新人都議・龍円愛梨さんに聞く「息子・ニコちゃんに導かれた政治家」の道
渋谷区(定数2)でトップ当選を決めた龍円愛梨さん(40)は、アナウンサー時代より少し筋肉質になったその腕で、しっかりと愛息を抱きかかえて仲間の前に現れた。
「いっぱいカメラマンがカシャカシャしてくれるからね」
そう言って連れてきたのは愛称ニコちゃん(4)。同級生の人気者だ。いつも龍円さんが写真を撮るからカメラが好きになってしまった。
「息子がいたから“社会を変えたい”と思うことができた。もともと政治家になりたかったわけではないので、息子に導かれているようでした。だから一緒にスタートラインに立ちたかったんです」
と当確の瞬間を振り返る。
テレ朝を円満退職後、2013年に米国カリフォルニア州で出産。医師はダウン症であることを告げてこう言った。
「ダウン症があっても、勉強もできるし、スポーツも楽しめるし、健康で、結婚することもできる。人生を謳歌できるんだよ」
州のスペシャルニーズ支援センターに電話をかけると、翌週には自宅に専門家が来てニコちゃんの様子をみて、必要な支援を立ち上げてくれたという。米国の法律に基づく無料支援だった。
「それで、あっ、大丈夫だ、子育てできるなと安心しました。でも、日本ではすぐに専門家に会えない。人数も少ない。親はどうしてあげたらいいのかわからなくて不安なんです。そんな親御さんの切迫した思いを感じ取って、どうにかしなくちゃという思いがありました」
小池知事が主宰する『希望の塾』に参加したのは、直談判するチャンスがあるかもしれないと考えたから。しかし、逆に「やりたいことがある人が政治家になるべきだから」と説得された。
さまざまなニーズのある子どもたちが通常学級で学べる環境づくりをしたい。
「スペシャルニーズのある子は自分のニーズを人に伝える力が自然に身につく。社会で生きていくスキルが身につくわけです。同級生はその子を手助けするため授業に集中するようになる。パラリンピックを3年後に控えた今がチャンスだと思っています」
現在はシングルマザーの龍円さんは、ひとり親家庭の厳しい現実も変えたい。
「平均年収は181万円。きょう、あす、子どもに何を食べさせようかと目の前のことで頭はいっぱい。陳情する余裕などありません。記者経験を生かして声を拾い上げます」
ひとり親家庭に限らず、母親らに「助かったわ〜」と喜んでもらえるきめこまやかな子育て支援を増やしたいという。
昼間の街頭演説で「こんばんは!」とやらかす天然キャラ。よく笑い、朗らかで、悲愴感がない。成長するニコちゃんを抱き続けた腕の筋肉は母親の勲章だ。
「昨日、会派の新人研修があったんですけど当選した全員がめちゃくちゃ燃えている! やりたいことがある人が集まっているから楽しみです」