開催国の一員として全力の「お・も・て・な・し」につとめた僕がつむいだ、日本とアイルランドを結ぶ小さな友情の物語。
お・も・て・な・し、してきました!
日本代表と南アフリカ代表との決選を翌日に控えた東京スタジアム。19日に行なわれたニュージーランド代表すなわちオールブラックスVSアイルランド代表の試合に行ってきました。日本の勝敗が絡まない楽しみだけの試合、満喫しました。そして、開催国の一員として精一杯のおもてなしにつとめてきました。今日はそのご報告…大半愚痴っぽいかもしれませんが、喜びと友情の記録です。
決戦を控えた東京スタジアムは緑に染まっていました。桜のジャージもいるにはいますが圧倒的に緑、そしてやや控えめに黒。応援団の盛り上がりだけならアイルランドの圧勝です。さすがパブ文化圏というビールっ腹と声のデカさ。緑の集団はそこかしこで「パブ」を始めています。ニュージーランドの黒の軍団も立ち飲みくらいはしていますが、程度がまったく違います。
まず歌う。そして飲む。飲み終わったときに備えて常に予備のビールが置いてある。万が一、そこからカップを落下させたら10メートル下を歩いている人にビールがビチャーする手すりとかにカップを大量に並べて「パブ」をしています。もしかして一番日本を楽しんでいるのは彼らではなかろうか。そしてふと思います。「連中は2位抜けのほうのチケットも大量に押さえてたのか」「保険かけまくりじゃねぇか」「だから負けるんだよ…」と。
↓1位抜けでも2位抜けでもどっちでもいいから試合が見たい!そして飲みたい!
↓飲み終わったカップはこの辺に置いておくから、あとはヨロシク!
↓なお、緑=アイルランドとばかり早とちりしておりましたが、こちらは南アフリカのみなさんだったかもしれません!
「南アフリカがくる」⇒1位抜けのチケットを持ってた⇒わかる!
「アイルランドがくる」⇒2位抜けのチケットを持ってた⇒弱気!
まぁ、僕も1位抜けも2位抜けもチケット押さえてあるんで、結局全員明日もくるのかもしれませんが!
開幕戦では人もまばらだったファンゾーンも含めて、あちこちが緑の歌声に制圧されています。ハイネケンも緑だけれど、もしかしてハイネケンの回し者なのか。「コレ」を基準に異常な数のハイネケン売店が設けられていたのかとようやく納得する思い。「楽しそうなことは結構である」と僕も開催国ならではの結論で、この波に乗っていきます。
両国のメンバー紹介の際、僕もまぁよせばいいのに両方の選手に均等に「オー!」みたいな声をあげていたのです。そうしたら、隣のオッチャン…呼びにくいので仮にライアンとしますが、ライアンは「おぉアイルランドを応援してくれているのかサンキューな」と握手を求めてきたのです。
で、僕もよせばいいのに調子がいいので、「今日は楽しみだな兄弟、日本とまた決勝でやろうぜ。今度もぶっ潰すぜハッハッハ」的なリップサービスをしてしまったのです。普段なら絶対しないでガン無視なのですが、ラグビーワールドカップの雰囲気が僕を完全に血迷わせていたのです。
そしたらば、ライアンの隣のオッサンも声を掛けてきやがりまして、「そうだな決勝だな!」とか盛り上がり始めてハイタッチとかをする流れになってしまいました。いや、僕は今日は完全に「オールブラックスを見にきたよー!」なんですが、困ったことになったなぁと思いました。
その後、選手入場・国歌斉唱と進むなかで今度はライアンが肩を組んできやがります。ライアン重いよ…。そしてアイルランドのラグビーアンセムを歌い始めたのです。ライアン声デカ…。で、僕もよせばいいのに、おもてなし精神で仕込んできたアイルランドのラグビーアンセムを歌っちゃうわけです。「Ireland’s Call」というのですが、これがまたカッコいい歌なのです。そして歌詞も比較的簡単でサビは「アーイルランド!アーイルランド!」なので、そこは誰でも簡単に乗っていけるのです。
簡単なもんで僕も調子に乗って「アーイルランド!アーイルランド!ふふーんふんふんふーん」と歌っていたら、ライアンはいろんなシチュエーションが感極まったらしくて泣き始めたのです。そして歌が終わったらガバッと抱きついてきやがりまして、「日本の勇敢な友よ…」とか泣いてるのです。いやいやいや、ここまでの大半がおべんちゃらとリップサービスだし、ワシは、そもそも、オールブラックスを見にきてるから!
