薬を飲むタイミングで「食間」ってあるけど、いつ飲めばいいの?
市販薬を購入したり、医療機関で薬を処方してもらったりすると、「食間」という服用指示を見かけることがあります。食間とは、どのようなタイミングのことなのでしょうか。今回は「食間」について、薬を飲むタイミングや服用指示を守ることの大切さとあわせて「薬剤師」の浅田さんに詳しく解説していただきました。
監修薬剤師:
浅田 麻希(薬剤師)
昭和薬科大学薬学部生物薬学科卒業。大手調剤薬局チェーンにて様々な店舗を経験後、2017年からはフリーランス薬剤師・派遣薬剤師に転身。薬局業務の傍ら、ライターとしても活躍の場を広げる。現在は有名皮膚科での研修・10年以上の調剤薬局勤務経験を生かし、育児の傍ら医療・美容ライターとして活動中。
食間とは食事をしながらではない
編集部
「食間」とは、どのタイミングなのでしょうか?
浅田さん
食間とは「食事をしながら服用すること」だと思われている方も多いですが、実際は「食事と食事の間」という意味です。食事を終えてから約2~3時間後、胃の中の食べ物の消化が終わったタイミングを「食間」といいます。
編集部
ということは、食間=お腹が空いている時に飲めばいいのでしょうか?
浅田さん
はい、その解釈で問題ありません。「食間」という服用指示がある場合は、胃の中がほぼ空の状態である時に飲むのが望ましいということになります。
編集部
もし、食間に飲み忘れた場合はどうしたらいいのでしょうか?
浅田さん
その場合は、食前や食後に飲んでもさほど問題はありません。気付いた時点で飲むようにしてください。ただし、次の服用時間が迫っている場合は、その1回分は飲まないようにしてください。過剰摂取は副作用のリスクがあるので、2回分を一度に飲まないようにしてください。
食間に服用する理由
編集部
どうして食間に飲む必要があるのでしょうか?
浅田さん
内服薬は食べ物と同じように消化管から体内に吸収されるので、消化管内の食物の有無で様々な影響を受けることがあります。食事によって吸収率が阻害され効果に影響がおよぶものや、糖尿病の薬のように食事そのものに対して働きかける薬などがそれにあたります。食間と指示されている薬は、薬の吸収が食べ物に影響されないように、胃の中が空の状態(消化が終わった状態)で飲む必要があります。
編集部
食間に飲まなければいけない薬には何がありますか?
浅田さん
代表的なものが漢方薬です。漢方薬に含まれる生薬が食物と混ざり合うと相互作用が起こり、効果が薄れてしまいかねません。そのため、漢方薬は食前や食間に飲むよう指示されることが多いですね。あとは、胃粘膜を保護する胃腸薬も、食間である空腹時に飲む必要があります。胃の中に食べ物が残っていると、薬と混ざり合ってしまい、胃粘膜に十分なバリアを張ることができなくなってしまいます。ただし、「絶対に食前や食間に飲まなければいけない」という薬ではありませんので、何度も飲み忘れてしまうようでしたら、どのようなタイミングで飲んでも問題ありません。
編集部
食間に飲まないと身体にどんな影響がありますか?
浅田さん
食間以外に服用したからといって、身体に大きな悪影響をおよぼすことはありません。ただし、薬の効果が薄れてしまうことがありますので、せっかく治療のために薬を飲んでも、その効果が十分に発揮されない可能性があります。
服用指示を守りましょう
編集部
では、食間ではなく食前・食後と指示された場合に気をつけることはありますか?
浅田さん
食前の場合は食事の約30分前、食後の場合は食事の約30分後を目安に飲んでください。また、「食直前」や「食直後」と指示された場合は、食事のすぐ前、すぐ後(5分以内)に飲むようにしてください。
編集部
服用指示を守らないと、まったく効果がなくなるのでしょうか?
浅田さん
多くの場合は、まったく効果がなくなるわけではありません。ただし、効果がやや減弱してしまったり、副作用があらわれやすくなったりする薬はあります。また、食事の影響は受けないけれど、ただ単に「薬の飲み忘れを防ぐため」に食前や食後の服用指示がある薬もたくさんあります。決められたタイミングに服用することで習慣となり、服薬管理がしやすくなるためです。
編集部
服用指示をしっかり守らなくてはいけない薬があれば教えてください。
浅田さん
例えば、糖尿病の経口血糖降下薬や骨粗しょう症治療薬です。経口血糖降下薬は食物の吸収にかかわる血糖値を下げるための薬なので、服用指示のタイミングを守らないとまったく効果がなくなったり、副作用があらわれる危険性が高くなったりします。あと、骨粗しょう症治療薬のビスホスホネート製剤は、必ず起床時に飲まなければいけません。食後に飲むと食道が荒れてしまうことがあるため、もし起床時に飲み忘れて朝食を食べてしまったら、その日は飲まず、次の日に飲むようにしましょう。これらの薬はほんの一例になります。製薬会社は薬を新たに開発するとき、膨大なデータのもとで最も効果が高い、かつ副作用の危険性が少ない服用時間や回数を厳選しています。そのため、製薬会社が定めた用法用量をしっかり守って服用することが大切です。
編集部まとめ
「食間」とは、食後2~3時間たった空腹時のタイミングであることがわかりました。薬の効果を最大限にするためにも、服用指示をしっかりと守り、飲み忘れを防ぐことも大切です。