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東京オリンピックの開催前は、多くの日本メディアも日本人も開催中止を叫んでいたが、いざオリンピックが開催されると、関連グッズの販売に客が殺到するなど、大きな盛り上がりを見せた。我々日本人が五輪開催前と開催後でどう変わったか、振り返る。

■東京オリンピック開催前の状況

開催が2020年から1年延期された東京オリンピックは、2021年7月23日に開会式が行われ、8月8日の閉会式をもって閉幕した。開催前、我々日本人はオリンピックに対してどのような態度をとっていたか。

● ●中止を求める声がネット中心に飛び交う

日本人をひとかたまりにして論じるつもりはないが、インターネット上ではオリンピックの開催中止を求める声が多く飛び交い、ボランティアや聖火ランナーを辞退する人も出た。

中止を求めている人の考えは、コロナ禍の拡大を防ぐためには、選手や関係者が海外から多く訪れるオリンピックを開催しない方がいい、というものだった。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の「女性蔑視」発言なども、このような中止の動きを過熱させた。

また、TwitterやFacebookなどのSNSを通じ、オリンピック選手に出場の辞退を呼び掛けたり、選手に自ら反対の声を上げてほしいと求めたりする人もいた。

● ●多くのメディアが開催反対の論調を展開

新聞やテレビなどの報道機関の多くも、東京五輪の開催に反対の論調だった。特に多かったのが、国民には移動自粛やイベントの開催自粛などを求めているのに、オリンピックは開催していいのか、といった批判だ。

また、菅政権のコロナ対策に対する不信感が高まる中、オリンピック選手や関係者に対する「バブル方式」による感染防止対策に懸念を示すメディアも多かった。

バブル方式とは選手や関係者を隔離しながら移動させる方式のことを指す。菅政権が進めた空港での水際対策の甘さや海外から帰国後の自主隔離制度が形骸化しつつあることもあり、バブル方式に対する信頼性を低く見積もるメディアも少なくなかった。

オリンピックの開催で新たな変異株の出現の可能性に触れる新聞社もあった。

■東京オリンピック開催後の状況

このように反発ムードが強くなる中、開幕したオリンピック。すると予想に反し、日本人の多くがオリンピックに夢中になり、メディアもほぼ応援ムード一色になった。オリンピックが開幕してからも中止を求める声は少なからずあったはずだが、このようなムードにかき消された。

● ●東京オリンピックのグッズが売れまくる「嬉しい誤算」

日本全体のムードががらりと変わったことで、「嬉しい誤算」が起きたのが五輪グッズを売っていた販売店だ。開催前は開幕後の売上にあまり期待感が持てていなかったようだが、開幕後は客が押し寄せる事態となった。

報道などによると、東京・丸の内にある「東京2020オフィシャルショップ」では、オリンピックが開幕後の売上高は開催前の売上高の10倍ほどになったという。

● ●テレビの視聴率も高めに推移、開会式は関東地区で56.4%

視聴率調査を行うビデオリサーチによると、開会式の平均世帯視聴率は関東地区で56.4%に上り、1964年開催の東京オリンピックの61.2%に引けをとらない高さだった。閉会式の視聴率は46.7%で、過去に行われたオリンピック開会式の中では3番目の高さだったという。

ちなみに、オリンピック閉幕後のビデオリサーチの発表によれば、競技・試合別の視聴率で最も高かったのは野球男子決勝の「日本対アメリカ」で37.0%だった。続いて陸上男子マラソンが31.4%で2位だった。

■改めてスポーツの魅力を再認識させたオリンピック

このように、開催前と開催後に日本のムードがガラッと変わったことを、我々日本人はどうとらえるべきだろうか。これはなかなか難しい問いだが、ひとつだけ言えることは、人々が改めてスポーツの魅力を再認識した、ということではないだろうか。

現に筆者も、東京オリンピックが開催される前は少し冷めた目で開催の可否の行方を追っていた。コロナ禍であることやさまざまな不祥事が続いたことで、オリンピックが開幕してもあまり盛り上がらないのでは、と思っていた。

しかし、いざオリンピックが開幕して選手たちが競技に臨む姿を見ると、感動し、心が躍り、家族とともにテレビの画面に釘付けになった。筆者以外にも同じように心の変化が起きた人は少なくなかったはずだ。だからこそ五輪グッズも開幕後にバカ売れしたのだろう。

次はパラリンピックが開幕する。いま、日本人はどのような気持ちで開幕までの日を過ごしているのか。もちろん人によって心持ちは異なると思うが、スポーツの魅力をオリンピックで再認識した今、パラリンピックの開幕を心待ちにしている人はかなり多いのかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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