距離が26.4km(※1※2)。それ以上遠くへ行きたい時はエンジンを始動させてハイブリッドとしてお使いいただけばよいのです。充電し忘れたからって次の日クルマが動かなくなるわけではない。それがEVにはない、プラグイン・ハイブリッドの特有の安心感なんですよね。

最近では、高速道路のSA・PAで急速充電器の取り合いになっているなんていう話も聞きますが(※5)、 プラグイン・ハイブリッドが普及すればそんな状況も解消されるのではないかと思います。

その一方で、プラグイン・ハイブリッドが普及するためには、例えば集合住宅にお住まいの方や外の平置き駐車場を借りている方のような自宅に充電設備を持たない方でも、積極的にプリウスPHVをお選びいただけるようにすることが必要です。 そのための活動の一環として、EVやPHVを展開する自動車メーカーさん等と協力して 「日本充電サービス」という会社を作り、環境整備の推進を図っています。

プリウスPHVでは、プリウスを上回る“上質な乗り心地”を実現


ここまでのお話でインフラに対する不安は解消できたとして、やはりハッキリさせておきたいのがEV走行性能の向上という付加価値、補助金を差し引いたとしてもプリウスの同グレード相当より約40万円(※6)高い車両価格である。1ℓのガソリン代にすら目を光らせる堅実な経済観念を持つユーザーであれば、この差額は見過ごせないハズだ。

『まず装備面だと、シートヒーターやステアリングヒーターなどの快適装備が追加された他、内装の質感なども若干変更してあります。感覚的な話になってしまうのですが、わたし個人の意見を言えば12、3万円の装備的価値があるのではないかと思います。残り30万円、それが純粋なEV走行性能としての価格となりますね。電気代が少し上がったもののガソリン代に比べてメリットがあって、EV走行の使用状況や頻度によりますが数年で元が取れる方もいると思います(※7）。

少し専門的な話になりますが、そのEV走行性能について詳しく説明しますと、まずプリウスがニッケル水素（6.5Ah×28個）なのに対しPHVはより高効率なリチウムイオン（21.5Ah×56個）を搭載していますので、バッテリーの容量や種類、性能からして違います。そもそもプリウスPHVでもEVモード(※1)に必要な電力を使い切ったらエンジン＋モーターで走るハイブリッド車（従来型のプリウスと同じ）になるのですが、その際はいかにエンジンをかけない（ガソリンを使用しない）で走行できるかがカギとなり、それには走行中に発生するエネルギーを電気として処理するバッテリーのスペックが大きく影響してきます。PHVの場合、その能力がプリウスより高いので、走行中のエンジンの稼働率をより抑えることができます。その結果、実際の燃費もPHVの方がHVよりもよくなるのです。

また、バッテリーを多く積む分、車両重量は同グレードとの比較で約60～70kg程度増えていますが、前後質量配分でプリウスがおよそ61：39なのに対し、プリウスPHVはリヤの方に比重が増すことでリヤタイヤの接地荷重が上がり、回頭性も直進安定性もよくなっています。FR（後輪駆動）車のそれと近い現象と言えますね。なので、スタイリングやパッケージはほとんど同じでも、乗り心地と操縦安定性という意味でもプリウスPHVの方がプリウスよりやや上質になっています。実際に乗り比べてもらえればはっきりわかると思いますよ。

「災害に強く有事に役立つクルマ」としてのプリウスPHV


我々一般的なユーザーは、ともすれば40万円(※6)という値段に対する物質的な費用対効果にとらわれがちだが、プリウスPHVにはそれだけではない「目に見えない価値」というものが存在するのだ。その「目に見えない価値」として豊島CEは最後に以下のような面白い話をしてくれた。

『プリウスPHVのメリットとして、充電ポートから給電もできる「外部給電機能」が備わっています。要はクルマをロックした状態で使用することができるのですが、実際にはその機能をご存知ないお客様がほとんどでした。そこで、その機能をもっと広く知ってもらおうとプリウスPHVを持ちだして電子レンジ(※8)につないでみせるなど、各所でお披露目をしています。昨年1年間だけでも相当数訪問しましたね。「1台につき1500W(※9)ですが、75万台集めると100万KWの最新型発電所1基分に相当するんですよ！」なんて話をしながら。

75万台って実はトヨタが1年間に売るハイブリッドの台数にほぼ匹敵するんです。トヨタのハイブリッド車には必ず、発電機とエンジンとバッテリーが付いていて、取り出そうと思えば電気を取り出すことができるんです。そんなクルマがもっともっと増えれば災害に強い国になるということで、桜の花びら一枚をプリウスPHVやプリウス1台（1500W※9）と見立てて、それが5枚集まれば花になり、それがたくさん集まれば木になり、木がもっと集まれば日本全体を埋め尽す…。そうした願いを込めて「SAKURAプロジェクト」と題し、各地の学校などを回って防災キャンプを実施しているんです。

