つきつめれば“他人同士”である夫婦が、いかに円満に暮らしていくか――。夫婦にまつわる問題は、時代が移り変わっても普遍的なテーマです。

夫婦喧嘩、育児・家事の分担、不倫問題、不妊治療、セックスレス…どんな夫婦であれ、多かれ少なかれ問題を抱えているもの。そんな難題の解決策を探った著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある
』(扶桑社刊)を出版した、コラムニスト犬山紙子さん。彼女がたどり着いた、夫婦円満のルールとは?

子どもが生まれたら夫への愛情が下がるのはなぜ?夫婦円満のルール




左:著者の犬山紙子さん、右:犬山さんの夫である劔樹人さん。新書のイラストも担当

一般の夫婦を取材することで見えてきた、“夫婦”という関係性を巡るありとあらゆる危機や問題の対処法、折り合いのつけ方を犬山さん独自の視点と切り口で探ったこの本。
これまで一般夫婦への取材に費やした期間は約3年。そこから見えてきた「夫婦円満のための100のルール」をまとめているそう。

著者である犬山さん自身も2014年に結婚、現在は3歳の子どもを育てながら仕事に励む母であり、妻です。
ここでは、巷でも多く聞かれる「子どもが生まれたら夫への愛情が下がってしまう現象」についての、犬山さんの考察を聞きました(以下、『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』より抜粋)。

●なぜ、子どもを産むと夫を嫌いになる?

子どもを産んでから夫を嫌いになった――という話、残念ながら本当によく耳にします。『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法
』(ジャンシー・ダン/太田出版刊)という本が話題になっていましたが、「子どもが生まれたら夫が憎くなってしまう」というのは世界の共通認識であるということがよく伝わってきます。

なぜ多くの妻は、子どもを産むと夫を嫌いになるのか。ホルモンのバランスが変わったせい…だけではもちろんなく(ホルモンバランスの乱れが原因なのだったら、何か月かたてば好きに戻るはず)、出産後、体が大ケガしているような状況で、こまぎれ睡眠のなか、子どもの世話をするのが無理以外なにものでもないこと。さらにはすぐにも死んでしまいそうな命を守らないといけないプレッシャーがとてつもないこと。そんな大変な思いをしている妻を助けようともせずに変わらないまま、「手伝う」感覚の夫の場合は嫌われて当たり前…という話だと思います。

東レ経営研究所による「女性の愛情曲線」というグラフがありまして。
これによると、結婚直後から妻の夫に対する愛情は下がっていくのですが、出産して、子どもの乳幼児期に妻が「夫とふたりで子育てした」と思えたら、どんどん愛情は復活し、子どもが高校に入学する頃には新婚時の愛情と変わらないまでに回復するようです。


※画像はイメージです

逆に夫が子育てに参加しない場合、子どもが高校に入学する頃には、妻の愛情は地に落ちています。熟年離婚がどうやって起こるのかがよくわかるグラフだなあと思うわけです。もちろん、育休を取れない会社だ、持病がある、などさまざまな事情で子育てに参加できないこともあると思います。そんなときは相手が無理をしないようにどうすべきか話し合うこと。無理をさせないようシッターさんなどの手助けの手配だったり、相手への感謝を伝え続けるだったり、寄り添う姿勢、実際寄り添っているかどうかが大きなポイントかと思われます。

私の場合、夫は「産後育児を私よりもやる」と宣言し、実行してくれたので「大変な状況をともに乗り越えてくれた人」として愛情は落ちるどころか、うなぎのぼりでした。

●相手のいいところを書き出す。夫を憎まずにすむ方法

さて、冒頭に挙げた『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』ですが、ライターのジャンシー・ダン自身、大好きで尊敬している夫が、産後家事育児を少ししか担当しない姿に怒りに怒りまくったそうです。そこでセラピストや、友人、さらにはFBIの人質解放交渉人にまで徹底的にコミュニケーション方法を聞いて書き上げた超大作です。

ぜひパートナーとの家事育児の分担に悩む人は読んでほしいのですが、そこでもやはり本書にあるような「相手は察さないので明確に伝えるべし」だったり「カウンセリングの有用性」「デートナイトは必要」だったりと同じような結論が多く見られるのがおもしろい。アメリカも日本も同じですね。以下、私が「これはぜひ!」と思ったものをピックアップしてみました。



・自分の権利はもっと主張していい。自分のための時間を確保したら元気を取り戻すことができる

・衝突時の主語を「あなた」から「私」に変える。「あなたは私の話を聞いていない」ではなく「私にはあなたが話を聞いてくれないと感じる」と。そうすることで自分が冷静になれる

・パートナーにとって絶対必要な家事をやらないようにしてみると、パートナーが自分で動き出すことになる

・男性にも育児ができるということは、男性のやり方も尊重すべき

・相手のいいところを書き出してみる

・興奮している相手の感情に「あなたは今悲しんでいるように見える」など感情にラベリングをする。(言い分を軽視するわけではない。的外れの可能性もあるので断言はしない)すると、理性的に話が進みやすい


やはり大切なのは「どうコミュニケーションを取るか」につきますね。互いの固定観念や気持ちの齟齬のせいでこじれてしまうのをいかに防ぐのか。熟年になっても仲良くいたいなら無視はできないことだなと思うのでした。

<文/ESSEonline編集部>

【犬山紙子さん】

作家、タレント。’81年、大阪府生まれ。現在、週刊SPA! にて「他人円満」を連載中。過去には小誌で7年間「痛男」を連載。著書に『アドバイスかと思ったら呪いだった。
』(ポプラ文庫)など。新刊『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある
』(扶桑社刊)が発売

【劔樹人さん】

ミュージシャン、漫画家、主夫。犬山さんの夫であり、「他人円満」ではイラストを担当している。著書に『今日も妻のくつ下は、片方ない。
』(双葉社)