↓オールブラックスの「カパ・オ・パンゴ」が始まったときの現地の雰囲気はこんな感じです!
ライアン、歌がうるさくて聞こえねーーーーよ!!
ワシは、コレを、見にきたんだってば!!
自分でまいた種ではありますが、「もはやこの流れからオールブラックスを全力応援することはできない…」と諦めてアイルランド全力応援スタイルでいくことに。しかし、試合はというと「あらゆる面」でオールブラックスがアイルランドを圧倒します。フォワードの当たりは強く激しく、バックスのスピードは倍速モードで「目の前から消える」動きです。しかも技術も正確で、とりわけキックの正確さには舌を巻くほどでした。
中央の接点でオールブラックスが押し勝つと、アイルランドはたまらずギャップを埋めにくるのですが、そこですかさず大外のウィングにキックパス一発でボールを通してしまうのです。それも一度どころじゃなく何度も。蹴ったボールは「ここは内側に止める」「ここは外にしっかり出す」というのを間違えることがまったくありませんし、逆に相手が少し曖昧なプレーをするとその緩みを一気呵成に突いてくる。
「こんなん勝てるかアホ…」
と思ったのは前半20分にふたつめのトライをオールブラックスが奪った頃でした。まだ試合時間はたっぷり残っていますし、大した点差でもなかったのですが、それぐらいの差を感じさせる内容でした。アイルランドは自慢のフォワード戦でもやや押し負けていたうえに、ハンドリングエラーも多く、キックはまったく有効ではありませんでした。日本戦にいなかった欧州屈指のスタンドオフ・セクストンが加わっていたのにもかかわらず、前に進むことすらできないほどです。
前半14分にオールブラックスがあげたアーロン・スミスのトライは、普段なら球出しをするスクラムハーフが、相手の隙を見つけて自分で運んで飛び込んだもの。前半20分には、高速展開でインゴール付近まで持ち込むと、またもアーロン・スミスが自分で飛び込んでトライ。まるで、バレーボールでブロックしてやろうと待ち構えている相手に対して、無警戒のツーアタックを打ち込んでいくスタイルのよう。ちょっとアイルランドはどこを守って、どこで奪えばいいのか、わからなかったのではないでしょうか。
↓超高速の展開ラグビー!あぁ、これぞオールブラックスだ!
それでもまだ隣のライアンは元気です。立ち上がりから押されていたのに、試合開始3分でオシッコに行き、追加のビールを買ってくるという「試合見ないんかい!」スタイルなので心理的ダメージも薄かったのでしょう。引きつづき上機嫌で隣に並んだオッサンたちを指差して、「これは俺の3人の息子と甥っ子さ」と紹介し、「そしてこれが俺のワイフ」と写真を見せてきました。
「ワイフの写真の写真」でしたので亡くなった奥さんという理解をしたのですが、もしもそうでないなら、男衆だけでラグビー見にきてしこたま飲んでるって、トンデモない甲斐性無しって感じですが、僕にはその先を聞き出す意欲はありませんでした。そしてライアンは今日の記念に写真を撮ろうぜと言い出し、みんなでハイチーズ。僕も礼儀として一応写真を撮りましたが異例の事態で戸惑い多め……。
しかし、ここから急速にライアンの元気はなくなっていきます。0-17とリードされて迎えた前半32分、アイルランドの攻撃中にボールをはたき落とし、そのままキックで運んだオールブラックスがカウンタードリブル「トライ」を決めてしまったのです。これで0-22と22点差。アイルランドはいまだ0点。ライアンはこのあたりから声を出すことがなくなりました。僕が気を使って「まだまだぁ!」とか「オールブラックスやるのぉうーむ(※喜ばない程度の賞賛/気遣い)」とかアイルランド全力応援スタイルでやってるってのに、何で先に応援団が萎えるんだよ!頑張れよ!
