今夏にパリSGへ史上最高額で移籍したネイマールだが、早くもチーム内で孤立し……。(C)REUTERS/AFLO

写真拡大 (全4枚)

 ネイマールが大きな希望を持ってパリに移り住んでから、約2か月が経過した。しかし、幸せな毎日を過ごしているかと言えば決してそうではなく、取り巻きの仲間たちと一緒に過ごす時間が唯一の気晴らしになっている。
 
 欧州サッカー界はここ数年、レアル・マドリーとバルセロナというスペイン勢が覇権を握る状況が続いている。パリSGはそうしたスペイン一強時代に歯止めをかけようとメガプロジェクトを立ち上げ、その最大の目玉として招かれたのがネイマールだった。
 
 しかし、勇躍乗り込んだ新天地で遭遇したのは、予想だにしなかったチームメイトによる激しい拒否反応だった。世間の注目を浴びたPK騒動でエディンソン・カバーニが見せたリアクションは、そのほんの一例に過ぎない。しかもネイマールにとって問題なのは、他のチームメイト、とりわけの重鎮組の多くも多かれ少なかれカバーニと同じ感情を抱いていることだ。
 
 選手間のこうした反発のそもそもの発端は、FFP(ファイナンシャル・フェアプレー)違反により2018-19シーズン以降、チャンピオンズ・リーグ(CL)出場権を剥奪される危険性を回避するために取ったナセル・アル・ケライフィ会長を筆頭としたクラブ幹部の拙い対応だった。
 
 収益と支出のバランスを徹底させるためにFFPを定めているUEFAは、パリSGがネイマールを獲得するためにバルセロナに支払った契約解除違約金の2億2200万ユーロ(約284億円)を問題視。パリSGは2016年度に5億5000万ユーロ(約704億円)の総収入を得ているが、それでも額が額だけに、本当に財政バランスが取れているのか財務管理組織に調査を依頼する。仮に違反していると判断された場合は、処分は罰金などの経済的なものに止まらないと警告を発した。
 
 UEFA本部の関係者によると、当初彼らはパリSGの爆買いに対し、CLのステータスを向上させる動きとして好印象を抱いていたという。しかし、バイエルン、レアル・マドリー、ユベントスといった老舗クラブから異議を唱える声が出始めると、風向きが一変した。UEFAの一連の動きはアル・ケライフィ会長にとっては脅威以外の何物でなく、下手をすれば数年間もヨーロッパ・カップ戦から締め出される危険に直面する格好となっている。
 事態のさらなる悪化を招いたのが、この時アル・ケライフィ会長とジャン・クロード・ブランGMが取った対応だ。パリSGと取引のあるある代理人によると、UEFAの警告に慌てふためいた2人の命を受けたクラブ幹部たちが一斉に選手の代理人たちに電話を入れ、「パリSGを出る準備があるか?」と意思確認を行ったという。
 
 その対象者は、アンヘル・ディ・マリア、ハビエル・パストーレ、ルーカス、ユリアン・ドラクスラー、アテム・ベン・アルファ、チアゴ・シウバ、ブレーズ・マテュイディ(現ユベントス)、セルジュ・オーリエ(現トッテナム)といった選手たち。その数は実にチーム全体の半数に及び、長年に渡ってチームを支えてきた重鎮たちの名前も多く含まれていた。
 
 しかも、対象者の1人に直接確認したところによると、そのメッセージがまた失礼極まりないものだった。その中身はこうだ。
 
「FFPに照らし合わせ、クラブはネイマール獲得オペレーションで支払ったお金の一部を回収し、収支のバランスを保つ必要性に迫られている。現有戦力を一掃セールで売りに出すことにした」
 
 クラブからこのメッセージを受け取り、もっとも傷つき怒り心頭となったのがマテュイディで、すぐさま移籍を志願。そのままユベントスへと飛び立ったが、その際の移籍金が2000万ユーロ(約25億6000万円)と推定市場価格よりも低かったのは、選手側が退団へ向けて強硬姿勢に出たため、パリSGが不利な条件を飲まざるを得なかったからである。