増田珠(横浜)

 今年の高校生野手を代表する大型外野手・増田 珠(横浜)。走攻守すべてにおいて超高校級の能力を持つ増田は清宮 幸太郎同様に勝負を避けたい打者になろうとしている。どんな胸中で打席に立っているのかを増田に伺ってみた。

勝負を避けられる打者になったことは自分はそういう打者になったということ

 5月21日の春季関東大会。ひたちなか市民球場では清宮 幸太郎の高校通算94号本塁打で沸く中で、注目の増田は、浦和学院戦で、4四死球。しかも1スイングもしないまま試合が終わった。

増田は「夏ではこういうことが当たり前になると思いますし、勝負を避けられることは逆に自分はそういう打者になっていると思いますし、嬉しさを感じています」とポジティブに受け止めている。

 勝負を避けられている中、打ちたいと思うのならば、ノースリーから打っていてもおかしくない。実際にそういう打者もいる。だが増田はそれをしなかった。その理由は?「チームからウエイト(待て)のサインが出ていました。しっかりと戦略上の理由があって、ウエイトしていると思いますし、自分が打ちたくて、スリーボールから打つというのは焦っている証拠。自分がそういう姿を見せて、チームに悪い雰囲気を与えたくないので」もちろんノースリーで打つ、打たないでいろいろな考え方があると思うが、なぜウエイトをするのかをしっかりとした理由で説明できる高校生はいない。増田はチームの4番としてどう動くべきなのか?を考えて打席に立っているのだ。

 今年は最上級生としての自覚を持ってプレーしている。1年夏、神奈川大会では、打率.379を高打率マークし鮮烈デビューを飾った増田。そのときの状況と比べると、「心境が全く違う」と話す増田。今はとにかくヒリヒリ感を味わいながらプレーしている。「下級生の時まで先輩の夏を終わらせないためにやってきましたけど、今は最後の年になるので、最上級生の責任をもってやっています」春季関東大会が終わり、あとは夏の大会を迎えるのみとなった。「今日のような状況となっていても焦ることなく、1球でも甘い球が来たら、それを仕留められる打者になりたい」と夏へ向けての意気込みを語った。

 この春は十分に自分の実力を発揮できた大会となった。特に春季県大会準々決勝の平塚学園戦は、自分にとって理想のスイングができた試合だと振り返る。「あの試合は本当に冬やってきたことが出せた試合で、自分のベストスイングで、場外本塁打を打てたのは大きな自信となりました」こうして心身ともに大きな成長を見せている増田。走攻守と溌剌としたプレーで、二度目の夏の甲子園出場を決める。

(文=河嶋 宗一)