あるとき、そのキャンプに組み立て式のライト(※8)を持って行ったのですが、参加してくれた生徒たちの中に、「暗くなってきてだんだん不安になったけど、ライトが灯った瞬間に“生活ができる”という実感が湧きました」と感想文を書いてくれた子がいたんです。

そのエピソードを仙台の防災イベントでお話させていただいたら、参加者の方が突然泣き出してしまって…。その方に聞くと、震災の時は本当に真っ暗だったと。でも、遠くの方にひとつだけ自動販売機の明かりが見えて、それを見て「生きていこう」という気力が湧いた、そのときの気持ちを思い出してしまったと。それを聞いて、自分たちが子供たちと学んできたことは間違ってなかったんだなと改めて思いました。

余談かも知れませんが、プリウスPHVで自動販売機を実験的に動かしたこともあるんです。実は自動販売機は100Vで動いています。常に電気を消費しているので良く思われないこともあるようですが、飲料系の自動販売機は日本に250万台以上あり、とても明るくて、いわゆる電灯みたいな存在になっている部分もあると思います。そう考えると、国土に250万台も電灯代わりになるものがある国って日本くらいなんです。

しかも飲み物を温かくもできる。災害時に大事なことは自分の体温を維持することなんですよ。人間というのは、体温が1度下がるだけで抵抗力が大きく落ちてしまうらしいんですね。そうなると温かいものを提供するということは、とても大事なのですが、災害時に自動販売機の電気が落ちてしまってもプリウスPHVに繋げばその機能を維持できることは実証実験済みです。つまり、そういう有事の際のためにプリウスPHVがあってもいいじゃないかと。

これまではただ単に「地球に配慮しているクルマ」として考えられていたんですけど、東日本大震災を節目にこれからは、「災害に強く有事に役立つクルマ」としての使命を担うクルマとなっていくのではないでしょうか。「社会にいいクルマ」というのがトヨタのハイブリッドシステムの根幹でもありますので、地球に配慮しているだけでなく社会貢献できるクルマということで、プリウスPHVが普及していけばと思っています。お客様にも燃費や価格は当然意識される部分であろうと思いますが、そういう意識でも選んでいただくような商品になれば嬉しいですね。

また、我々もこうした動きを加速させるべく、9月1日より地域・社会への貢献をテーマとした外部電源供給システムを紹介するサイトを立ち上げています。警察車両などに導入・活用されている事例なども掲載していますので、こうした取り組みにも注目してほしいですね』

【PR企画：BLOGOS×トヨタ自動車】

■関連リンク
・プリウスPHV
・外部電源供給システム

・充電電力使用時走行距離は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境（気象・渋滞等）や運転方法（急発進・エアコン使用等）に応じてEV走行距離は大きく異なります。
※1 エンジン、リチウムイオンバッテリーの状態、エアコンの使用状況や運転方法（急発進・所定の車速を越える）、道路状況（登坂）などによっては、バッテリー残量に関わらずEV走行が解除され、エンジンが作動します。
※2 JC08モード（国土交通省審査値、Sの場合。グレードにより値が異なります。）。
※3 走行可能距離は、駆動用電池の充電量やハイブリッドシステムの状況によって異なります。
※4 AC100V用充電ケーブル使用時。AC100V用充電ケーブルはご注文時に指定が必要です。
※5 プリウスPHVは急速充電には対応していません。
※6 Sグレードでの比較。プリウスPHVには12万円(2015年8月現在)のCEV補助金を適用した場合。
※7 お客様の使用環境(気象・渋滞等)、運転方法等(急発進・エアコン使用等)によって、EV走行の割合、ランニングコストは大きく異なります。
・G-BOOK、eConnectはトヨタメディアサービスが提供するサービスです。
＊ eConnectのご利用には、販売店にてプリウスPHV専用申込書によるお申込みと、スマートフォンにアプリのダウンロードが必要です。
・リチウムイオンバッテリーの充電量が少なくなると、停車時でもエンジンがかかります。一部地域では車両の停止中にエンジンを始動させた場合、条例に触れ罰則を受けることがありますので充分にご注意ください。
※8 製品によっては正常に作動しない場合やご注意いただきたい項目があります。ご使用になる前に必ず取扱書をご覧ください。
※9 合計1500W以下の電気製品をご使用ください。ただし、1500W以下の電気製品でも正常に作動しない場合があります。詳しくは販売店におたずねください。