ミシュラン一つ星店に教わる。海老の天ぷらをおうちで上手に揚げるコツ
プロ直伝!海老の天ぷらの揚げ方
和食の代表格のひとつ、天ぷら。家でも作れるけれど、ベチャッとしたり、食材が油っぽくなったり……なかなかお店のように綺麗に揚がりません。とくに料理好きな人は、むずかしいからこそ上手に揚げる技を習得したいのではないでしょうか。
プロのようにカラッと仕上げるには?粉の割合は?……疑問はつのるばかり。
まず確認!タネ、衣、揚げ油の鉄則
細かい手順へ入る前に、上手に揚げるためのコツをチェック。下記を念頭におきながら、レシピを確認してくださいね。
1. 水分残しはご法度。タネは揚げる直前まで冷やしておくこと
2. 衣の粉は必ずふるう。混ぜるときは泡立てない
3. できれば1尾ずつ!一度にたくさん揚げない
「天ぷらは、衣・タネと油の温度差があればあるほどいいです。カラッと揚げるためには、いかに水蒸気を抜けさせるか、油の温度を下げないかが大切」と宮代さん。
材料
・小麦粉……300g
・全卵……1個
・水……500cc
・片栗粉……大さじ1杯
「店では小麦粉と卵と水のみで仕上げますが、長い時間置くと衣がしなっとしてしまいます。家庭で作る場合は、片栗粉、べーキングパウダーを少し足すと衣の食感が長持ちしますよ」
卵の代わりにマヨネーズでもOK
「卵の代わりにマヨネーズを入れるのもおすすめ。油分が多いため、水蒸気が抜けやすくなります。割合としては、卵1個の代わりにマヨネーズ大さじ1」
炭酸水やビールを加えれば、よりカラッと!
水のなかに、炭酸水やビールを少し入れるのもコツのひとつだそう。入れる場合は、水の量を調整してくださいね。
「炭酸により水分が抜けやすくなり、カラッと仕上がります。また焼酎を入れると、水よりも温度が上がりやすくなるのでいいですよ。ただビールや焼酎は香りが残ることもあるので、お好みで」
氷は入れないほうがいい!
「衣の液を冷やすために、よく氷を入れるのがいいとされますが、僕はおすすめしません。衣の固さが変わるので、家ではやらないほうがいいですね。冷たい水を使うか、氷水を入れたボウルを重ねましょう」
作り方
今回は車海老を使用していますが、一般的な有頭海老でも問題ないそうです。冷凍海老で作るの際のコツも合わせてご紹介します。
1. 海老の下ごしらえをする
冷凍海老を使う場合は、流水で完全解凍します。車海老や冷凍されていない海老は、冷蔵庫で冷やしておくだけでOK。
「自然解凍は避けてください。時間をかけると、アクが回って黒くなったりドリップが出てしまいます。流水解凍でもいいですが、海老をポリ袋に入れて、氷水に浸して解凍するのがベスト」
2. 殻と背わたを取る
海老の尾の1関節を残し皮を剥きます。頭は包丁で落とすか、前足と頭の間に指を入れて剥き取ります。このとき背わたも取り除きましょう。
「車海老は殻を上に持ち上げながら剥くと、背わたも一緒に取れますよ。普通の有頭海老であれば、竹串か包丁で取るのが楽ですね」
3. 尾を切り、水分をしごき取る
尾の先と剣(真ん中のとんがった部分)を切ります。尾の部分を箸で軽くしごいて、水分を取り除きます。
「車海老ではやりませんが、冷凍や普通の海老の場合は必ずおこなってください。こうすることで、油へ落としたときにパチパチと跳ねずにすみます」
4. 海老のスジを断つ
海老をまっすぐ揚げるには、海スジを断つ作業が大切!
