ホラー映画「リング」にはモデルがいた?被験者は服毒自殺…実際に明治時代に行われた超能力実験とは?
誰もが知っている日本ホラー映画の金字塔「リング」。初公開は1999年ですが、その後も派生作品が作られて、2019年になっても新作が発表されるほどのヒット作品になっています。
この映画に登場する貞子が超能力の持ち主だったことが、呪いを拡散させる力になりました。
作中、貞子の母・山村志津子が超能力を披露してマスコミから非難されるという出来事が描かれており、実際に明治時代に行われた超能力実験の騒動が元になっていると言われています。
明治時代に行われた超能力実験
明治42年、心理学者の福来友吉の元に、熊本県在住の御船千鶴子という女性が千里眼(透視)を行うという情報が舞い込みます。千鶴子は催眠術を扱う義兄によって、千里眼の能力を発揮したとのこと。千鶴子は催眠術に感応しやすいタイプだったようです。
福来友吉は千鶴子の能力を実験するため熊本へやってきます。実際に行われた透視実験では、箱か封筒に入れられた対象を千鶴子が手に持ち、精神統一して中身を当てるというものでした。
高い的中率で中身を当てたことで、福来友吉は千鶴子の能力を信じるようになります。その後、福来友吉は学会で千鶴子の実験を報告、そして東京での公開実験へと繋がっていくのです。
公開実験で超能力ブームが起こるが
東京の公開実験では、「3文字記した紙を鉛管に封入したもの」が用いられました。この実験でも高確率で的中させた千鶴子を、当時のマスコミは囃し立てるようになったのです。
そうして千鶴子の実験をきっかけにして超能力ブームが起こり、日本各地で能力者が名乗りを挙げるようになります。その中でも能力が秀でているとされた、長尾郁子という女性がいます。
長尾郁子(wikipediaより)
もともと予知などをして周りを驚かせていた郁子ですが、千鶴子の実験を新聞で知り、千里眼を試してみたところ能力を開眼したとのこと。
ただし、しばらくすると千里眼の実験自体がインチキだと疑惑を向けられるようになります。「実験中に対象のすり替えが行われたのではないか」と、学者の間で騒がれるようになった千鶴子。その騒ぎの中で、千鶴子は謎の服毒自殺を図ってしまうのです。
数々の千里眼を行い、学者を含めた実験に参加したことで超能力ブームを起こした御船千鶴子は、たった24歳で命を絶ってしまいました。その翌年、郁子もインフルエンザによって命を落とします。
実在の能力者たちとリングの登場人物
インチキ騒ぎや相次いで能力者が亡くなってしまったことで、千里眼実験は続けることが困難になり、福来友吉は学会を追われました。
福来友吉が研究していた能力者には、ほかに高橋貞子という女性がいましたが、彼女もまた、研究を続けられなくなったことで故郷に戻ったそうです。
晩年の福来友吉(wikipediaより)
この一連の騒動を「千里眼事件」と呼び、映画「リング」内でも同じような出来事が描かれています。
呪いの連鎖を起こそうとした山村貞子、その両親である伊熊平八郎と山村志津子は映画内で超能力実験を行っていることから、モデルは福来友吉と御船千鶴子。貞子の名前は、高橋貞子からリング原作者の鈴木光司氏が着想を得たと言われています。
相次いで能力者が亡くなったことから、リングの貞子が辿ったように、不思議な力というのは人を幸福にはしないのかもしれませんね。
参考サイト:本の万華鏡|国立国会図書館