広尾の日赤通りに知る人ぞ知る和食の名店がある。

季節ごと、鮎や甘鯛など店主が選びぬいた食材を、一流の器でいただける贅沢な店だ。

この店で、毎冬、常連客が心待ちにしている幻の高級魚“クエ”のコース料理について紹介しよう。



※まん延防止等重点措置期間中につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。



クエは、現在島根県から直接送ってもらっている。重島さん曰く「いろいろな産地を試しましたが、島根のクエは一番味がしっかりあって、鍋にした時に旨い」とのこと

幻の高級魚は鍋で湯がいてこそ、圧倒的な存在感を発揮する


その美味しさと希少性で幻の高級魚といわれるクエ。

「噛み締めると力強い脂の旨みが広がり、味の余韻に品がある。そこがクエの魅力ですね」とは、重島友和さん。

広尾は日赤通りにオープンして10年、知る人ぞ知る和食の名店『栩翁S』のご主人だ。

この店で、毎冬、常連客が心待ちにしているのが、ご覧の「クエ鍋」。


出汁に入れた瞬間に、きゅっと身が引き締まるのが新鮮さの証明

出汁に潜らせ、身が白くなればOK。だいだいと醤油、白ワインで作る自家製ぽん酢と七味で食べる。「クエの腹身焼き」や「唇の煮付け」、「カマの竜田揚げ」がつく「クエ鍋コース」は一人前15,000円。注文は2人〜


大きなものでは50kgにもなるクエだが、重島さんのベストは10kg前後。大き過ぎると身質が粗く、大味になってしまうからだ。

身は刺身に、腹身は焼きに、そして唇は煮物にと八面六臂の活躍をみせるクエだが、極めつけはやはり鍋。

厚めに切りつけた一片は、透き通るような光沢も美しく、出汁に潜らせれば、純白の輝きに食指が動く。

口にすれば、プリプリとした筋肉質な食感。淡いようでいて、火を入れたことから生まれる底味の深さは鍋ならでは。

クエの骨と昆布だけでとる出汁が、旨みを引きたて、その実力に圧倒される。


あらで丁寧にとった出汁が絶品


鰹節は使わず、クエの旨みを大切にした品のいい香りが漂う出汁。

丸中醤油で薄く味付けしている。




店内は、静謐かつシンプル。陶芸に造詣の深いご主人の趣味で集めた作家ものの器などからもご主人の美意識が伺える。

カウンター席の他、テーブルもある。


◎鍋のお供に◎


「クエの腹身の焼きもの」。

イタリアのオリーブオイルと丸中醤油を合わせたタレで焼いている。食感は弾力があり、逞しさを感じさせる美味しさ。コースより。


店主に聞いた推しの〆
〜クエの美味しさを丸ごと楽しむ雑炊〜





「美味しい出汁も余すことなく一緒に味わって欲しいです」。

クエのエキスが滲み出た出汁は、旨みの塊。米は山形の減農薬の米を使用している。



知る人ぞ知る広尾の名店で、美意識の高い店主が選ぶ食材と器に囲まれた贅沢な時間を過ごしていただきたい。

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