↓「必勝」ハチマキの美女が一生懸命盛り上げていましたが、僕の隣のライアンは頭抱えてうなだれてました!
ハーフタイム、追加のビールとポテトを持ってきてライアンは再び息を吹き返しました。しかし、所詮は焼け石にハイネケン。48分に追加のトライを奪われて0-27となると、頭を抱えたまま「ジーザス…」とか「スクールボーイ…スクールボーイ…」とかブツブツ言う肉の塊になっています。意味はよくわかりませんでしたが、見た目は「クソッ…」「下手糞…」「アホか…」と言っているときの埼玉西武ライオンズファンとまったく同じ。何だかちょっとカワイソウになってきて、親しみがわいてきました。
「頼む…1個でいいからトライ決めてくれ…」
祈るような気持ちで見守っていた68分、ついにアイルランドにも待望のトライが生まれます。相手陣内深くでのスクラムから、素早い展開でインゴールに飛び込んでのトライ。僕はようやく大っぴらに喜べるという気持ちで飛び跳ねてガッツポーズです!しかし、ライアンは「今さら」みたいな顔で座り込んでいます。あったまきたので、「おい!まだ試合は終わってないぞ!」と声を掛けてコッチからハイタッチでライアンを鼓舞してやります。ライアンも「そうだな…」と立ち上がりました!
↓しかし、その5分後にトライを返され、さらにアイルランドが1本返した5分後にも「1人少ないオールブラックス」にトライを奪われてジ・エンド!
オールブラックスつえーーーーーー!!
ラグビーって簡単なんだなーーーーーー!!
試合の終盤、ライアンは静かでした。グッタリと座り込んでいました。それでも、最後は息子たちに支えられて会場をあとにしました。去り際にライアンは「明日も俺たちはくるんだ」「明日は日本を応援するぜ」と言っていました。僕も「兄弟、俺も明日またくる」「あんたらの代わりにオールブラックスを倒すよ」「まずはその前にスプリングボクスだ」と答えました。お互いに「無理無理」とは思ったでしょうが、そんな気休めもいいものです。
そうか、ライアンは明日もくるのか。
みんなラグビーが好きなんだな。
でも、明日は別に会いたくないな…。
僕は開催国の一員として精一杯のおもてなしをし、普段のスポーツ観戦とは少し違う体験をすることができました。ライアンも隣に座っているヤツが、まさかこんな二枚舌野郎だとは思ってもいないでしょうが、明日も元気にラグビーを見てほしいなと思います。今日は僕が勝ち負け関係ない気楽な立場。明日はライアンが気楽な立場。素晴らしい試合で、我が代表がライアンを元気づけてくれるように祈ります。「いいものを見た」という思い出を持ち帰れる試合になりますように……。
日本代表と南アフリカ代表との決選を翌日に控えた東京スタジアム。19日に行なわれたニュージーランド代表すなわちオールブラックスVSアイルランド代表の試合に行ってきました。日本の勝敗が絡まない楽しみだけの試合、満喫しました。そして、開催国の一員として精一杯のおもてなしにつとめてきました。今日はそのご報告…大半愚痴っぽいかもしれませんが、喜びと友情の記録です。
まず歌う。そして飲む。飲み終わったときに備えて常に予備のビールが置いてある。万が一、そこからカップを落下させたら10メートル下を歩いている人にビールがビチャーする手すりとかにカップを大量に並べて「パブ」をしています。もしかして一番日本を楽しんでいるのは彼らではなかろうか。そしてふと思います。「連中は2位抜けのほうのチケットも大量に押さえてたのか」「保険かけまくりじゃねぇか」「だから負けるんだよ…」と。
↓1位抜けでも2位抜けでもどっちでもいいから試合が見たい!そして飲みたい!
