問題となっているのは1973年の法律改正。投資家たちの透明性に関する法で、貿易産業省は投資家たちに所有する株式の情報の公開を義務づけようしていた。投資家たちがダミー会社などを通じて上場会社の株式を密かに取得できないようにする法案が作られていたという。

ところがその年の12月に改正された法律には、最初の法案にはなかった「国家元首らが使っている会社は法律の適用から除外される」という条項が新たに入っていた。国家元首には女王も含まれる。新聞「ガーディアン」はこの年に書かれた政府の書類を発掘、エリザベス女王が個人的に依頼している弁護士が高級官僚たちに会っていたと報じている。同紙は女王が自分の資産を公開するのを嫌がり、「女王の同意」と呼ばれる議会の手続きを利用。この条項を入れるように弁護士を通じて政府の役人に働きかけたと見ている。この手続きは「君主の特権や私的な利益に影響を及ぼす可能性がある法案が提出された場合、政治家たちが女王に意見を聞く」ものだという。

この報道に英国王室は声明を発表。「『女王の同意』は議会の手続きであり、議会における君主の役割は形式的なものである。同意は常に政府の要求に従って行われる」とコメント、女王が望んで使える手続きではないと説明している。「君主が法律の制定を阻止したという説明は間違っている」「『女王の同意』が必要かどうかは議会が決めることであり、それは王室から独立した判断」だと説明、同紙の報道を完全否定している。

新聞「サンデータイムス」は2020年のエリザベス女王の資産額を約4億8,000万ドル(約505億円)と推定しているが、英国王室はこれまで正式に資産額を発表したことはない。今回の報道をきっかけにロイヤルファミリーの財政事情について情報公開を求める声も改めて上がりそう。