九州人「鶏肉をナマで食べちゃダメだって知らなかった」←そんなことある?調べてみたら、納得の事情が明らかに
「一部の九州人は、他の地域では鶏肉を生で食べてはいけないことを知らない」
そんな内容の投稿が、ツイッター上で話題になっている。
九州出身だと思われる投稿者の呟きに、リプライ欄では
「鶏肉を生で食べるという発想がありませんでした」
「鶏を生で食べるて...初耳です(当たり前だけど、しっかり加熱調理してからのしか食べないので)」
など、驚きの声が上がっている。
(画像はイメージ)
鶏肉といえば、食中毒などの恐れがあるから絶対に生で食べてはいけないと、記者(神奈川出身)は幼い頃から言い聞かせられてきた。
そんなことを全く言われた経験がない人が、九州にはいるなんて...。
生で鶏肉を食べることが、そんなにも一般的なのだろうか?
スーパーにも売ってる
気になったJタウンネット記者は、2021年2月18日、鹿児島県の食文化について講演活動などを行っているNPO「霧島食育研究会」に詳しく話を聞いた。
取材に対応してくれた、代表の千葉しのぶさんによると、鶏肉を生で食べる習慣は九州地方の中でも鹿児島県でよく見られるという。特に、霧島市など山側の地域で、「鶏刺し」という刺身にして食べられることが多いそう。
「海のほうでは海の幸を刺身にするけど、山が多いところでは鶏肉を刺身にするという感じですね」
と、教えてくれた。
鶏刺し自体は聞いたことがあったが、日常的に食べるようなものなのだろうか?
千葉さんの話では、飲食店だけでなく、一般家庭の食卓にもごく当たり前に鶏刺しが並ぶという。地元のスーパーの他、鶏刺しの専門店があり、鶏肉が切って売られているそうだ。特に、モモや羽身(胸肉)を食べることが多いと言う。
「生で(鶏肉を)食べるとしたら、だいたいは鶏刺しですね」
と、千葉さん。地元の人にとっては「ちょっとしたごちそう」という感覚で、お客さんが来たときに提供したりもするそうだ。
醤油に加え、ショウガやニンニクをつけて食べるのが鶏刺しの楽しみ方。ツマとして、大根の他、「といもがら」というハスイモの一部を添えるらしい。
スーパーでも、売っているのか...。「他の地域では生で食べないことを知らない」という投稿にも納得がいく。
しかし、食中毒などの心配はないのだろうか......?
生食用鶏肉には厳しいガイドライン
鹿児島県には、「生食用食鳥肉の衛生基準」というガイドラインが存在している。それには、肉の処理工程や保管温度など、多くの項目が厳しく定められているのだ。
たとえば、生食用の鶏肉を販売するとき、容器にはその旨を表記することと、次のようなリスクについて明記することが目標として定められている。
一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがあること。
子ども,高齢者,食中毒に対する抵抗力の弱い人は食肉の生食を控えること。
(鹿児島県公式サイトより)
つまり、鹿児島県民は、きちんとガイドラインを守って販売されている安全な鶏肉を、リスクも承知の上で、生で食べているというわけだ。
ちなみに、話題になったツイートには、
「愛知県民だったから他県で鳥刺しキケン!は知りませんでした」
「愛知県生まれ育ち在住ですけど今しがたとりわさ食ったばっかりで衝撃ですwww」
という、愛知県民からのリプライもあった。
鶏肉を生で食べて、起きてしまう食中毒といえば「カンピロバクター」によるものが有名だ。愛知県が19年に行った「消費生活モニターアンケート」のカンピロバクター食中毒に関する調査では、
「市販の生の鶏肉から高い確率でカンピロバクター菌が検出されること」
「鶏肉が新鮮であることとカンピロバクター菌の汚染とは関係がないこと」
を知っている人は過半数以下で、県は「カンピロバクター食中毒の認知度が低いことがうかがえました」と分析している。
20年に行われた同様の調査でも、ほぼ同様の結果だった。
また、名古屋市や豊田市の公式サイトには、「肉は生で食べないように」という注意書きが目立つように書かれている。
行政によってガイドラインが定められている地域以外では、鶏の生食は避けるべきだろう。