なぜEVの充電口位置はバラバラ? 給油口は後方配置が基本も 各社異なる理由とは

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なぜEVの充電口はバラバラ? その理由も各社バラバラ?

 最近の国産車や輸入車において、ガソリン/ディーゼルモデルの給油口は後方左右のフェンダーに配置されていることがほとんどです。
 
 しかし、電気自動車(EV)の場合、給油口に代わる充電口の位置は、各社で前後バラバラですが、なぜガソリン/ディーゼルモデルと異なるのでしょうか。

日産「リーフ」はフロントグリルの上部に充電口を配置している。

 基本的に後方にあるガソリン/ディーゼルモデルの給油口の左右については、クルマによって異なるものの、メーカー内では左右が統一されていることが多いようです。

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 ちなみに、燃料タンクについて日本では「排気管の開口先になく、かつ、排気管の開口部から300mm以上離れていること」と定められていますが、細かな設置場所に関しては決まっていません。

 ただし、基本的には後席の下やトランクルーム下となり、ホンダでは「センタータンクレイアウト」という燃料タンクを前席の床下に配置する特許技術を採用しています。

 では、2021年時点で徐々にラインナップを増やしてきたEVでは、どうなっているのでしょうか。

 EVにおける燃料タンクの代わりはバッテリーとなり、ほとんどのEVにおいて前席・後席を合わせた居住空間の床下に薄型バッテリーを搭載しています。

 では、EVの充電口の配置にはどのような特徴があるのでしょうか。

 EV市場の先駆者といえる日産「リーフ」は、初代モデル(2010年)がフロントグリルの位置に、2代目モデル(2017年)がフロントグリルとボンネットの間に充電口を設けています。

 基本的にEVの場合、普通充電用と急速充電のふたつの充電口が配置され、主に自宅では普通充電、外出先で急速充電という使い分けをする使い方が一般的です。

 リーフの充電口位置について、日産の担当者は次のように説明しています。

「元々、リーフは世界に先駆けて登場したEVということもあり、『EVを認知させる』目的もあったために、従来のガソリン車などとは異なるフロント部分にあえて設置しました。

 また、慣れない充電作業の際にもフロントにあるほうが給電口の位置に迷うことがなく、前向き駐車すればそのまま充電出来るというメリットもあります」

 一方で日産は2021年中頃にクロスオーバーEVとなる「アリア」を世界各地の市場に導入予定ですが、充電口は急速用が左フロントフェンダー、普通用は右フロントフェンダーに配置されるなど、バラバラになっています。

 アリアの充電口について、前述の担当者は次のように話します。

「アリアの充電口がフロント左右に配置されているのはあえてその位置にしています。

 リーフでは前述のように『EVを広める』目的がありましたが、初代リーフが登場してから10年以上経過していることなどもあり、アリアではボンネットではなく、左右のフロントフェンダーに配置することでボンネット周りをすっきりさせています」

デザインに取り入れたホンダ、ガソリン/ディーゼルと同じようにしたマツダとレクサスの違い

 日産では、リーフやアリアのコンセプトによって充電口の位置が異なるようですが、ホンダやマツダではどうなのでしょうか。

 ホンダは、2020年10月30日に小型EVとして「ホンダe」を日本で発売しました。

 ホンダeは、同社の初代「シビック」をイメージさせるフロントフェイスに加えて、全体的に丸みを帯びた可愛らしいデザインを採用しています。

 ホンダeの充電口はボンネットの中央部に配置されていますが、その理由について チーフエンジニアの一瀬智史氏は次のように話します。

「ホンダeのデザイン的なポイントとして、『見せる要素と隠す要素』を明確化することで、よりアイコニックな要素であるフロントデザインを際立たせました。

 例えば、ボディの黒い部分にレーダーやカメラといった機能パーツを入れることで、ボディ全体をスッキリさせています。

 充電口は、従来の給油口よりも面積を取ります。そのため、機能パーツのひとつとして、ボディカラーに関わらず黒色で配色することで、デザインのアクセントになっているほか、充電口もひと目で分かるというメリットもあります」

フロントデザインに上手く取り入れられる形で配置されたホンダ「Hondae」の充電口(ボンネットを開けた状態)

 また、2020年10月に発売したコンパクトSUV「MX-30」のEV版を2021年に日本で発売するとしています。

 MX-30の充電口は、普通用と急速用を右リアフェンダーに集約。なお、ガソリンモデルとなるMX-30は左リアフェンダーに給油口が配置されています。

 MX-30同様にリアフェンダーに給油口を配置しているのが、レクサス「UX300e」です。

 UX300eは、2020年10月に「2020年度限定販売135台」として販売され、充電口は右リアフェンダーに普通用、左リアフェンダーに急速用を設定しています。

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 このように従来のガソリン/ディーゼルモデルでは、基本的な給油口の位置は統一されていますが、EVの充電口に関してはメーカーやモデル毎のコンセプト、デザイン性によって異なるようです。

 デザインという点では、ドアミラーがカメラに置き換わることが認可されたあと、前述のホンダeやレクサス「ES」に採用されました。

 今後、外観デザインにおいてこれまで定番化していた設置場所や形状は、新しいデザインの方向性と共に変化していくのかもしれません。