早稲田実業vs花咲徳栄
スタンドいっぱいの観客の中、早稲田実業vs花咲徳栄のゲームが始まった。
早稲田実業は3回に1番・生沼 弥真人が中前で出塁すると雪山 幹太、清宮 幸太郎も続き3連打で満塁。1打席目に安打を放っている野村 大樹に打席が回ると、強い打球を右前に飛ばし先制点を奪う。さらに福本 翔の3点適時三塁打などもあり一挙5点。
しかし4回に花咲徳栄の野村 佑希が三塁打、続く須永 光の三塁打で1点、7番小川 恩の犠飛で2点を返すと、5回には再び野村 佑希が2点本塁打を放ち1点差まで詰め寄る。この日3本目となる安打が本塁打にスタンドから大歓声。この試合で野村 佑希の名前が広く知れ渡ることだろう。
しかしあの男が黙ってはいなかった。清宮が少し体勢を崩しながら打った打球はライナーでスタンドイン。「入っちゃったって感じでした。珍しいホームランでしたね」と笑顔を見せた。その清宮に花咲徳栄の岩井監督も「プルヒッターかと思ってたけど、スイングが柔らかいですね。柔らかいのにヘッドスピードが早い。どのボールにも対応してきますよね」と褒め称えた。
この試合では何度もスタンドがどよめく場面があった。6回に2番の千丸 剛が3点本塁打を放ち逆転。さらにどよめいたのが花咲徳栄の2番手・清水 達也の球速だ。ひたちなか市民球場のスピードガンには「148」。このスピードのある直球で打者をねじ伏せていく。
1点ビハインドで迎えた9回裏。四球とヒットのチャンスの場面で打席には清宮。この場面を振り返り「いつもこういう展開なので、誰もあきらめてませんでした。2番の雪山がつないでくれて、ベンチからもキヨに回せ！という声が聞こえてました。昨日『自分まで回してくれたら絶対打つから』と言ってたので、ここで凡退したら見せる顔がないという気持ちで打席に立ちました」と話す。「自分まで回してくれたら絶対打つから」。その言葉に嘘はなかった。土壇場で適時安打を打って見せ、同点に持ち込んだ。
野村 佑希（花咲徳栄）タイブレークとなり、無死一、二塁からスタートした10回。花咲徳栄がノーヒットで2点を奪い、早稲田実業の攻撃に移る。
早稲田実業は先頭雪山が安打でつなぎ、再び清宮。「タイブレークは後ろに野村もいましたし、9回よりも気楽に打てました」と語る清宮の打球は右前に飛び、1点差。そして清宮が信頼している野村 大樹が右中間に二塁打を飛ばし、サヨナラ勝利。延長戦までもつれる熱戦を早稲田実業が制した。
清宮の本塁打、清水が148キロ記録など様々な見どころがあったこのゲーム。もう一つ注目すべきなのは花咲徳栄の野村 佑希だ。1打席目は中前、2打席目は三塁打。3打席目は本塁打。あわやサイクルヒットという活躍を見せた。そんな野村 佑希はまだ2年生。早稲田実業の野村 大樹も2年生で同じ4番に座る。「苗字も一緒でずっとそういうことは言われてきたので、そういう意識はありました。最後は向こうが打って、自分が打てなくて負けたので4番としての力が足りてなかったと思います」ただ「最初は同級生が活躍しているのを見ているだけだったんですけど、やっとそういう場所で勝負できるレベルまで来たなという感じです。同級生には負けたくありません」と大きな手応えも感じている。
関東大会では「ミレニアム世代」が活躍を見せている。ここからどこまで成長できるか。この経験はとても大きなものになることに間違いはない。
（取材・写真＝編集部）
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