Polaris Program / John Kraus
Polaris Program / John Kraus

SpaceXが昨年実施した、民間人だけの宇宙飛行プログラム「Inspiration4」に参加していた実業家ジャレッド・アイザックマン氏が、最大3回の有人宇宙飛行を含む「Polaris Program」構想を発表しました。

夜空で常に北の方角に見える北極星を意味するPolarisの名前をとったこの計画は、大胆かつ画期的な目標を設定することで民間による新しい領域への進出を体系的に推し進め、商業宇宙飛行を劇的に進展させようというものです。そのため、ミッションを重ねるたびに民間宇宙旅行の限界を押し上げる目標が設定されます。

この計画による最初のミッション”Polaris Dawn”は2022年第4四半期に予定されます。アイザックマン氏はWashington Postのインタビューに対し、最初のミッションでは4人のクルーを過去50年で最も高い軌道へ送り出すことを目指し、さらに初の民間による船外活動を含むと述べました。

また最初と2度目のミッションはSpaceXのCrew Dragon宇宙船を用いて実施される予定です。そして3度目のミッションでは、SpaceXが開発を進めている大型宇宙船Starshipの最初の有人宇宙ミッションになるとのこと(Starship最初の有人ミッションは月旅行ではない模様です)。そして、少なくとも現段階でNASAは計画に関与しておらず、ミッションはすべてSpaceXのサポートによって行われます。

アイザックマン氏いわく、この計画はInspiration4が実施されるよりも前からSpaceXとの間で話し合っていたとのこと。そしてInspiration4を体験した後、アイザックマン氏は再び宇宙へ行くことを希望していました。今回の計画でアイザックマン氏がいくらSpaceXに支払っているのかはわかりませんが、単純に数億ドルは下らないと予想されます。Inspiration4に関しては、その費用は2億ドルに満たなかったとしています。

アイザックマン氏はInspiration4に続いてミッションコマンダーを務める予定であり、パイロットはInspiration4でミッションディレクターを務めた空軍のベテラン、スコット・ポティート氏が務めます。さらにSpaceXからはリードオペレーションエンジニアのアナ・メノン氏とサラ・ギリス氏が参加予定です。

ちなみに、月へのミッション以外で最も遠い空間に到達した有人宇宙飛行は、1966年のジェミニ11号による高度853マイル(約1400km)。Inspiration4ミッションは高度367マイルでした。

またミッションで予定される船外活動にはSpaceXが開発している宇宙服が必要になります。3度目の飛行で使用するというStarshipも、それまでに有人飛行が可能なまでに開発および安全に関する信頼性が確保できるかどうかはわかりません(むしろ過去の例を見れば、年単位で遅れる可能性の方が高そうです)。それでも、民間が民間だけでおこなう宇宙飛行が進歩していくことは、商業宇宙飛行がより身近になる未来の到来を予感させてくれます。

Source:Washington Post, Business Wire