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text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

もくじ

ー 実は両極、個性派の2台
ー 可愛い顔した本格派
ー 奥様のアシ、だけじゃもったいない

実は両極、個性派の2台

ピンとキリという表現には優劣のイメージがあるが、今回の2台に対するピンキリは、そこに落ちてはいない。

ジープの末っ子レネゲードの中で最もタフなグレードであるトレイルホークと、泥臭さを微塵も感じさせないシティ派代表のアウディQ2。

この2台は今をときめくスモールSUVの中にあって、両極端ともいえるキャラクターの持ち主なのである。

ジープ・レネゲード・トレイルホークは今年初めのマイナーチェンジで顔の「ジープ度合」が高まり、エンジンも2.4Lから最新の1.3L直4ターボのマルチエア2に変更されている。

4255mmという全長は取り回しやすいが、それでも前後のシートスペースは必要にして充分。遊び心溢れる見た目の通り、週末の行動範囲を広げてくれそうな1台といえる。

一方デビューから2年半ほどが経過したアウディQ2は、見事なまでの「割り切り」によってクロスオーバーSUVの新境地を切り開いている。

高くも低くもない絶妙な車高は乗降性に優れ、荷物を出し入れする際の腰への負担も少ない。

一方1500mmに抑えた全高により低い立体駐車場にもアクセス可能。今回の「35」は1.4Lのダウンサイジングユニットを搭載するが、駆動方式はアウディ=四駆とイメージさせつつ、日本導入はFFのみ。

つまりアウディQ2は、SUVのメリットを全て取り入れつつ、シンプルを追求することで、街乗りスモールSUVの最適解を鮮やかに提示してみせたのである。

可愛い顔した本格派

何も知らない隣人ならばレネゲードのことを少し大きなスズキ・ハスラー? くらいに思っているかもしれない。

だがレネゲード・トレイルホークは数あるジープの中でも選ばれし者だけが掲げられる「トレイルレーテッド」のバッヂを持つトップモデルなのである。

走破性の要となるのは、レネゲードの中ではトレイルホークだけに備わるAWDとセレクテレインシステムである。オート/スノー/サンド/マッド/ロックの各走行モードが選べるだけでなく、ローモードやヒルディセント・コントロール、さらには4WDロックもスイッチ操作で任意に行えるようになっている。

後ろから車体下をのぞき込むと、ロングスパンのサスアームと、一目で電子制御のデフロック機構が内包されているとわかる武骨なデフケースが見える。

可愛いナリした超本格派、レネゲード・トレイルホークのライバルは、実はハスラーではなくジムニーなのである。

というジョークはさておき、今回のマイチェンでレネゲード・トレイルホークは新たな翼を授かった。

イタリア由来、1.4Lターボ、179psの強心臓である。街中のダッシュも鋭いが、高速道路でも実によくスピードが伸びる。コーナーではマッド&スノーのタイヤ(撮影車両のタイヤ/ホイールはディーラー装着オプション)が少し心許ないが、オフロードの走破性を考えればそこは大目に見るべきだろう。

ジープの伝統とイタリアの感性の融合、レネゲード・トレイルホークはスモールSUVの守備範囲を最大限まで広げた、欲張りな1台なのである。

奥様のアシ、だけじゃもったいない

アウディ自身がそう言っているように、Q2は既存の枠にとらわれない新しいSUVとして登場している。

だから副変速機やデフロックはおろか、日本導入モデルはAWDとも無縁である。

その代わりに都会的なデザインと上々の乗り心地を誇り、ボディも取り回しやすいジャストサイズにギュッと圧縮されている。実用本位、肩ひじ張らないスマートさこそがアウディQ2の真骨頂なのである。

というとQ2はいかにも都会の奥様のお洒落なアシのように思えてしまうのだが、実際にドライブしてみると、その軽快で一本筋の通った走りに驚かされるはずだ。

スピードの乗りもすこぶる良好で「さすがドイツ車」と思わずにいられないのである。

SUV的なハイトに寄与している厚みのあるタイヤのチョイスも適切で(撮影車両のタイヤ/ホイールはディーラー装着オプション)、あらゆるスピード域で角が取れた自然なドライブフィールを提供してくれる。

アシがいいと1速高いギアでコーナーを抜けられるものだが、Q2はまさにそれ。「SUVは腰高だから……」と言って、いまだにセダンに執着しているクルマ好きだって、Q2に触れればなるほどこれはよくできた新種なのだと認めざるをえないだろう。

近年のスモールSUVシーンの隆盛が、レネゲード・トレイルホークやQ2といったブランドの個性を強く反映させたモデルを生み出すきっかけになったのだと思う。

アシのいいクルマは1速高いギアでコーナーに飛び込んで行けたりするものだが、Q2はまさにそんな感じなのだ。

日本におけるジャストサイズにして遊べる今回の2台に、もっと注目が集まってもいいと思う。