SNSでも人気の料理家・若菜まりえさん。簡単でおいしくて、ほとんどが電子レンジでできる時短レシピを紹介していて、小さいお子さんがいらっしゃるお母さんや、働く女性から大きな支持を受けています。そんなまりえさんが料理研究家としての活動を始めたのは2016年のこと。「料理研究家としては当時は後発だった」というまりえさんが、料理研究家を目指すことになったきっかけ、現在に至るまでの道のりについてお聞きしました。

フォロワー54万人。バズる料理家まりえさんがブログを始めた理由

「つくりおき食堂まりえ」というアカウントで簡単につくれるレシピを発信。そのつくりたくなるレシピが多くのネットユーザーに支持され、今やtwitterフォロワーは54万人。ここまでバズる料理家になるまでのお話を紹介します。

 

●つくりおきは子育てで培われた

――つくりおきというテーマはもともと、まりえさんご自身も私生活で活用をすることが多かったのでしょうか?

7年前に長男を出産し、育休後に職場復帰してからはとにかく毎日が忙しく、全力ダッシュして保育園に子どもを迎えに行っても、家に着くのは19時過ぎ。お腹がペコペコの子どもにバナナやおにぎりを与えてしまうと、おかずができあがる間にお腹いっぱいになってしまい、ぜんぜん食べてもらえなかったんですね。そこでおかずのつくりおきをするようになりました。

帰宅途中にお惣菜を買うという選択肢もあると思いますが、自転車で子どもを送り迎えしていると、スーパーで買った品物を運ぶのも大変。荷物を乗せるところが足りず、保育園と会社の荷物の間に無理矢理押し込んだら、走行中に荷物が転がり落ちていきました。だったらちょっとがんばって週末につくりおきするのほうが効率化がいい。

週末に時間をとられすぎるので、そこはなんとか改善したい。色々な方法を試しているうちにレンジで調理すると加熱中は子どもの相手やほかの家事がしやすいことに気づいて、レンジでつくれるレシピの数がどんどん増えていきました。

 

●会社員としての挫折。そしてブログを開始

――もともと会社員として働かれていたそうですが、料理家に転身するきっかけはあったのでしょうか?

産後に職場復帰して一年ほど経ったある日、同期の社員研修に自分だけ呼ばれていなかったことを知りました。会社の基幹となる人材の枠からいつの間にか外れていることに気づき、ショックでした。時短勤務はありがたかったのですが、いつも全力疾走でがんばっているのに、ここでは評価も給料も上がる見込みがないということ。それなら、何か新しいことを始めよう、会社員とは違う新しい道を見つけよう、と奮い立ちました。 

もともと料理は大好きで、学生時代からノートにレシピを書きためていました。長年書きためてきたレシピノートを発信するときが来た! すべてのベクトルが一致したように感じ、ブログを始めることを決意しました。

 

●スタート時はとにかく研究を重ねた

――フォロワー数の増加、レシピ本も売れ、料理家として名をはせるまでになりましたが、ここに至るまでに狙いはあったのでしょうか?

その当時(2016年)、すでに料理ブログは競争の激化している業界でした。後発スタートということで、どのように発信していくか研究を重ねました。

また、自分自身がワンオペ育児で忙しく働いている中、Twitterで同じような境遇で子育てや家事をされている方々と交流しているうちに、毎日の時間のやりくりに苦労されている方がとても多いように感じました。そこで、すきま時間に簡単につくれるレンジ調理のレシピを中心に発信することに決めました。

忙しいけど料理がしたい、時間がないけどおいしいものをつくって食べたい、という方に喜んでいただきたいと思い、時短レシピに注力。ブログは、絶対に成功して本を出す! そしてその本を売る! という強い目標を持って進めました。

●本が売れてようやく家族の理解が得られた

――ご家族の反応はいかがでしたか?

