イラスト/和田靜香

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 フジロックにサマソニ、ライジングサンと、夏は「フェス」が盛り上がる季節。

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 しかし、今年一番熱いフェスといえば、大相撲名古屋場所じゃないのか? 7月9日〜23日まで15日間もの長丁場。チケット即完売。老若男女がヤンヤの大喝采。こんな熱いフェスが他にあろうか?と、私は問いたい。

 それなら確かめに行かねばならぬは本業ロック・ライター、しかしスー女(相撲女子)な私。いざ、名古屋場所へ。

177の熱い取り組み

 名古屋へは前日入りし、相撲の師匠(注:私は相撲を取ったことがあります)、若貴時代に活躍した、元関脇・若翔洋さんがおススメの台湾料理「味仙」で絶品・酢豚に舌鼓を打ち、「おすもうさんが美味しいってものにハズレなし。おすもうさんグルメ本を出してください」と願いながら就寝。

 翌日はちょっと遅刻して朝9時過ぎに会場の愛知県立体育館に到着した。

 えっ、朝9時? おすもうって夕方からじゃないの? という人もいるでしょうが、TVに映るおすもうさんは幕内・十両という上位70人ほど。しかし大相撲界、常時700人ほどのおすもうさんたちが切磋琢磨しており、この日も177の熱い取組が朝8時半から行われたのです。

 その177の取組、354人の力士一人一人に家族がいて人生があり、などと想像しては涙腺ゆるむオバちゃんスー女だけど、いや、その実、若くてイキのいいイケメン力士ハンターと化して(生臭くてごめんなさい)、青田買い? うふっ♪ 見つけちゃいました。 

 まずは幕下・翠富士(みどりふじ)。上腕の筋肉もたくましいザンバラ髪で、既に名古屋のスー女たちからの声援がすごい! 名古屋のお嬢様方のイケメン嗅覚、さすがです。あいにくこの日は負けたけど、それでもみんな、拍手で見送る。

 そしてこの日の一番の収穫は、その名も一山本(いちやまもと)! 相撲界の序列、幕内〜十両〜幕下のも一つ下、三段目で頑張る彼は強い、強い。全身からファイト魂を放ち、男も女も吸い寄せる。

 私の前に座っていた相撲ツウのおじさんが「オレが一番だってことで、山本の前に一を付けたんだろうね!」と嬉しそうにのたまうから、いいこと言うわ!と頷いちゃう。ツウおじさんの話にさらに耳を澄ませば「役所に就職したけど、奮起して相撲界に入ってきた」んだそうで、23歳、北海道出身。今後は私が見守ることにします、はい。

 それにしてもおじさん、詳しいですね? 聞けば1年6場所、何度も見に来るとか。しかも「今朝も7時半には来たよ!」と朝イチから観戦と半端ない。疲れませんか?と聞いたら、「疲れないよ。だって相撲が大好きだから」というおじさん。瞳はキラキラ、少年のよう。お手製の星取表と力士名鑑をファイリングして大事そうに抱え、その相撲ファンな人生にビバ!

「藤井聡太四段よ!」

 そうこうするうち、フェスの1日は瞬く間に過ぎる。途中、お土産屋さんで可愛い相撲グッズを買い漁り、お団子やらも買い込んで席でモグモグ、ビールもゴクリ。フェスの醍醐味って、お買い物やら飲食にもあるよねぇ〜と、一人ニマニマする。

 と、何やら向正面が騒がしい。キョロキョロしていると、嗅覚鋭い名古屋スー女たちが「藤井聡太四段よ!」と叫ぶ。おおっ! 話題の人は話題の場所にやって来る。大相撲名古屋場所、イケてるわぁと再確認した。

 さて、もちろん、横綱、大関陣ら、お馴染み関取たちも堪能。私も少しツウぶると、今、相撲界は20歳前後の若い力が台頭してきて、ワクワクする取組が目白押し。

 この日も20歳の貴景勝(たかけいしょう)が横綱白鵬に挑戦。がっぷり組むと負けちゃうからと手だけで突いてくる貴景勝に、白鵬、途中で動きを止め、さぁ飛び込んでこい!とばかりに両手を広げ、突っ込んできた貴景勝のまわしを取ってガシガシっと押し出した。

 これぞ、横綱の強さ、大きさ、かっこいい! 前のほうに座ってた男の子が“1番!”と指を高々掲げて「わあああ」と叫び、私も興奮して泣きそうになった。

 さぁて、大相撲名古屋フェス。23日まで続く。しかもTVでもネットでも楽しめる。

 エビバディ、チェキラ〜ウト!

和田靜香(わだ・しずか)◎音楽ライター/作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人VSつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。