カリスマ獣医師、動物園を楽しく歩くコツは「“全部見よう”という考えは捨てる」
見方を変えるだけで100倍楽しくなる
東京・平和島で動物病院を営む獣医師・北澤功先生は、動物園での勤務経験がある無類の動物園好き。日々、犬や猫などの治療・診察に忙しい先生を、よこはま動物園ズーラシアに誘い、ツウな動物園の楽しみ方を聞いた。
「“今日はレッサーパンダだけ”などと、目当ての動物を決めるのがおすすめ。動物を全種類見て満足するだけなんてナンセンス! 日本の動物園は入園料がとても安いので、“モトを取ろう” “全部見よう”という考えは捨てて、何度も足を運べばいいのです。
そんななかで好きな動物をまずは半日〜1日じっくり観察する。それから、次の季節にまた見に行く。すると、季節ごとに毛が生え変わるのが見られたり、子どもが生まれたりと発見がたくさんあります。何度も通っているうちに、動物が顔を覚えてくれて親しくなれることがあるかもよ〜!」
動物園を楽しく歩く10のコツ In よこはま動物園ズーラシア
10のコツをチェックして、あなたもお気に入りの動物園へ、いざ出発♪
■その1:動物が元気な朝いちばんに駆け込むべし
毎日多くの人が訪れるので、動物たちも夜になればクタクタに。でも、夜は寝室に移ってしっかり休むので、朝になればパワー回復。新鮮な気持ちで新しい1日を始められる。そのため、まだあまり多くの人と接触していない午前中ほど、動物たちも刺激を求めており、活動的な姿を見せてくれることが多い。
■その2:全部見ないと「もったいない」をやめる!
欲張って全種類を見ようとせず、「今日はゾウとライオンを見よう」などと事前に決めてから出かけよう。目当ての動物のところでは、表情や仕草を観察すること。なんだか人間っぽい、鼻の形がおもしろいなど小さな発見があり、親近感が湧いてくる。「エサやりなどのイベントの時間に合わせて出かければ、それだけで満足感があります」と北澤先生。
■その3:何度も通える近くの動物園をチェック
何度も通うなら「年間パスポート」がおすすめ。「初めに1000円〜3000円のまとまった金額を支払うことになりますが、数回でモトが取れます。ズーラシアなんて、18歳以上でも年間2000円で行き放題。3回行けばモトが取れます♪」と北澤先生。お気に入りの動物に、春夏秋冬と4回会えば、さらに愛着が深まるはず。
■その4:手作り看板は必ず読もう
最近は手書き看板が評判。「かわいいわが子を紹介するために書いているようなものですから、愛情たっぷりで、見どころポイント満載です」
■その5:天気や季節で変わる動物の様子を楽しむ
「動物園は雨の日だっておもしろいんです。ほら、ふだんはまばらにいるカンガルーが1か所で雨宿りしているでしょ?」と北澤先生はうれしそう。
雨の日は人気動物をひとり占めできるかもしれないし、水浴びが好きな動物がイキイキとした姿を見せることもある。また、人が少なければ飼育員と直接話ができるチャンスも!?
■その6:「ここでしか」な動物と出産情報を入手
珍獣や赤ちゃん目当てに出かけるのも楽しい。「ズーラシアではさまざまな動物の繁殖実績があるのでチャンス大。サイトやSNSで情報収集を!」
■その7:かくれんぼや鳴きまねで動物と仲よくなろう
「動物も人間を見ています。こちらの動きや呼びかけに反応してくれる動物は少なくありません。トラなら、自分が獲物になったつもりで物陰からかくれんぼすれば気を引けることも」と北澤先生。鳴きまねも効果的。ただし、神経質な動物にはNG。また、ほかの人の迷惑にならないよう。
■その8:動物オタクな飼育員に話しかけよう
「僕もそうでしたが、飼育員は動物が大好きでこの仕事を選んだ、筋金入りの動物オタク。クールな顔で仕事していたって、本当は担当する動物のことを知ってもらいたくてたまらないんです」と北澤先生。手が空いていそうなタイミングで話しかければ、いろいろ教えてくれるはず。
■その9:目・鼻・足など1か所にしぼって見比べて
動物の体の一部に注目して見比べるのは、観察眼を養ういい方法。「例えば、目だけに注目しても、大きさ、横についているか前についているか、瞳孔の形など、本当に多種多様。足(脚)も、動物ごとにそれぞれ個性的な形をしていて、必ずそれには理由がある。なぜ、こんな形なのかゲームのように予想し合うのも楽しい」
■その10:動物ウンチクを仕入れて出かけよう
動物ウンチクを事前に調べて、披露しよう! 北澤先生の著書『獣医さんだけが知っている 動物園のヒミツ 人気者のホンネ』も参考にしてみて♪
展示方法の違いを知っておこう!
