ホンダはEV開発に注力する姿勢だ(画像はホンダの公式ホームページより)

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ホンダが、完成車の主力工場の一つである狭山工場(埼玉県狭山市)を2021年度をめどに閉鎖する。2017年10月4日、発表した。同工場の機能は寄居工場(同県寄居町)に移す。国内の生産能力を削減して稼働率を極限まで高める。寄居工場は電気自動車(EV)を含めた世界生産の中心拠点と位置づける。EV開発でライバルに遅れを取るホンダは、ここで一気に巻き返しを図る。

狭山工場は1964年稼働。ステップワゴンやオデッセイ、アコードなどを生産してきた。4600人の従業員は寄居工場などに異動させ、雇用を維持する。

「地産地消」戦略

2013年に稼働したばかりの寄居工場は、最新の生産技術を擁する。フィットやヴェゼルなどを生産し、「世界の小型車生産工場を牽引していく役割を持つ」と自負する。

狭山の閉鎖によって、国内の4輪工場は、寄居、鈴鹿(三重県鈴鹿市)、子会社である八千代工業(ヤチヨ)の四日市(三重県四日市市)の3極体制になる。ホンダは、ヤチヨの完成車生産事業を完全子会社化する計画も発表した。

今回の再編で生産能力は106万台から81万台へと減る。従来、国内では、「ものづくり」を維持するため「100万台の生産体制維持」を掲げてきたが、その旗を降ろす。2016年度の国内生産は約80万台で、そのうち10万台は輸出だった。再編により、稼働率は100%に近くなる。

これまでホンダは日本▽北米▽欧州▽中国▽アジア▽南米――の「世界6極体制」を敷き、現地で生産して現地で販売する「地産地消」戦略を進めてきた。為替変動が業績に与える影響は減ったものの、生産能力が大きいのに需要は伸びにくい日本では「需給ギャップ」が生じ、その解消が課題になっていた。

単独路線か提携か

効率化を推進して、次に狙うのはEVの強化だ。ホンダは「2030年に4輪車グローバル販売台数の3分の2を電動化する」目標を掲げている。昨16年秋には「EV開発室」を設置。プラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池自動車(FCV)に加え、EVも柱に据えた。まずは18年に中国で、専用モデルを発売する計画だ。

寄居には、電動化の生産技術を構築・標準化し、海外の生産拠点に展開させる機能を新設する。世界各地のエンジニアが集い、日本で蓄積したノウハウをベースに生産技術やプロセスの企画を共同で行う。これを世界に水平展開し、高品質な新商品をスピーディーに立ち上げ、各市場に投入する。

ホンダの年間の世界販売台数は約500万台で、ルノー・日産連合、独フォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「4強」の半分程度に過ぎない。巨額のEV開発費は各陣営の重荷だが、ホンダは規模が中途半端なだけに、単独で生き残れるのか、微妙な位置にある。

八郷隆弘社長は「モーターは日立オートモティブと、燃料電池はGMと連携している」と述べ、部分的には他社との協業が不可欠との認識を示しているが、競合他社との資本提携は、独自路線を志向する「ホンダのDNA」にそぐわない。寄居がEV拠点として大きな役割を果たし、EV市場をリードできれば単独での生き残りが可能だが、そうでなければ他社との連携に動く――。そんな分岐点にいるのかもしれない。