日本でも話題となった豪州仕様のトヨタ「86」とは!? オーストラリアにまつわる車5選

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オーストラリアは自動車大国だった!?

 日本の南、約6000kmの距離にあるオーストラリアといえば、日本の約20倍もの国土を有し、カンガルーやコアラといった野生動物や、雄大な自然をイメージする国ではないでしょうか。

独自の文化で育まれたオーストラリアのクルマたち

 しかしオーストラリアは、かつて自動車製造が盛んにおこなわれ、日本の自動車メーカーも現地に工場を建てて生産をおこなっていました。

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 そしてオーストラリア独自の自動車文化も育まれています。そこで、オーストラリアにまつわるクルマを、5車種ピックアップして紹介します。

●ホールデン「ユート」

まさにスーパートラックと呼ぶにふさわしい「ユート」

 日本ではあまり馴染みはありませんが、オーストラリアで誕生し、100年以上の歴史を持つ「ホールデン」という自動車メーカーがあります。

 現在、ホールデンはGMの傘下で、これまで数多くの魅力的なクルマを製造してきましたが、2017年に工場を閉鎖。2021年にはホールデンブランドも廃止されることが発表されており、もはやメーカーとしては風前の灯火です。

 このホールデンには、かつてスタイリッシュなピックアップトラック「ユート」がラインナップされており、高性能なエンジンを搭載するなど、スポーツカーにも負けない走行性能を持つトラックでした。

 ユートは乗用車の「コモドア」をベースとしたモノコックシャシのピックアップトラックで、2007年に発売されたモデルのトップグレードは、6リッターV型8気筒エンジンを搭載。トランスミッションは6速MTが設定され、ドイツのサーキット「ニュルブルクリンク」でも俊足ぶりを発揮しています。

 外観は洗練されたスポーティなフォルムで、派手なカラーリングも用意されるなど、北米の高性能ピックアップトラックとは異なる欧州車のような雰囲気があります。

 しかし、ホールデンは徐々にオーストラリアでの生産を縮小していったことから、2017年をもってユートの生産を終了。

 現行のラインナップでは、シボレーのOEM車でダブルキャブの「コロラド」を販売しています。

●マツダ「ロードペーサー」

ロータリーエンジンを搭載したプレステージサルーンの「ロードペーサー」

 マツダは1975年に高級セダンの「ロードペーサー」を発売しました。

 当時、ロータリーエンジンを主力としていたマツダは、小型車から大型車、バスやピックアップトラックまで、すべてのラインナップにロータリーエンジンを設定することを推進。

 そのため、ロードペーサーも654cc×2ローターで135馬力を発揮する「13B型」ロータリーエンジンを搭載していました。

 しかし、マツダには大型セダンを自社で生産する設備が無かったため、ホールデンにOEM供給を打診。ホールデン「プレミアー」の車体をベースにロードペーサーを生産します。

 プレミアーを選んだ理由としては、アメリカ車のようなフルサイズの大型セダンながら、右ハンドルということで、最小限の改良で済んだからというのが濃厚です。

 ロードペーサーはパワフルなロータリーエンジンを搭載していましたが、もともとは5リッターを超えるV型8気筒エンジンが搭載されることを想定していたため車体は重く、ロータリーエンジンの燃費の悪さに拍車がかかったといいます。

 一方で、騒音や振動が少ないロータリーエンジンならではの静粛性による、上質な室内空間は高く評価されました。

 スタイリッシュなボディは日本車と一線を画するものでしたが、日本人には馴染めなかったようで、さらに高額な車両価格が追い打ちをかける形で販売は低迷。

 1977年に販売を終了し、いまでは非常にレアなモデルです。

●トヨタ「86 GTS」

日本でも人気があった豪州仕様の「ニュル羽」付き「86 GTS」

 2012年にデビューしたトヨタ「86」は、スバルと共同開発された2リッター水平対向4気筒エンジンを搭載した小型FRクーペです。

「超低重心FRパッケージ」を実現したことで、高いコーナーリング性能を持つライトウェイトスポーツカーとして、発売当初から高い人気を誇りました。

 トヨタは1960年代にはオーストラリアへの自社モデルの輸出を開始しており、かつては工場を建設して現地生産をおこなっていたこともあるなど、現地でも高いシェアを誇っています。

 そして86もオーストラリアで販売され、ワンメイクレースが開催されるなど、若い世代から高い支持を受けています。

 なかでもユニークなのが、オーストラリア独自のオプションで、フロントバンパースカート、サイドスカート、リアバンパースカート、大型リアスポイラーで構成されたエアロパッケージが設定されています。

