百合子はもう十分粘った…!もう十分抵抗感は示した…!

結構前に「決定の通達」を受けながらいまだに綱引き状態がつづく東京五輪マラソン・競歩問題。まぁもっとも綱引きをしているのは東京都の小池百合子都知事だけで、あとのみなさんは綱のそばでヒザ突き合わせながら「誰がどういう建前で金を出すか」を相談している段階ですので、綱引きというよりは「綱」ですが…。

↓アテクシが思うに、午前5時スタートならいけると思いますですわー!

何だか「背広の袖を切ったら涼しくなるはず」みたいな焼石感だな…!

もはや時刻の問題ではないのですよ!




僕はハッキリ言って、今こうして綱を抱えて「アテクシが思うにはー!」などとやっている場合ではないと思っています。IOCの考えが覆ることはありません。オリンピック憲章に基づき「決定権」を持つIOCが覆らない以上、この決定は覆りません。マラソンと競歩ができなくて困るのは選手。マラソンと競歩ができなくてみっともないのは東京。豊洲市場のときと一緒で、大山鳴動バンクシー一匹が関の山。もう十分に「アテクシが思うにはー!」はやりました。もうやった。すごいやった。わかったわかった。そのステップはもう十分です。

何故、覆らないか。

答えは「東京の夏が終わったから」です。

先だって行なわれたドーハ世界陸上で酷暑のなかをマラソンさせたところ、女子マラソンでは全体の40%の選手が棄権してしまった。この際も「酷暑のドーハでどうするんだ?」という懸念はもともとあったことから、大会側では深夜0時スタートという「直射日光さえなければ大丈夫でしょう作戦」を展開しました。しかし、結果はこの通り。優勝者は自己ベストを15分ほども下回るタイムで、レースとしても「世界一」を争うものとは到底言えない環境でした。

「直射日光さえなければ大丈夫でしょう作戦」はもうノーチャンスなのです。東京とドーハでは環境も違いますし、ドーハの夜のほうが東京の夜よりも暑いかもしれません。ドーハでの女子マラソンスタート時の気温は32度、湿度74%だったといいます。東京のマラソン日程にあたる2019年8月2日(女子マラソンの日取り)はアテクシ案の午前5時だと気温が27.7度、湿度が93%だったそうですので若干気温は低いかもしれません。湿度がどうかなとは思いますが、環境はドーハと東京で確かに違います。

しかし、「暑いなかでマラソンをさせて大丈夫か?」という根源的な不安に対して「太陽さえなければ大丈夫でしょう」はもはやまったく信用されていないのです。そりゃあそうです。ついさっき、組体操で大量に怪我人を出したばかりのタイミングで、「7段ピラミッドはダメでしたが6段ならイケます!」と言っても保護者は全然信用しないでしょう?もしもその言い分にほだされて「よっしゃ6段で行ってみよ」と決めたりして、それで何かが起きたら、決めたヤツまで同罪ですよね。

本当ならもっと抜本的な策を求めたいのです。

ドローンで上空からキンキンに冷えたポカリスエットを撒きつづける、とか。

コース上すべてにアーケードを作って、エアコンを設置する、とか。

太陽を破壊する、とか。

しかし、「抜本」は難しいので場所変更で勘弁してくれているのです。

その場所も、北方領土…は嫌味にしても品が無いので、北欧でやるとか、南半球でやるとかが理想なのです。ただ、それを言い出すと東京五輪どころか日本からさえも出てしまうので、せめて少しでも北の涼しいところという意味で札幌案が出てきているのです。IOCは札幌がイイんじゃなくて、日本で一番北にある「東京五輪をできそうな場所」として札幌を指定しているのです。「宗谷岬で」とか言わないぶん現実路線の妥協案なのです。

これはIOCにしてみれば東京五輪として成立させるための最大限の妥協案です。「札幌も暑い」なんてことは向こうだって当然知っていますが、「日本で一番北にある開催可能な場所まで移動した」ならば、それはもう最大限ということで妥協しようと言っているのです。もしもそれでも何かが起きたなら、その際はIOCも競技団体も一緒になって「非常に厳しいレースとなったが、選手たちはよく奮闘して素晴らしい戦いを展開してくれたし、東京の運営は完璧だった」と口裏を合わせようじゃないかという話なのです。東京都でやってバタバタ倒れたら上から刺しに行くけれど、札幌まで移動したら一緒に「何か問題でも?」の顔をしてあげますよ、という。

もし、コレを覆せる可能性があるとすれば、それはプランではなく「実例」のみです。ドーハとは違うことを示す「実例」、「こうすれば大丈夫」ではなく「こうやったら大丈夫でした」だけです。ドーハでは40%倒れたかもしらんけれど、東京では酷暑のなかでも「このようなプランで実行したら、通常程度の棄権率に留まり、記録も良好でした」という実例を見せるしかありません。ホノルルマラソンが暑そうなのに大丈夫なのは毎年ホノルルマラソンをやっていて「大きな問題になっていないから」です。東京にも毎年の実例があれば、IOCだって「実例があるなら大丈夫だろうと思った」で駆け抜けられるものを、実例もナシにプランだけで信用したら、それはやっぱり「同罪」なのです。

