「野田氏、歴史観がネック」と米紙 世界のメディアは民主党代表選をこう見た - BLOGOS編集部
※この記事は2011年08月30日にBLOGOSで公開されたものです
8月29日に民主党代表に選出された野田氏を海外メディアはどう捉えているのか。BLOGOS編集部で世界各国の新聞社の記事を独自に翻訳。各紙の論調を比較してみることにした。今回対象にしたのは中国の英字紙「チャイナデイリー」、アメリカの経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」。そしてイギリスの日刊紙「ガーディアン」の3紙だ。いずれも、経済通で増税を厭わない野田氏の政策を「投資家から好まれる候補」（ガーディアン紙）などと評価しており、おおむね好意的だ。ただし、ウォールストリート・ジャーナルは野田氏が終戦記念日の記者会見で「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」と発言したことに触れて、「歴史観が原因でアジア諸国で問題に直面するのでは」と懸念を示している。【翻訳：清水泰輔（BLOGOS編集部）】
意外と冷静な中国メディア
まず、中国の英字紙「チャイナデイリー」は、日本の膨れ上がった債務に触れて「金融市場は懐疑的だが、債券市場は“痛みを伴う改革”を主張している野田氏の選出を歓迎する」と書いている。英字紙ということもあり、野田氏のA級戦犯発言や靖国神社の問題には特に触れておらず、冷静な分析だった。
野田氏、代表選に勝ち次期日本首相へ（元記事：Noda wins vote to become next Japanese PM）
（東京）緊縮財政派で財務大臣である野田佳彦氏が月曜日の民主党代表選で勝利し直近5年で6人目の日本の首相となる。結果は投資家たちに膨れ上がった公債に対して注意を促すような格好となった。
今後、野田氏は輸出に打撃を与えている円高、チェルノブイリ以降、最悪の原発事故が収束するまでの新たなエネルギー政策、3月11日の津波による被害の復旧に充てる資金繰り、巨大な公債の格下げへの対策をしなければならない。
金融市場、政治コメンテーター、日本国民は新しいリーダーにこれらの困難に立ち向かうビジョン、覚悟、時間があるのかについて懐疑的だ。
債券市場は一貫して日本の膨れ上がった債務を止める為に痛みを伴う改革を主張している野田氏の選出を歓迎するとみられている。
金融国債先物は野田氏が決選投票に進んだ後に少し上向き、東証株価指数は野田氏が決選投票に勝利した後に値上がりが消えた。
「私たちが約束したことに最大限の力を持って対処しましょう。そしてもし、十分な財源がなかった場合、私たちは国民の皆様に負担をお願いすることになるかもしれない」と野田氏は投票前に語り、将来的な増税を示唆した。
菅首相のように新しいリーダーは火曜日に国会で正式に投票される。野田氏はねじれ国会や党内の亀裂に直面しなければならず、"短命首相"のギャラリーに加えられるのではないかとの懸念をもたらしている。
2006年から日本の首相は1年以上政権を維持したことがなく、多くの市場関係者はロイターの世論調査で野田氏も例外ではないと答えている。
滅多にない選挙における軽率な勝ち越し - 二重あごの野田氏は自分をドジョウと比較した。
「私はドジョウのように見えるだろう。私が首相になったら支持率は上がらないかもしれない、だから議会を解散して選挙を行わない。金魚のようには出来ないけど、ドジョウにはどうじょうの才能がある」
「歴史観がアジアで問題に」と米国紙
ニューヨークで発行され、国際的な影響力を持つウォールストリート・ジャーナルは、野田氏のことを「増税を提案している日本の財務大臣」と紹介。代表選でライバルだった海江田万里・経産相の「復興財源を無利子国債によって支払う考えを心配していた債券市場には歓迎された」と報じている。一方で、A級戦犯に関わる発言を「中国で批判されるような発言」と指摘し、アジア外交がネックになる可能性を示唆した。
「重荷」を背負う日本の新首相（元記事：Japan's Next Leader Takes 'Burden' ）
