アメリカでSUVオブ・ザ・イヤーを獲得した初代トヨタ・ハリアー

 アメリカの新車販売統計において、SUVは小型トラックにカテゴリーされて販売台数が発表されている。初代レクサスRX(初代ハリアー)がデビューした当時は、アメリカで販売されていたSUVのほとんど(すべて?)がトラックシャシーベースのものだったので、RXも含めて小型トラックジャンルにカテゴライズされていた。

 RXは大ヒットし評価も高かったのだが、当時は乗用プラットフォームベースのクロスオーバーSUVなどはRXぐらいしかなかったので、SUVなのに“トラック・オブ・ザ・イヤー”として表彰するわけにもいかず、あくまで小型トラックにカテゴライズしたまま、“SUVオブ・ザ・イヤー”というのが新設されたようだとの話を聞いたことがある(RXは初代SUVオブ・ザ・イヤーに輝いている)。

 RXに刺激を受けたのか、その後も各メーカーで乗用プラットフォームベースのクロスオーバーSUVは増え続けているのだが、いまだにクロスオーバーSUVも小型トラックにカテゴライズされ続けている。

 最新のアメリカの新車販売統計を見ると、新車販売全体における小型トラックの販売比率は7割を超えている。もちろんクロスオーバーSUVの人気の高さが販売台数を押し上げているのだが、その小型トラックジャンルの販売台数を下支えするのは、あくまでも小型ピックアップトラックとは地元の事情通。「全米でもっとも売れているクルマはフォードのFシリーズピックアップです。よくカムリがアメリカでもっとも売れているとされていますが、これはパッセンジャーカーのカテゴリーということになります」。

 しかも、好景気の続くアメリカでは大型SUVがよく売れているので、アメリカンブランドでそのクラスに相当するモデルは、伝統的なトラックシャシーベースの“クロカン”というイメージの強いSUVとなるので、トラックシャシーベースのSUVが駆逐されたというわけでもない。

 小型トラックが新車販売全体の7割を超えたとしても、SUVはまだまだ小型ピックアップトラックの勢いには及んでいないとの見方も多い。そしてシャシーベースの小型ピックアップトラックをラインアップしていないと、アメリカ国内では販売台数がなかなか稼げないのも実状のようである。

SUVが原点回帰! 角ばったデザインが再び流行

 日本人の感覚では、SUVと聞くと4WDというイメージが強いが、アメリカではFRもしくはFFという2WDが売れ筋となっている。日本でも最近は2WDのSUVがラインアップされることもあるが、アメリカでは「ロッキー山脈に住むとか特別な事情がない限り4WDは選ばない」などという冗談のような話もある。

 それでも地球温暖化により、降雪地域の雪質が悪化したりもして、降雪地域での4WD需要は増えており、スバルがアウトバックをメインに強みを見せているようである。降雪地域以外でも走行安定性などをアピールし、それが需要に結びついているケースもあるようだ。

 つまり、降雪地域での実用性や、どこか荒野を駆け巡るとか、アウトドアレジャーに熱心とか、そういう理由だけでSUVが選ばれているわけではなく、ファッションや、もちろん流行りで乗るというひともいるのは確かだ。そのため、コンパクトハッチバックのニーズがコンパクトクロスオーバーSUVへと移行しているようで、コンパクトハッチバックの売れ行きはいまひとつとなっているようである。

 アメリカでもアクアは“プリウスC”の車名で販売されているが、ラインアップは日本でいうところの“クロスオーバー”のみとなっているなど、メーカーも消費者ニーズを敏感にキャッチしているようである。

 そうはいっても、まだまだ街なかでは、セダンも多く走っており、フォードのように数年以内に原則的に乗用車の販売をやめるというのは、大英断というよりは「大丈夫なのか」という声のほうが多いような感じがする。

 クロスオーバーSUVは従来からの、ヘビーデューティSUVの“泥臭さ”を排除する意味からも、丸みを帯びたエクステリアを採用。都市向けSUVのイメージを強めていたが、ここへきて風向きが変わってきたとは、地元の事情通。

「いまRAV4がアメリカでもヒットしています。メルセデス・ベンツのGLBなどとともに、角型基調の昔のイメージのデザインを採用するSUVがここへきて目立ってきています。SUVも原点回帰へ向かっているのかもしれません」。

 フォードはすでに“ブロンコ”の復活を予告している。この復刻版はFFベースのクロスオーバーSUVとなるエスケープがベースとなるとされているが、見かけは往年のブロンコを彷彿させる武骨なイメージの外観になるようである。SUVがブームといわれて久しいが、昔ながらの雰囲気を持ちながら、カジュアルなキャラクターを持たせたモデルが今後は増えてくるかもしれない。