2019年の夏。日本の代表を決定するMGCを翌年の東京五輪と同じ日程、同じ時間帯に実施し、気温30度を超える酷暑のなかにも関わらず「暑熱対策の舗装、アサガオ、打ち水、かちわり氷、風鈴」などの対策が功を奏して、世界標準の記録で選手たちがゴールしていたなら、「ドーハとは違います、東京は大丈夫です」と言えたのです。でも、もうその実例を作る夏は終わってしまいました。もう実例は2020年夏まで作れません。となればIOCが折れることはありません。折れないものに抵抗するのは時間の無駄です。

コースはどうする。コースの認可も取らねばならんぞ。スタジアムはどうする。札幌ドームにする場合、選手はどこを通るんだ。ボランティアの人数が足りないぞ。関係者の宿はどうする。移動の手配はどうする。とにかくやることは山盛りです。「アテクシの粘り」はいつも覆らないものに対して発揮されて、スケジュール上のバッファをすべて食い尽くしますが、壊れない壁をドンドン叩いてカッコいいのは漫画の世界だけ。一回叩いて「あ、無理」と察したら、すぐに次の手を打つのが現実世界のカッコよさでしょう。「内容のないポエムを言う」みたいな感じで、「アテクシの案が絶対採用されない状況で粘る」が政治手腕のアピールになると思っているのなら、それは大いなるカンチガイです。「採用された案(※背広の袖を切る/笠、等)」の評価で勝負しないと!

「次の選挙で落ちる予定の人は気楽でいいですよね!」

ハッ……!すみません、僕の心のなかの東京都職員が叫び出してしまいましたが、とにかく札幌を前提に少しでも早く準備をしないといけません。「被災地で」なんてことを言い出したら、まったくのゼロから考え直しで、「福島で」「ノー」「仙台で」「ノー」「釜石で」「ノー」みたいなやり取りに半年くらいあっという間に浪費されます。残された時間は準備のための時間であって、「アテクシの粘り」を世間にアピールする時間ではありません。

僕もマラソンは見たい。競歩も見たい。

観戦を充実させるためにマラソンコースの下見と、移動応援のための練習を3年かけてやってきました。札幌での開催というのは家から遠くて残念ではあります。ただ、一番大事なのは「マラソン・競歩をやる」ことです。少しでもいい準備で、選手が満足できる形で「やる」ことです。「東京を走るイメージをしていたはずだ」とアスリートを気遣うなら、1秒でも早く「札幌にイメージを切り替えてください」をアナウンスすることが大事です。

「ていうか、ケニアもエチオピアも東京のコースのイメージなどしとりゃせんでしょ!」

ハッ……!すみません、僕の心のなかの世界陸連関係者が叫び出してしまいましたが、とにかく「アテクシの粘り」はもう十分です。向こうから言い出したことですから、東京としては「我々のプランは完璧だった」と言い張りながら被害者面していればいいわけでしょう。被害者ポジションから「それでもアスリートのために」と偽善面を繰り出して、金の工面を検討すればメンツは保たれるわけじゃないですか。「東京のプランは完璧だった」「ただIOCがビビッた」「苦渋の決断だが、アスリートのために札幌にした」でイイじゃないですか。

路面舗装、アーケード設置、アサガオ、人工雪、ドローン、ポカリ、かちわり氷、風鈴、ペンギン、シロクマ、エアコン、雪だるま、かまくら、太陽破壊ミサイル、雪景色の壁画、大量のお化け、トナカイ、モミの木、サンタクロース……本来ならこれから暑熱対策としてかかったはずの費用が浮く、という前向きな考え方もできます。何かあったあとで菓子折りやら香典(※香典は直接持参してくださいね)を持っていく手間も浮くという見方もあるでしょう。本当のコストとは何か、時間と手間と「取り返しのつかない何か」まで含めて勘案すれば、1秒でもファストで札幌へ動き出すことがアスリートファーストにつながる道のはず。

IOCを説得することができる「夏」はもう終わりました。

夏のテストをやったら「バタバタ倒れて大変なことになる」と思って、6年あったのに一度もやらなかった東京側にも手ぬるい部分はありました。ただ、メンツという意味ではすべてIOCがかぶったのです。30日からの調整委員会での限られた時間は、今さっき思いついたアイディアに基づくアテクシの粘りではなく、具体的な金の話をすべきです。IOCから少しでも金を引っ張れないか、有利な条件を引っ張れないか、そこにこそチカラを注ぐべき。

粘るポイントはソコじゃないです!

↓東京の繰り出すパンチを全部叩き落としてくるIOCのコーツ氏!


さすが弁護士出身!

午前5時スタート案に対する「早朝だと中継ヘリが飛ばせない」という新手の返しも強烈!

これを「夜明けが5時だからヘリは飛べます」と返すと、「やっぱり暑いじゃないか」と返されるという罠!

取りつく島もありません!




あんまり粘ると「関東全部、雨で危なそう」って収集つかなくなりますよ!