↓飲み終わったカップはこの辺に置いておくから、あとはヨロシク!
↓なお、緑=アイルランドとばかり早とちりしておりましたが、こちらは南アフリカのみなさんだったかもしれません!
ニュージーランドは静かに立ち飲み、アイルランドは飲めや歌えやの大騒ぎ! pic.twitter.com/O9uzABMzCg
- フモフモ編集長 (@fumofumocolumn) October 19, 2019
「南アフリカがくる」⇒1位抜けのチケットを持ってた⇒わかる!
「アイルランドがくる」⇒2位抜けのチケットを持ってた⇒弱気!
まぁ、僕も1位抜けも2位抜けもチケット押さえてあるんで、結局全員明日もくるのかもしれませんが!
開幕戦では人もまばらだったファンゾーンも含めて、あちこちが緑の歌声に制圧されています。ハイネケンも緑だけれど、もしかしてハイネケンの回し者なのか。「コレ」を基準に異常な数のハイネケン売店が設けられていたのかとようやく納得する思い。「楽しそうなことは結構である」と僕も開催国ならではの結論で、この波に乗っていきます。
自分の席に着くと、そこには若干の問題がありました。前後左右をほぼアイルランド勢に囲まれており、特に右隣のオッチャンがデカい。「日本の椅子が小さいんだよ」というのが向こうの言い分とはいえ、完全に僕のプライベートゾーンを犯してきています。足1本分コチラのゾーンを食ってきます。
そして、ガチっぽい。「熱狂的サポーターと阪神ファンを足してサワーで割った感じ」と言えばいいでしょうか。ガチめのやる気と酒の匂いでかなりの存在感を発揮しています。僕などは今日は完全に「オールブラックスを見にきたよー!」というテンションなのですが、アイルランド応援団のセンターポジションに置かれてしまった感覚です。
両国のメンバー紹介の際、僕もまぁよせばいいのに両方の選手に均等に「オー!」みたいな声をあげていたのです。そうしたら、隣のオッチャン…呼びにくいので仮にライアンとしますが、ライアンは「おぉアイルランドを応援してくれているのかサンキューな」と握手を求めてきたのです。
で、僕もよせばいいのに調子がいいので、「今日は楽しみだな兄弟、日本とまた決勝でやろうぜ。今度もぶっ潰すぜハッハッハ」的なリップサービスをしてしまったのです。普段なら絶対しないでガン無視なのですが、ラグビーワールドカップの雰囲気が僕を完全に血迷わせていたのです。
そしたらば、ライアンの隣のオッサンも声を掛けてきやがりまして、「そうだな決勝だな!」とか盛り上がり始めてハイタッチとかをする流れになってしまいました。いや、僕は今日は完全に「オールブラックスを見にきたよー!」なんですが、困ったことになったなぁと思いました。
その後、選手入場・国歌斉唱と進むなかで今度はライアンが肩を組んできやがります。ライアン重いよ…。そしてアイルランドのラグビーアンセムを歌い始めたのです。ライアン声デカ…。で、僕もよせばいいのに、おもてなし精神で仕込んできたアイルランドのラグビーアンセムを歌っちゃうわけです。「Ireland’s Call」というのですが、これがまたカッコいい歌なのです。そして歌詞も比較的簡単でサビは「アーイルランド!アーイルランド!」なので、そこは誰でも簡単に乗っていけるのです。
アイルランド代表ラグビーアンセム
- ラグビーワールドカップ (@rugbyworldcupjp) October 19, 2019
☘️Ireland’s Call☘️
選手もファンも大合唱!スタジアム中に響き渡っています!#RWC2019 #NZLvIRE #RWC東京 pic.twitter.com/V2MrFYdbFV
簡単なもんで僕も調子に乗って「アーイルランド!アーイルランド!ふふーんふんふんふーん」と歌っていたら、ライアンはいろんなシチュエーションが感極まったらしくて泣き始めたのです。そして歌が終わったらガバッと抱きついてきやがりまして、「日本の勇敢な友よ…」とか泣いてるのです。いやいやいや、ここまでの大半がおべんちゃらとリップサービスだし、ワシは、そもそも、オールブラックスを見にきてるから!
