大きな課題が残った日大三好リリーフを見せた近野佑樹(浦和学院)

 今年の西東京を代表する左腕投手であり、早稲田実業の好敵手として期待される櫻井 周斗(日大三)。しかしこの男の不調が続いている。

 まず1回表、1番矢野壱成(2年)が右前安打で出塁を許し、その後も、一死満塁のチャンスを作り、バッテリーミスで1点を先制。さらに二死満塁から6番秋山拓海(3年)の2点適時打で3点を先制される。

 その3回裏、日大三の櫻井の犠飛で1点を返されるが、4回表、二死三塁から暴投で、1点を追加。二死一、二塁から4番蛭間 拓哉の中前適時打で5対1と点差を広げる。

 日大三の櫻井はこの回で降板。自慢の速球も142キロ止まり。被安打5、四死球5、5失点、4奪三振と大荒れの投球内容だった。櫻井は前日の試合後からブルペンで投球練習を行っていたが、復調には至らなかった。櫻井は「本当にチームに迷惑をかけてしまい申し訳なかったです。柿澤 海大、八木 達也は僕よりも球速が速くないですけど、それでも気持ちをしっかりと出して抑えることができている。そういうところを僕は見習いないといけない」とメンタル面を課題に挙げた。

 だが、独特のオーバースローで投げ込む櫻井。技術的にどこか狂いが生じているのだろう。技術的な狂いがメンタル面にも影響を及ぼしているのならば、夏までじっくりおいて修正に努める必要がある。リードする津原 瑠斗はいう。「良い時の櫻井はイキイキしていて、目付きが違うんですよ。今日の櫻井は良い時の目付きではないんですよね。今大会はいろいろ調子が良くないことが影響しているのかなと思います」

 昨秋の東京都大会決勝。清宮 幸太郎から5三振を奪った櫻井は、打てるもんなら打ってみろ。そんな気迫が込められていた。残り1か月半で櫻井は完全復活を果たすことができるのか。

 一方、浦和学院は先発の渡邉勇太郎が135キロ前後の速球、スライダー、カーブのコンビネーションで日大三打線を6回2失点に抑える投球。失点は犠飛、内野ゴロと最小限に抑えた形となった。だが、7回裏、2番手の中上が8番津原に高校通算17号本塁打を浴びてしまい、4対6と2点差。3番手の近野佑樹にスイッチしたが、一死満塁で、4番金成 麗生を迎える。だが近野は冷静だった。130キロ前後の速球、スライダー、チェンジアップを両サイドに散らせながら、最後は金成を空振り三振。5番日置 航を中飛に打ち取りピンチを切り抜けた、この7回裏を抑えたことが大きなポイントとなった。

 日大三の小倉全良監督は「金成の前を打つ櫻井が死球だったのが大きかったですね。一死二、三塁で櫻井が打っていれば結果は変わっていたかもしれません。金成はこのままですと、夏は代打を出す可能性はありますよ」と厳しい表情で語った。

 日大三にとって中心選手として活躍してほしいエースの櫻井、4番金成が機能しないと厳しい戦いとなる。9回裏、浦和学院は切り札の佐野涼弥を投入して、マウンドに送り、あっさりと三者凡退。佐野はここまで中継ぎとして3試合に登板し、未だ無失点。強力なクローザーの存在で、浦和学院が決勝進出を決めた。

 森士監督は「櫻井君は本来の出来ではなく、また前日にうちは前橋育英の丸山 和郁君と対戦していることが、今日打てた要因かなと思います」と櫻井攻略を振り返り、決勝戦へ向けて「今大会は夏へ向けて勉強をさせてもらっているので、また1試合多く試合をさせてもらうことに喜びを実感します」と意気込みを述べた。

 敗れた日大三。櫻井の不調だけではなく、3失策が失点につながっている。たとえ主力選手が不調でも、守備、走塁で盛り立てていきたいが、一緒に崩れてしまうと、相手に隙を見せてしまうことになる。夏へ向けて不安が残る終わり方となってしまった。

 今週末も福岡で招待試合が行われる。打線、投手起用含めて、どんな選手起用が行われるのか、注目である。

(取材・写真=河嶋 宗一)

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