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メジャーリーグと日本球界の違い

「21世紀になり成長するMLBに対して、巨人戦ビジネスにぶら下がっていたセ・リーグと、ぶら下がることが出来ないパ・リーグ」

本場メジャーリーグを目にして小林さんはそう強く感じたという。

少なくとも2002年の球界再編までは。この頃になると、新球団を立ち上げる動きが出たり、ダイエーが産業再生機構に入るなど、大きな波がいくつも起き始めていた。プロ野球のビジネスの裏側に脚光が当たり始めた。そんな折に小林さんは書籍を執筆した。

「プロ野球ビジネスはこうあるべきであるという経営入門の本を書こうとしました。それで当時巨人オーナーの渡邉恒雄さんにインタビューを申し込んだ。タイトルは『合併、売却、新規参入。たかが…されどプロ野球!』(宝島社)でした」

渡邉氏が当時批判されていた『たかが選手』発言を揶揄したようなタイトルであった上に、当時は一切取材を受けない姿勢を貫いていた渡邉氏。だが、小林さんは2日間徹夜して、熱意を込めて手紙をしたためたところ、取材を受けてもらえることになったという。この手紙が彼の人生を大きく動かした。

渡邉恒雄さん、孫正義さんとの出会い!

タケ:
何のコネもなく?

小林:
最初、正規ルートで取材を申し込んだんですけど、断られました。ただ、手紙を書くと渡邉さんは、読むって話を聞いたんですよ。

タケ:
凄いな、この話!


その後、渡邉氏と取材で面会することに成功した小林至。あらゆることを教わったという。

小林:
“たかが”っていうとても失礼なタイトルつけちゃったんですよ。でも一番嬉しかったのは、そういったタイトルにも関わらず、渡邉さんが“よく分析できている”と言って200冊買い上げてくれて、たくさんの人に配ったことです。


その時に配っていた人の一人が、球界参入直前だったソフトバンクの孫正義社長だった。渡邉氏が孫社長に「直接、こういった人がいる」と紹介したのである。

タケ:
で、会って、なんて言われたの?

小林:
“経営手伝ってくれ”と。

ソフトバンクホークスで最初に取り組んだこと

1通の手紙が、取材拒否の渡邉恒雄氏を動かし、さらに孫社長にそこまで言わしめ、その上福岡ソフトバンクホークスの取締役に就任。とんとん拍子の展開にタケ小山も驚くばかりである。

最初に手を付けたのは「クラブチーム世界一決定戦」に向けた取り組みだったという。

『孫王攘夷(そんのうじょうい)』という、孫さんと王(貞治)さんが球界を変えるというキャッチフレーズの元に「クラブチーム世界一決定戦」を打ち出し、そのMLBとの交渉役を担った。

ただ、「MLBは世界一の野球のリーグ」ということで設計されている。だからこそ、巨額の資金が動いている。そうしたブランディングの壁に阻まれて「クラブチーム世界一決定戦」は実現しなかった。

その一方で、国内ではNPBの事業会社構想の提案書を提出した小林さん。これにより侍ジャパン構想を立ち上げる。各球団はおおむね賛成するも、足並みがそろわない。我慢の時間が続く中、2010年からは王貞治会長指導のもと、フロントの責任者としてチーム作りに精を出すことになった。

球団のフロントから、ホークスを改革

球団のチーム作りをするとは予想だにしていなかった小林。5年間優勝から遠ざかっていたホークスに、「他球団の主力や外国人選手を積極的に補強」「出来高・インセンティブの導入」「球界初となる三軍制」と、三つの柱を打ち立てた。

タケが興味を持ったのは三軍制だ。「これは教育リーグですか?」

その真意は、本場アメリカにあった。アメリカは1チーム少なくとも6軍+ドミニカリーグの300人で構成されている。選手を育てるのに、2軍では不十分。2軍は1軍選手が腕をキープするための場所であり、本来の野球、まさに王道を進もうということで3軍制を導入したのである。

この3軍制の導入は、小林さんとしても今でも胸を張って自慢できる実績なのだという。

日本のプロ野球の課題は?

日本球界の裏側をみてきた小林至さん。日本プロ野球界の課題について聞いてみると、その答えはシンプルだった。それは「年棒」だ。

大リーグと比べた場合、日本の一軍選手の年俸は平均8千万円、MLBは5億円弱。その差はなんと6倍となる。この差を小さくするには、国際化を進めるしかないという。例えば、韓国・中国・台湾・オーストラリアとリーグを組んだり。流石の発想だ。

続けてタケ小山が質問する。

タケ:
経営がうまいと思うチームは?

小林:
それはソフトバンクでしょ!


グッズ販売などはすべて自前で在庫を抱えるリスクを背負って商売をしている。このノウハウは一朝一夕に手に入れられるものではないと小林は自信をもって答える。今でこそ、各球団が地域密着施策を行っているが、その原点はホークスなのは間違いない。

プロ野球選手を経て、フロントに立った小林至さん。最後はコミッショナーを狙っているのかと思いきや…

「野球界に貢献したい。若い優秀な人はたくさんいる。しかし、収入面の不安などで人材が確保できていない。若い人が活躍できる環境づくりに体を張る役割は喜んでやりたい」

小林至。選手側として、運営側としてプロ野球界を生き抜いたこの男のバイタリティーには目を見張るものがある。恐らく今後も、逆風に吹かれることもあるだろう。しかし、彼なら日本のプロ野球界がより大きなものになるための貢献ができそうだ。

インタビューを音声で聞くには podcastで。
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パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:小尾渚沙(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月〜金 8:40頃〜)



【転載元】
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