まな板の上に尾を右側にして置き、腹の部分に包丁を入れていきます。尾の皮を残した1関節のギリギリの部分から、4箇所に切り込みを入れましょう。
切り込みを入れたら、さらに海老の筋を伸ばします。背中側を上にして、親指と人差し指でつまむように、上から軽く押していきましょう。
「まっすぐ揚げるためには、スジを切るだけでは終わりません。押すときは、プチッという感触を感じられるのが目安」
5. 水分をふき取り、海老を冷蔵庫に入れておく
海老の下ごしらえが終わったら、一度水で洗い、キッチンペーパーで水分をふいておきましょう。衣をつける直前まで冷蔵庫に入れておきます。
「冷凍海老の場合は、どうしても汚れや臭いが残ります。最後に洗って冷蔵庫で10分くらい水分を抜くと、よりおいしく仕上がりますよ」
6. 全卵と水を泡立てないように混ぜる
いよいよ衣作り。氷水をはったボウルにボウルを重ねて、全卵と水を入れます。なるべく泡だてないように、静かに混ぜましょう。グルグル混ぜるのではなく、押し込むような感じで合わせていきます。
「よくお箸で混ぜましょう、といわれることも多いと思うんですが、たぶんやりにくいと思うんですよね。僕はホイッパーを推します。もし泡立ってしまったら、茶こしで取り除くか、冷蔵庫で置いておくといいですよ」
7. 数回に分けて粉をふるい、混ぜる
数回に分けて、粉をふるいながら入れていきます。
「水と合わせるときでもいいですが、粉はあらかじめふるっておくと楽ですね。ふるっていない状態だと大きな塊ができて、衣が油ではじけません」
粉をふるい入れたら、ここでもグッグッと押すように混ぜ合わせます。
「泡だててしまうと、泡のせいで衣が水のなかに入っていかないんですよね。強く混ぜることでグルテンが発生し、もっちりした食感になってしまいます。グルテンは温度が高くても発生するので、食材を冷やしておく理由もそこにあるんですよ」
写真のように混ざったら、衣の完成。ボウルを2枚重ねにできなかった場合や、揚げるまでに時間がかかるときは、冷蔵庫に移しておきましょう。
「完全に混ぜきらなくて大丈夫。必ずふるった粉に限りますが、一般的にいう “ダマがあってもいい” というのは正解」
8. 180℃の揚げ油を用意する
使う鍋に対して、1/2~1/3ほどの油を入れて火にかけます。揚げ油にごま油をひとたらし入れると、香りがグッとよくなるそうです。
「海老をはじめとする魚介は、180℃くらいの温度がベスト。落とした瞬間、油の表面で衣がバッと開いていくような感じですね。油の中でも温度が違い、下のほうだと160℃くらいに下がってしまうので。表面のほうでタネが浮いているときの温度を適温に」
9. タネに衣をつける
タネに衣をつけていきます。あらかじめ、小麦粉を薄くはたいておくと衣のつきがよくなるそう。つきすぎた場合は、刷毛で落とすか、手でトントンと払ってください。
尻尾の部分を持って、身の部分を衣の液にくぐらせたら、油に落としていきます。やや面倒でもなるべく1個ずつ揚げるのがコツ。
「一度にたくさん入れると、どうしても衣がベチャッとしてしまうので……。店の場合は4リットルに対して、一度に入れる海老の量は多くても4尾(!)」
10. 泡の様子を見ながら、揚げる
タネの個体や水分量にもよるので、揚げる時間は感覚勝負。泡の様子をうかがい、揚がったと思ったら、引き上げましょう。
「最初はあぶくがプツプツ出ているのが、少し大きめの泡に変わったころが引き上げるポイント。このあたりは、どうしても泡の状態で感覚を掴んでもらうしかないですね……」
揚げるのに適した鍋を伺うと……
「たしかに銅の鍋は熱伝導がいいですが、普通のフライパンでも大丈夫です。素材よりも形のほうが大切。なるべく温度の下がりにくい、底が深いものを選びましょう。市販の天ぷら用鍋も使いやすくて便利ですよ」とのこと。
完璧な海老の天ぷらが完成
背筋はピーン、衣はカラッと揚がった天ぷらのできあがり。バットやキッチンペーパーに引き上げて、あとはなるべくすぐに食べるだけです。
見た目の美しさはもちろんのこと、衣がサクッとしていて歯切れがパーフェクト。海老のプリッとした食感もしっかり残っていますね。徹底的にグルテンの発生を抑えていたことと、水蒸気が抜けるような工夫が活きているのがよくわかります。
天ぷらは練習あるのみ。習得して料理上級者へ
宮代さんいわく「海老の仕込み、粉の作り方さえ覚えてしまえば大丈夫。油の温度感や引き上げどきは、回数をこなすことで感覚が掴めるはずです。基本を守って、何度も挑戦してみてください」とのこと。
突き詰めていくと、天ぷらは湿度の関係で夏と冬で衣の具合が変わるそう。もっといえば雨の日と晴れの日でも全然違うのだとか……。あらためて考えてみても、天ぷらの世界は奥深く、そして日本らしい繊細さを含んだ素晴らしいものですね。
むずかしい料理ではありますが、長引くおうち時間を活用して、とことん向き合ってみてはいかがでしょうか。食卓の幅が広がり、きっと料理がもっと楽しくなるはずですよ。
取材協力
店舗名:天婦羅 みやしろ
電話番号:03-6452-2808
最寄駅:日比谷線 中目黒駅 徒歩5分
郵便番号:153-0051
住所:東京都目黒区上目黒 2-18-11
市区町村:目黒区
町域:上目黒 2-18-11
営業時間:ランチ 11:30~14:00ディナー 17:30~23:00※ランチは限定食のため、なくなりしだい終了
定休日:月曜日
取材・文/倉持美香(macaroni 編集部)
撮影/岩田知夏