↓オールブラックスの「カパ・オ・パンゴ」が始まったときの現地の雰囲気はこんな感じです!
ライアン、歌がうるさくて聞こえねーーーーよ!!
ワシは、コレを、見にきたんだってば!!
「兄弟、やったな!かき消してやったぜ!」じゃないってば!
自分でまいた種ではありますが、「もはやこの流れからオールブラックスを全力応援することはできない…」と諦めてアイルランド全力応援スタイルでいくことに。しかし、試合はというと「あらゆる面」でオールブラックスがアイルランドを圧倒します。フォワードの当たりは強く激しく、バックスのスピードは倍速モードで「目の前から消える」動きです。しかも技術も正確で、とりわけキックの正確さには舌を巻くほどでした。
中央の接点でオールブラックスが押し勝つと、アイルランドはたまらずギャップを埋めにくるのですが、そこですかさず大外のウィングにキックパス一発でボールを通してしまうのです。それも一度どころじゃなく何度も。蹴ったボールは「ここは内側に止める」「ここは外にしっかり出す」というのを間違えることがまったくありませんし、逆に相手が少し曖昧なプレーをするとその緩みを一気呵成に突いてくる。
「こんなん勝てるかアホ…」
と思ったのは前半20分にふたつめのトライをオールブラックスが奪った頃でした。まだ試合時間はたっぷり残っていますし、大した点差でもなかったのですが、それぐらいの差を感じさせる内容でした。アイルランドは自慢のフォワード戦でもやや押し負けていたうえに、ハンドリングエラーも多く、キックはまったく有効ではありませんでした。日本戦にいなかった欧州屈指のスタンドオフ・セクストンが加わっていたのにもかかわらず、前に進むことすらできないほどです。
前半14分にオールブラックスがあげたアーロン・スミスのトライは、普段なら球出しをするスクラムハーフが、相手の隙を見つけて自分で運んで飛び込んだもの。前半20分には、高速展開でインゴール付近まで持ち込むと、またもアーロン・スミスが自分で飛び込んでトライ。まるで、バレーボールでブロックしてやろうと待ち構えている相手に対して、無警戒のツーアタックを打ち込んでいくスタイルのよう。ちょっとアイルランドはどこを守って、どこで奪えばいいのか、わからなかったのではないでしょうか。
↓超高速の展開ラグビー!あぁ、これぞオールブラックスだ!
ニュージーランド代表が見せた前半の素晴らしいバックスプレー✨
- ラグビーワールドカップ (@rugbyworldcupjp) October 19, 2019
この試合の中継はこちらから📺
🔹日本テレビ @ntv_rugby
🔹J SPORTS @jsports_rugby #RWC2019 #NZLvIRE #RWC東京 pic.twitter.com/dBTRi8Sut4
それでもまだ隣のライアンは元気です。立ち上がりから押されていたのに、試合開始3分でオシッコに行き、追加のビールを買ってくるという「試合見ないんかい!」スタイルなので心理的ダメージも薄かったのでしょう。引きつづき上機嫌で隣に並んだオッサンたちを指差して、「これは俺の3人の息子と甥っ子さ」と紹介し、「そしてこれが俺のワイフ」と写真を見せてきました。
「ワイフの写真の写真」でしたので亡くなった奥さんという理解をしたのですが、もしもそうでないなら、男衆だけでラグビー見にきてしこたま飲んでるって、トンデモない甲斐性無しって感じですが、僕にはその先を聞き出す意欲はありませんでした。そしてライアンは今日の記念に写真を撮ろうぜと言い出し、みんなでハイチーズ。僕も礼儀として一応写真を撮りましたが異例の事態で戸惑い多め……。
しかし、ここから急速にライアンの元気はなくなっていきます。0-17とリードされて迎えた前半32分、アイルランドの攻撃中にボールをはたき落とし、そのままキックで運んだオールブラックスがカウンタードリブル「トライ」を決めてしまったのです。これで0-22と22点差。アイルランドはいまだ0点。ライアンはこのあたりから声を出すことがなくなりました。僕が気を使って「まだまだぁ!」とか「オールブラックスやるのぉうーむ(※喜ばない程度の賞賛/気遣い)」とかアイルランド全力応援スタイルでやってるってのに、何で先に応援団が萎えるんだよ!頑張れよ!