会社員と料理研究家としての二束の草鞋を履くことを決意しましたが、最初は夫の理解が得られず苦労しました。熱心に料理し、写真を撮り、パソコンに向かう私の姿を夫は冷ややかな目で見ていました。

ブログの作業はおもに土日にしていました。当然ながら子どもといられる時間も短くなる。「もうそんな活動はやめて、会社員の仕事に専念しなよ」と言われることも。夫の私への評価はシビアでした。

そんな夫の考えが変わったのは、1冊目の本『つくりおき食堂の超簡単レシピ』(扶桑社刊)を2018年に出させてもらってから。これまで、あやふやなものに見えた活動が、はっきりと目に見える形になったことで、料理研究家としての活動を応援してもらえるようになりました。初の著書は17万部突破の大ヒット。コツコツと積み重ねてきた努力が実った形になります。

 

●子育てが犠牲に…料理家一本で進む決断を

――会社員と料理家の二足の草鞋、そして子育て、大変だったのではないでしょうか?

子どもと過ごす時間を犠牲にしたことは否めません。すごく印象的なのが、保育園の一学年下の赤ちゃんがハイハイしているかわいらしい姿を見て、自分の2人目の子がハイハイしている姿を思い出せない、と気がついたときのこと。「いつの間にか、娘はもう歩いているのに、ハイハイしている姿をまったく思い出せない」って思ったら、会社に向かう電車の中で号泣してしまいました。料理の活動に夢中になるあまり、娘の大事な瞬間を心にとめて置かなかったと感じすごくショックでした。それからはもっと子どもの成長に心を向けようと反省しました。

そのことをきっかけに「会社を辞める」という最大の決断をしました。子どもが学校に行っている時間に集中して料理に取り組み、夜や土日は子どもと過ごす、という生活サイクルを過ごすように。家族は応援してくれるだけではなく、大切な気づきにもなってくれています。

フォロワーからも好評!レンジ調理の醍醐味を感じられるレシピ2つ

まりえさんに、今回の新刊からレンジ調理の良さを実感できるオススメのレシピを教えていただきました。

●フレッシュトマトとベーコンのパスタ(調理時間15分)

「レンジといったら、やっぱりパスタですね。『フレッシュトマトとベーコンのパスタ』は生のトマトを使っているところがポイントです。レンジでつくるパスタは少ないお湯でゆでることができるので、容器の中で乳化が進むんです。ゆでるのとソースと同時に仕上がるので、時短レンジ調理のメリットが感じられます。レンジでつくったと思えないというより、レンジだからこそおいしく仕上がりますよ」

材料(1人分)

スパゲティ(5分ゆでのもの) 100g
オリーブオイル 大さじ1
ハーフベーコン 4枚
ミニトマト 8個
A[水230ml トマトケチャップ大さじ1 顆粒コンソメスープの素小さじ1 バター6g(食卓スプーンにひとすくい) ニンニク(チューブ)4cm 塩ふたつまみ]

【つくり方】

(1) 電子レンジ対応の容器にスパゲティを半分に折って入れ、オリーブオイルをかけて混ぜる。

(2) ベーコンはキッチンバサミで1cm幅に切り、ともに(1)に入れる。

(3) Aを加えて混ぜ、ラップをかけずに電子レンジ(600w)で5分ほど加熱する。

(4) 取り出して混ぜ、スパゲティをほぐす。再度ラップをかけずに4分ほど加熱し、混ぜる。

 

●大根とひき肉の煮物(調理時間15分)

「鍋で煮込んだら時間がかかるものを、レンジだと時短でできて、味もしみやすくて煮崩れの心配もありません。味も火を使って調理したものと差がありませんよ」

材料(3人分)

大根 1/2本(皮むき後300g)
合いびき肉(または豚ひき肉)120g
A[水100ml めんつゆ(2倍濃縮)大さじ1と1/2 しょうゆ、みりん各大さじ1 砂糖小さじ2]

【つくり方】

(1) 大根は5mm厚さのいちょう切りにする。

(2) レンジ対応の耐熱容器に(1)、ひき肉、Aを入れてざっくり混ぜる。ふんわりラップをかけて電子レンジ(600w)で5分ほど加熱する。

(3) 取り出して混ぜ、再度ラップをかけて4〜5分加熱し、清潔な箸で混ぜる。