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 大阪のテレビ局MBSの藤林温子アナウンサー(入社5年目)は、ショートカットのヘアスタイルがとても似合うキュートな女性アナだ。声も「アニメ声優っぽい雰囲気」で可愛い…などと彼女の印象についてこう感じていたら、2020年1月から放送開始のアニメーションの声優オーディションを受けていたという。結果は、見事合格。そこで、12月15日(日)の「コトノハ図鑑」(MBS)では、「声優デビューまでのカリキュラム」を放送。実際に声優の専門学校を訪れ、藤林アナは声優になるためのトレーニングを体験するのだが…。

新人モデル役!

 「MBSのアナウンス室では、あなた(声優の)素質があるんじゃないかと思っていました」と言ったのは、藤林アナのプロジェクトに同行する入社29年目の亀井希生アナウンサー。
今回、藤林アナが合格した役は、アニメ「ランウェイで笑って」(MBS)のヒロインのモデル事務所の後輩モデル役。合格が発表された時、近くにいた松井愛アナウンサーは「えっ?モデルっていった?」と、驚いていたが...。同じく「アナウンサー役じゃないんだ?」と少々驚いた。

声優デビュー

 藤林アナの声はとても可愛い。その声質を活かし別の料理番組では、番組キャラクターの声を担当している。「アナウンサー役じゃないんだ」と思っていても、藤林アナは「声が可愛い」「すでにキャラクターの声をしている」「発声など、『声』の訓練を受けている局アナ」と揃っているので、「声優デビューのプロジェクトなんて必要だろうか?」と疑問がわいてきた。
ところが...

感情の解放

 取材場所は、多くの卒業生が業界で活躍する「代々木アニメーション学院」。この学院の「声優タレント科」で藤林アナは「声優」について学ぶことに。
藤林アナと亀井アナが学院を訪れた時、生徒らが「わはは!」「ぎゃー!」「ふざけんな!」などと、全身全霊で叫んだり、爆笑したり「大騒ぎ」していた。

「これは、『感情の解放』のトレーニングをしていました」と、声優歴21年の那須めぐみ先生。感情を瞬時にコントロールし表現力を鍛えるという。まるで舞台役者のように全身で表現している生徒らの姿に驚いた。
那須先生は「アフレコで、カットまわりで、いきなり感情が変わることがありまして」と解説。それを聞いた藤林アナは「アナウンサーの仕事ではなかなかないことですよね...」と不安気に訴えると、すぐに「(アナウンサーは)感情を抑えて平常心で表現するから真逆のお仕事ですね」と亀井アナ。「でも!大丈夫。藤林アナは平常心じゃないことが多いから。あなたには素質があります!」と続けた。

恥ずかしい気持ちが...

 そして、実際に藤林アナが「感情の解放」のトレーニングをしたのだが...。
演じている側に恥ずかしさがある場合、見ている視聴者側にもそれが伝わる。藤林アナも「あの...よくないなと思ったのが...。羞恥心があるなと。恥ずかしい気持が拭い切れなかったというのが、先生にバレていると思います」とコメント。「私だけじゃなく、ここにいるみんな(生徒)全員わかってますよ」と先生は言っていたが、視聴者にもバレてますよ。

あ!コーヒー!

 次のトレーニングは、何も入っていない紙コップに熱いコーヒーが入っている設定で演技する。まずは、生徒が見本の演技をした。亀井アナは「気のせいなのか...メガネが曇っているように見えました」と感想を。
そして、亀井アナも同じ演技をすることに。しかし、亀井アナは「あ!コーヒー!ありがたいな!」といきなり言ってしまった。これでは、仮定・想定しての演技ではなくただの「実況」だ。先生からも「職業的な問題ですね。つい実況してしまうんですね」。

「アフレコ」と「アテレコ」

 声優業界には「アフレコ」「アテレコ」という専門用語があるが、違いはわかるだろうか。
「アフレコ」は、「アフターレコーディング」の略で、完成した映像(主に日本のアニメ)に合わせて後から声を収録すること。
「アテレコ」は、海外のアニメや映画に日本語で吹き替える。
日本語を「あててレコーディング」すること。
「実は、『アテレコ』は原語を聞いています。英語の役者さんの声に合わせて自分のお芝居(日本語)をあてています」と那須先生。「アテレコ」は高度なテクニックがなければできないのだ。「この海外俳優にこの声って!? 合ってない!」などと簡単に言っていたが...もう言えなくなった。

人気声優・花守ゆみり&花江夏樹

 藤林アナが演じるのは、主人公・藤戸千雪の後輩モデル須東晴香(高校2年生)。
今回、藤林アナの「アフレコ」担当は音響監督の田中亮さん。藤林アナに要求することは1つ「どれだけキレイに嘘をつけるか」だった。深くてかなり難しい要求だ。

 そして、スタジオに入ると、千雪役を演じる花守ゆみりさんと、デザイナーを目指す高校生・都村育人役の花江夏樹さんがいた。2人からも「晴香役のかわいさを思い描いて」「自分に自信を持つこと」とワンポイントアドバイスをもらった藤林アナ。
そして収録本番へ。

想像以上...!

 台本は、かなりセリフがあった。山中真アナウンサーから「長いじゃないですか!こんなの藤林は噛むでしょ!」と言われていたが、当然のように「噛みましたよ」と藤林アナ。この時、藤林アナは「噛みましたよぉ」と軽く言っていたので、「少々噛んだだけで、撮り直し数回で終了したんだ」と勝手に思っていたが......。
この後、藤林アナの「アフレコ」の模様は、想像を遥かに超えた"壮絶さ"があった。表現的には合ってないかもしれないが、「音響監督VS.藤林アナ」という感じがした。

 優しい声で監督の田中さんは「そこまでゆっくりしなくていいや」「ゆっくりし過ぎ」「テンション下がってきた」「若さがない!」「今度はおばさんくさい」「ちょっと違う」...など続々とダメ出しが出て、なんと、撮り直しすること50回以上という。ポテンシャルの高い藤林アナが50回以上も撮り直しとは。驚きを超えて、「声優」全員に尊敬の念が深まった。
藤林アナの渾身の「晴香」。気になる人は2020年1月から放送開始なので(MBSでは1月10日(金)深夜)チェックしてみては。

「コトノハ図鑑」(MBS 毎週日 あさ5時45分放送)は、MBSのアナウンサーが「コトノハ図鑑」の編集者として様々な分野の"言葉(コトノハ)"の世界を取材。「アナウンサーが言葉を学ぶこと」を通して、視聴者にも発見を届ける。"コトノハ"を深く知れば、『人生が少し豊かになる』をコンセプトに知的好奇心をくすぐる番組。