勝利したにも関わらず、野田氏の立候補は国民のイメージでは薄かったようだ。月曜日に実施された読売新聞の世論調査では野田氏は９％の支持しか受けておらず、決選投票で争った海江田氏の１２％や、一回目の投票で敗れた前原氏の４８％には劣った。
（略）
どのように震災復興の財源を調整するかの問題においては、財政面で保守的なで増税において五候補の中で最もタカ派とされている野田氏は一時的な増税は避けられないと語っている。
このスタンスは海江田氏の復興財源を無利子国債によって支払う考えを心配していた債券市場には歓迎された。
（略）
みずほ証券のマーケットアナリストであるKawakami Jun氏は「野田首相は日本の国債にとってはいいだろう」と話す。
（略）
三菱UFJモーガン・スタンリー証券のシニア・エクイティー・ストラテジストの白木豊氏は次のように話した。「自民党が野田氏と財政改革において共に協力することは可能だと思います」。
新しい首相は民主党におけるブローカーである小沢氏の味方と敵の間にあるフェンスを修復する必要が出てくるしょう。小沢氏は今回の代表選で自身の党派から120名程の議員で海江田経済産業大臣を支援し当選寸前のところまで漕ぎ着けた。
日本のメディアは前原氏と野田氏は海江田氏に対抗するために決選投票では協力しあったと報道した。
（略）
また、野田氏はアジア近隣諸国において彼の日本の戦時中における歴史観が原因で問題に直面する可能性がある。韓国のメディアは過去に野田氏の第二次世界大戦後に戦争犯罪として有罪と認められた者たちは連合国側によって東京裁判に裁かれたが、日本の裁判で裁かれたのではないという発言を非難している。
土曜日の記者会見で、野田氏は中国で批判されるような発言をした。
野田氏は「来年は指導層が代わる変革期であり、ナショナリズムを煽るためにちょっかいをを出される可能性もある。私たちはどのようなシナリオにおいても対応できる準備しなければならない。」と話した。
「投資家から好まれる候補」と英国紙
英国のガーディアン紙も野田氏が将来的な増税を示唆したことを受けて「投資家から好まれる候補者」と分析している。ただし、「野田氏が長期政権を保つとの予想は明るくない」と短命政権が続く日本の不安定な政界への苦言も忘れなかった。
野田佳彦氏、首相へ（元記事：Yoshihiko Noda set to become Japanese PM）
野田氏(54)は火曜日に衆議院議員で過半数によって首相に選出された後に長く連なった政策課題に直面することになるだろう。
福島第一原子力発電所所子の解決には程遠く、未だに何万人もの人が大きな打撃を受け、復興していない東北地方で暮らしている。
日本は今のところ円高の食い止めと大幅に増える社会保障費と生活保護費に、世界で最も早く高齢化となる社会で歳出していくかの合意に失敗している。
野田氏の勝利は5年間で20兆円の税収を見込んでいる、東北地方への復興増税の可能性を増幅した。
「私たちが約束したことに最大限の力を持って対処しましょう。そしてもし、十分な財源がなかった場合、私たちは国民の皆様に負担をお願いすることになるかもしれない」と財政面で保守的な野田氏は投票前に語り、将来的な増税を示唆した。
更に野田氏は立て続けに4分の3に縮小され、産業界では最高の日本の5兆ドルの経済の2倍にあたる公債を負う経済を受け継ぐことになる。
先週、ムーディーズ・インベスター・サービスは日本の信用格付けをカットし、国の並外れた公債、政治の不安定さ、世界3位の経済を復活させようという確かな経済計画の不在を原因として挙げた。
（略）
野田氏が長期政権を保つとの予想は明るくない。野田氏は国民からの乏しいサポートを得ること、更に、支配下である参議院では与党の立法行為をブロック出来る野党との協力関係を早急に編成しなければならない。
（略）
アナリストは野田氏を増税を示唆したことを理由に投資家から好まれる候補者だろうと表現した。
東京にあるソシエテ・ジェネラル・セキュリティーのチーム・エコノミストである大久保琢史氏は「日本経済にとって野田氏は5人に候補の中で最適な選択だ」とロイターに語った。
「もし野田氏が負けていたら、日本の為替介入における投機の真空化を引き起こしていたかもしれない。しかし、野田氏は円の評価を引き続き制御したいようだ」
