金正恩氏(2019年4月12日付朝鮮中央通信)

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北朝鮮の平壌市民の間で金正恩党委員長の「健康不安説」が流れていると、デイリーNKの内部情報筋が15日、伝えてきた。気の合う友達や親しい友人同士の会話の中で金正恩氏の話題が上ると、「元帥様(金正恩氏)の健康状態が異常である。顔色も暗く、表情も乏しくなったように見える」と口々に語っているという。

北朝鮮国内では、同国の人々が金正恩氏の健康状態の変化を大っぴらに話すことは許されない。それでも、気になるものは気になる。過去には金正恩氏の体形変化と同時に、公開処刑が増えた時期があるからだ。

現在は肥満体である金正恩氏だが、2011年に最高指導者になった直後はそれほどではなかった。しかし、ある時期から急に肥満度が増す。その前後に北朝鮮では粛清の血の雨が降った。残虐な粛清をするなかで、金正恩氏の精神状況と身体に何らかの異変が起きていたと筆者は見る。

北朝鮮国内だけでなく、金正恩氏の健康状態は世界中の情報機関の重要な関心事だ。健康状態如何によっては、北朝鮮内部で何らかの異変が起きる可能性も拭えない。逆に言えば、北朝鮮側としては決して知られてはいけないトップシークレットだ。金正恩氏が乗るベンツには、同氏が普通のトイレを使えない事情を考えて、特殊な装備が搭載されているとも言われる。生体情報を守る目的もあるのかもしれない。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

情報筋によると、金正恩氏の顔色がすぐれないことについて、住民たちは「これは全て米国のせいではないか」「米朝首脳会談以後、朝鮮中央テレビに出てくる元帥様の姿を見ると、以前とは違って健康状態が非常に悪いようだ」とこそこそ言い合っているという。

今月、北朝鮮メディアが公開した写真を確認してみた。

金正恩氏は覇気ヘアといわれる独特のヘアスタイルにコダワリをもち、サイド部分にはほとんどそり跡を残さない。眉毛も剃って整え、肌も丁寧にスキンケアしているかのようにツヤツヤしている。しかし、この写真を見る限り、いつもより肌が荒れているのが気になる。それでも公開したのは金正恩氏の意思によるものだろう。

金正恩氏は間違いなく、自身が北朝鮮国内外から見られていることを意識している。独裁者特有の自己顕示欲もあるが、自らの素顔を開けっ広げにさらすことで、最高指導者の神秘性を否定し、そのうえで国家において父・金正日総書記を超える存在となるべく、彼なりに描き出した権力の階段を上ろうとしているのではないだろうか。

金正恩氏の変化に対し、世界で最も敏感なのが北朝鮮の人々であることは言うまでもない。また、厳しい北朝鮮社会を生き延びるためには、健康状態だけでなく最高指導者のありとあらゆる変化をいちはやく察知することが不可欠となる。それだけに、北朝鮮内部から漏れ伝わってきた金正恩氏の「健康不安説」は気になるところだ。