展示方法はさまざま。主に以下のような方法がある。
●生態展示
動物が自然界ですんでいた環境に近い状態(水辺の動物、砂漠の動物、山岳地の動物etc)を再現。複数の動物が混合飼育される。
●行動展示
動物本来の行動を引き出したり(空飛ぶ動物、泳ぐ動物etc)、その動物ならではの能力を強調して見せるためのレイアウトや仕掛けがある。
●地理学展示
生息する地域ごと(アフリカの動物、アジアの動物etc)にまとめて動物を展示する方法。
●通俗的配列
生物学にとらわれず、童話などに即した展示(うさぎと亀、鶴と亀、3匹の子ぶたetc)や就学前幼児など親子で公園として使えるようなレイアウト。
本性まるだしな“動物ウンチク”
■ゾウ:意外と繊細で敏感な足の裏
ゾウは足が器用で、特に足の裏は非常に敏感。足の裏で感じ取った刺激が耳まで伝達されるため「ゾウは足の裏で音を聞く」とたとえられる。非常にデリケートで、足の裏の柔らかい部分はケガをすると化膿しやすく、最悪の場合、死につながることもある。
■キリン:恋に破れてオス同士で濃厚交尾!?
1頭のメスをめぐって、オス同士は首をしならせてガンガンぶつけるような激しい戦いをする。決着がつかないとオス同士で口づけしたり、首を舐め合ったりとイチャイチャし始める。オス同士のケンカの興奮を性的興奮と錯覚するためではないかといわれている。
■チンパンジー:頭も身体能力も人間超え!?
チンパンジーと人間は遺伝子が4%ほどしか違わない。さらに、賢いだけでなく身体能力にもすぐれ、握力はなんと成人男性の7倍以上強く、300キログラムを軽く超えるといわれる。あごも発達しており噛む力も強烈。木の実どころか人の指も簡単に噛みちぎれるほど。
■オランウータン:嫉妬深く、根に持つ性格
オランウータンは異性の飼育員に恋をすることがあり、意中の飼育員が奥さんや恋人と一緒に歩いているのを見ると、翌日からやきもちで大変なことになることがある。機嫌が直るまで、寝室に引きこもって出てこなくなることもあり、飼育員を手こずらせる。
■レッサーパンダ:2本足立ちはみんなできる!
2本足で立つレッサーパンダが人気になったことがあるが、レッサーパンダが立つのは普通のこと。歩くときに足の裏を全部地面につける蹠行性(しょこうせい)なので、2本足で立っても安定感があるのだ。そのかわり、2本足立ちの姿勢で走ることはできない。
■カンガルー:乳首が成長して赤ちゃんになる!?
赤ちゃんは顔に口があるだけの未熟状態で生まれる。赤ちゃんは前足のツメを使ってお母さんのおなかの袋に入り、その中の乳首をくわえると乳首と一体化。それが次第に成長して赤ちゃんらしくなる。その様子から昔は乳首が成長して赤ちゃんになると考えられていた。
■ライオン:たてがみが立派なほどモテる
子どものころはたてがみがなく、性成熟とともにたてがみが生えてくる。オスのたてがみは、テストステロンという男性ホルモンと関係があり、このホルモンが多いほどたてがみがフサフサで黒くなる。また、そうしたライオンのほうがメスに選ばれる率が高くなる。
知っておきたいゾウの豆知識
北澤先生はゾウが大好き♪
「ゾウは基本的にはいい子なんですが、獣医は痛いことをする嫌な人だと思って、攻撃をしてくることがあります。僕も嫌われたものです。獣医だけでなく飼育員や事務員などもユニフォームからスタッフだと見破ることがあります」
ゾウは賢いのだ!
ちなみに、ゾウのウンチはバレーボール大のものが1個2〜3kgぐらい。これを1回5〜7個も出す。おしっこの量は計測不能だが、これも大量。たくさん飲んでたくさん排泄。ゾウはダイナミック!
撮影協力/よこはま動物園ズーラシア
<プロフィール>
北澤 功先生◎酪農学園大学獣医学科卒業。長野市での動物園勤務を経て、『五十三次どうぶつ病院』を開業。近著に『獣医さんだけが知っている動物園のヒミツ 人気者のホンネ』。
<Infomation>
北澤先生が案内する「一味違う動物園めぐり。サルに注射された獣医から学ぶ『動物の不思議な生態』」ツアーを、2017年7月30日(日)、上野動物園にて開催決定。参加費は2000円(入園料別)。申し込み・問い合わせはTABICA(たびか) https://tabica.jp/