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ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、札幌大学は3月11日から開催予定だったロシア文学についての展示会の開催を延期した。

大学によると、会場予定だった書店の近辺は、左右の街宣・デモも多いエリアだという。「ロシア」関連の店舗などへの嫌がらせが多発していることを踏まえ、「安全確保を第一に考えた」と説明する。

一方、展示を企画した同大の岩本和久教授(ロシア文学)は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「(延期は)ロシア系の住民らへの差別につながりかねない」と懸念を語った。

●ロシア文学から「反戦」考える展示も

以下、岩本教授との主なやりとり。

ーー延期までの経緯を教えてください

展示会は、大学のロシア文化センター主催。コロナで講演会はひらけないので、「疫病とロシア文学」と題したパネル展を1年ほど前から企画していました。

戦争を受けて、人が襲われたらマズいということで、対策のマニュアルなどを準備していたのですが、延期になってしまいました。

ーー「ロシア」と名のつくものをタブー視する問題はどこにありますか?

ロシア系の住民やロシア語学習者が平和で、自由に暮らすことが難しくなりかねません。

同じ北海道だと、北海道大学は反戦の声明を出しています。「戦争反対だから延期」ということならまだわかりますが、今回はそうではありません。

「停戦したら」など、再開の基準も示されていません。大学との話し合いの中では「イメージ」という言葉もあり、世間体を気にした保身からの判断のように感じています。

ーーロシア文学から平和を考える展示もあったそうですが?

ロシア文学は19世紀が有名です。19世紀は文学と権力が対立していた時代なので、基本的には反権力。中でも、(『戦争と平和』などの)トルストイの存在が大きい。

トルストイは非暴力主義の人で、ガンジーにも影響を与えていますし、日露戦争でも反戦を訴えました。戦争の最中ということもあり、『戦争と平和』やトルストイの非戦論などについての展示も設けていました。

ーー世の中では、「ロシア」と名のつくものへの嫌がらせが頻発しています

当たり前ですが、戦争はロシアの政府がやっているのであって、ロシア人が全員自発的にやっているわけではない。ウクライナなら何でも素晴らしくて、ロシアなら何でも悪いという発想は危険です。

もしも「ロシアはすべて悪」「敵」だというのなら、タブー視するのではなく、むしろもっと知らなくてはならないはずです。