 これは、日本にはないエアロパーツで、まだ86が発売される以前に、プロトタイプがニュルブルクリンク4時間レースに出場した際のエアロパーツを再現。

 2012年6月に「86 GTS」グレード専用で発売されると、日本でもこのエアロパーツは話題となり、「ニュル羽」や「ニュルウイング」と呼ばれ、オーストラリアから取り寄せたユーザーもいたほどです。

 さらに2016年には、トヨタオーストラリアが独自で企画し、1台だけ作られたステーションワゴンタイプの「86 シューティングブレーク」が存在するなど、86はオーストラリアでも特別な存在となっています。

わずかな期間しか販売されなかった豪州育ちの日産車とは!?

●日産「ブルーバード オーズィー」

スタイリッシュなワゴン風ボディながら販売はイマイチだった「ブルーバード オーズィー」

 日産は1976年にオーストラリアで現地生産を開始。1992年に撤退するまで、日本国内モデルをベースとした、オーストラリア独自の車種も生産していました。

 そのなかの1台が、1987年に発売された日産8代目「ブルーバード」の派生車として、1991年にオーストラリアから日本へ輸入された「ブルーバード オーズィー」です。

 なお、「オーズィー」という車名は、「オーストラリアの、オーストラリア人」という意味を持つ「Aussie(オージー)」に由来しています。

 ブルーバード オーズィーはステーションワゴンタイプボディの5ドアハッチバック車で、外観は8代目ブルーバードと同様のフロントフェイスに、ロングルーフを加えたスタイリッシュなモデルです。

 前後にスポイラーを装備し、エンジンは日本仕様専用に2リッター直列4気筒DOHCを搭載するなど、スポーティに仕立てられました。

 使い勝手も良いモデルのはずでしたが、当時の日本では5ドアハッチバックは人気が無く、ブルーバード自体のフルモデルチェンジもあって、わずか3か月ほどで販売を終了。

 現存数が少ないため、いまではかなり貴重なクルマです。

●トヨタ「ランドクルーザー70」

農地や荒れ地で活躍し、絶大な信頼を集める「ランドクルーザー70」

 1984年に発売されたトヨタ「ランドクルーザー70」は、悪路走破性と耐久性が高く評価された「ヘビーデューティー」です。

 日本では2004年に販売を終了しましたが、海外ではフルモデルチェンジすることなく、いまも過酷な環境で活躍しています。

 2014年には期間限定で、ワゴンタイプのバンとダブルキャブピックアップトラックが、日本で再販されて大いに話題となりました。

 現在、ランドクルーザー70の主な輸出先はオーストラリア、中東、アフリカ諸国で、なかでもオーストラリア仕様は数多くのラインナップを展開するほど、優れた道具として人気があります。

 エンジンは4.5リッターV型8気筒ターボディーゼルを搭載し、組み合わされるトランスミッションは5速MTのみです。

 ボディタイプは5人乗り4ドアのワゴン、2人乗りシングルキャブのピックアップトラック、5人乗りダブルキャブのピックアップトラック、そして、マイクロバスのように多人数乗車も可能な2ドアワゴンであるトゥループキャリアをラインナップ。

 さらに、もっとも装備が簡素化された「ワークメイト」と、装備が充実した「GX」、「GXL」グレードが設定されました。

 外観は日本で再販されたモデルと大きく変わりませんが、エアダクト付きのボンネットや、渡河性能を向上させるシュノーケルを標準装備し、ピックアップトラックでは荷台の形状が日本仕様と異なります。

 また、ランドクルーザー70の特徴として、ワゴンとピックアップトラックの燃料タンクが130リッターと大容量ということが注目されましたが、トゥループキャリアでは180リッターとさらに大容量で、人がほとんど住んでいないオーストラリア内陸部でも活躍できそうです。

 ちなみに、国内仕様の「ランドクルーザー200」の燃料タンは93リッター(ガソリン)ですが、オーストラリア仕様では138リッター(ディーゼル)と、やはり大容量となっています。

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 オーストラリアに訪れてみると驚くのが、1970年代から1980年代の日本車が普通に走っていることです。

 外装はかなり傷んでいるため、決して趣味ではなく、普段の足として使われている模様。

 地域によっては雨が少ないため、サビの進行が遅いことから、生き残っているのでしょう。

 かつては、日本で人気のある旧車を、オーストラリアで仕入れて日本で売るビジネスも成り立っていたほどで、いまもお宝が眠っているかもしれません。