東京・中野サンプラザにて約4か月ぶりに開催されたハロプロ公演。いつもの公演時と比べて開場前に集まるファンの数は少なかった

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 新型コロナウイルスの感染拡大によって、コンサートや舞台などの公演ができない状況が続いていたエンタメ業界だが、いよいよ通常を取り戻すべく動き始めている。

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 7月11・12日には、東京・中野サンプラザにて、ハロー!プロジェクト(ハロプロ)のコンサートツアー『Hello! Project 2020 Summer COVERS 〜The Ballad〜』がスタートした。2月末以降、観客を入れてのコンサートやミュージカルなど、すべての公演が中止または延期となっていたハロプロにとって、観客を入れての公演は約4か月ぶりとなる。

 現在、モーニング娘。’20、アンジュルム、Juice=Juice、つばきファクトリー、BEYOOOOONDSの5グループが所属しているハロー!プロジェクト。毎年、夏と冬に開催されるハロプロ全体のコンサートツアー(通称ハロコン)では、全グループが全公演に出演するのが基本となっている。しかし、“コロナ後”での初開催となった今回のハロコンでは、感染予防のためにできるだけステージに登場するメンバーの数を減らすという理由もあり、5グループ52名のメンバーをシャッフルして、Aチーム、Bチーム、Cチームの3組に分け、それぞれのチームによる公演となった。

 また、観客における感染対策も万全だ。マスク着用、着席での鑑賞となっており、タオルを振ったり、声援を贈ったりすることも禁止されている。そんな事情もあり、“盛り上がることができない”状況で楽しめるコンサートということで、グループによる楽曲披露はなく、メンバーがJ-Popを中心としたバラード曲をソロでカバーするという内容となっている。

 今回のハロコンについて、アイドル事情に詳しいエンタメライターの大塚ナギサ氏はこう話す。

「アイドルのコンサートは、ペンライトを振ったり、コールを入れたりするファンとともに盛り上がるものですが、感染予防ということを考えるとその楽しみ方そのものを見直さなければならない。かといって、盛り上がる楽曲を披露しているのに、ファンに対して“黙って観ていなさい”というのも酷な話です。そういった状況で楽しむことができる内容として、“ソロでバラード曲をカバーする”というアイディアが出てきたのでしょう」

 今回の公演では、客席の配置や観客の入退場においても、感染対策が実施された。まず、開場時の中野サンプラザ周辺に観客が集まり“密”になることを防ぐため、観客を座席番号で3グループに分け、それぞれに集合時間を設定。3回に分けて時間差で入場するという形になった。入場の際も、ソーシャルディスタンスを取って整列した。12日の3回目の公演に行った前出の大塚氏は、現場の様子についてこう話す。

「いつものハロコンなら、中野サンプラザの前の広場にファンが大勢集まって、ワイワイやっているんですよ。トレーディング系のグッズの交換スペースなども設けてあるんですが、今回は物販もないので交換スペースもなく、会場周辺のファンの数も明らかに少なかったですね。もちろん。多少は待っている人もいるんですが、できるだけ密にならないように。距離を空けて待機していたように見えました」(大塚氏・以下同)

 入場時には、検温と手のアルコール消毒を実施。チケットの半券は切らずに、係員が目視で確認するという形となった。さらに、スマートフォンによる追跡システムも導入された。

「入場時にスマホでQRコードを読み、専用サイトにアクセスして、そこでメールアドレスと座席番号を登録しました。もしも感染者が出たら、このアドレスに連絡がくるという仕組みです」

 会場内は、いつものハロコンとは全く違う雰囲気だったという。

「座席は、隣と1席空けて座る形で、前後左右が必ず空席になっていました。いつもよりも開場から開演までの時間も長めで、早く入場した場合は1時間以上待っていた人もいたと思います。でも、会場内はとても静かで、ロビーなどに人が溜まるようなこともあまりなかったですね。基本的に座席について静かに待っている人がほとんどで、観客の感染予防に対する意識の高さも感じました」

 演出も通常のハロコンとは全く異なるものだった。

「公演中の演出はとても簡素で、いつものハロコンなら必ずあるステージ上の大型ビジョンもなかったし、照明もシンプルなものでした。完全に“歌を聞かせる”ということに特化した公演でしたね。客席では、ペンライトを胸の前あたりでゆっくり振っているファンが多く、メンバーたちのソロ歌唱をじっくりと堪能している様子でした。もちろん声援をあげるファンもなく、拍手で盛り上げるという感じ。とても素晴らしい雰囲気でしたね」

 さらに、退場時においても、細心の注意が払われていた。

「完全な規制退場でした。係員が指示した座席の観客が、指定された扉から退場するという形。たとえば、まず前方の2列に座っていた観客が横の出口から退場するように指示されたら、次に後方の2列の観客が後ろの出口から退場、その次は2階席の2列が退場、そして次はまた前方の2列が退場する……という感じで、ひとつの出口に人が集中しないように、上手く工夫していました。いつもは開いていない出口も使っていたこともあり、見事に混雑していなかったように感じました。これは通常のコンサートにも導入すべきシステムのような気もしましたね」

 徹底した感染予防対策の中で行われたハロコンだが、今後のアイドル界を占うものとなったと言える。

「コロナ後のアイドル界において、いかにしてファンを楽しませるのかというのは、とても大きな問題で、ハロー!プロジェクトはそこに対して、一つの可能性を示したと言えます。ほかのアイドルグループもまた、ハロプロのように今の状況に対応できるコンサートを模索して、いろいろなアイディアが出てくると思います。

 ただ、裏を返せば、“コロナ後”に対応しうるパフォーマンスができないと、今後のアイドル界で生き残るのが難しいという側面もあるわけです。それこそ今回のように“歌を聞かせる”という公演となれば、普段からしっかりボーカルレッスンを積んでおく必要があるだろうし、別の公演内容にするのであれば、そこに対応できるだけの何らかのスキルが必要となる。あるいは、演出面における革新的なアイディアも重要になるはず。いずれにせよ、新しいエンターテインメントを実践できるだけの土台が必要となるのです。そういう意味で、これまで以上にアイドルに求められるもののハードルが高くなるかもしれないですね」

 新型コロナウイルスによって変革を強いられたアイドル業界。そして、その第一歩となったハロー!プロジェクトの挑戦。ここを境にして、アイドルが見せるエンターテインメントの幅が、さらに拡大されていくことだろう。