↓「必勝」ハチマキの美女が一生懸命盛り上げていましたが、僕の隣のライアンは頭抱えてうなだれてました!
ハーフタイム、追加のビールとポテトを持ってきてライアンは再び息を吹き返しました。しかし、所詮は焼け石にハイネケン。48分に追加のトライを奪われて0-27となると、頭を抱えたまま「ジーザス…」とか「スクールボーイ…スクールボーイ…」とかブツブツ言う肉の塊になっています。意味はよくわかりませんでしたが、見た目は「クソッ…」「下手糞…」「アホか…」と言っているときの埼玉西武ライオンズファンとまったく同じ。何だかちょっとカワイソウになってきて、親しみがわいてきました。
「頼む…1個でいいからトライ決めてくれ…」
祈るような気持ちで見守っていた68分、ついにアイルランドにも待望のトライが生まれます。相手陣内深くでのスクラムから、素早い展開でインゴールに飛び込んでのトライ。僕はようやく大っぴらに喜べるという気持ちで飛び跳ねてガッツポーズです!しかし、ライアンは「今さら」みたいな顔で座り込んでいます。あったまきたので、「おい!まだ試合は終わってないぞ!」と声を掛けてコッチからハイタッチでライアンを鼓舞してやります。ライアンも「そうだな…」と立ち上がりました!
↓しかし、その5分後にトライを返され、さらにアイルランドが1本返した5分後にも「1人少ないオールブラックス」にトライを奪われてジ・エンド!
オールブラックスつえーーーーーー!!
ラグビーって簡単なんだなーーーーーー!!
試合の終盤、ライアンは静かでした。グッタリと座り込んでいました。それでも、最後は息子たちに支えられて会場をあとにしました。去り際にライアンは「明日も俺たちはくるんだ」「明日は日本を応援するぜ」と言っていました。僕も「兄弟、俺も明日またくる」「あんたらの代わりにオールブラックスを倒すよ」「まずはその前にスプリングボクスだ」と答えました。お互いに「無理無理」とは思ったでしょうが、そんな気休めもいいものです。
そうか、ライアンは明日もくるのか。
みんなラグビーが好きなんだな。
でも、明日は別に会いたくないな…。
僕は開催国の一員として精一杯のおもてなしをし、普段のスポーツ観戦とは少し違う体験をすることができました。ライアンも隣に座っているヤツが、まさかこんな二枚舌野郎だとは思ってもいないでしょうが、明日も元気にラグビーを見てほしいなと思います。今日は僕が勝ち負け関係ない気楽な立場。明日はライアンが気楽な立場。素晴らしい試合で、我が代表がライアンを元気づけてくれるように祈ります。「いいものを見た」という思い出を持ち帰れる試合になりますように……。
↓ありがとうアイルランド!アイルランドのぶんまで日本が頑張ります!
ライアン、日本を楽しんでね!
ご飯も美味しいし、楽しいことがいっぱいあるよ!
↓そして会場の片隅には連中が飲み干した大量のハイネケンの残骸が!
楽しそうで結構です!
今夜の両隣りは「片方が通路」で「片方が小柄な人」でありますように!
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