広島東洋カープ・石原 慶幸選手「高校球児向け捕手基礎講座・キャッチング編」【Vol.1】

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 昨年は25年ぶりのセントラルリーグ制覇を果たし初のゴールデングラブ賞・ベストナイン捕手部門を受賞した広島東洋カープ・石原 慶幸捕手。県立岐阜商(岐阜)から東北福祉大を経て2001年ドラフト4位で入団してから16シーズン目を迎えた今年、2連覇を見据える鯉の女房役として、洞察力あふれるリードで若き投手陣を陰日なたで支え続けている。

 今回はそんな石原選手が、そんな捕手メソッドの一部を高校球児のみなさんのために公開!高校球児目線を常に考慮して頂きながら「捕手講座・基本編」を展開してもらった。今回は3回連載で紹介し、第1回では誰もが悩む「キャッチング」について。石原選手の考え方が披露されます。

捕手の基礎を学んだ大学時代とプロ1・2年目

石原 慶幸選手(広島東洋カープ)

――県立岐阜商業高校(岐阜)時代は高校通算57本塁打の強打と強肩で鳴らし、甲子園も2度の出場経験がある(1996年夏・1997年夏)石原選手ですが、高校生当時はキャッチャーとしてどんなことを考えていましたか?

石原 慶幸捕手(以下、石原):当時は「いろいろ考えて」はできてなかったと思います。監督(森川 豊さん・2007年5月に51歳で逝去)から言われたことをやるだけという感じでした。

 2年生の時は1個上にいいピッチャー(関谷 篤・法政大)がいて。その方が自分のピッチングをすれば打たれることはなかったです。逆に3年生の時は1個下のピッチャー(水谷 英基)が結構点を取られてしまって「何をどうこうよりどころじゃない」っていう感じで終わってしまった感じが強かったですね。

――それでも、2年生と3年生とでは投手にかける言葉は変わりましたか?

石原:関谷さんの時は引っ張ってもらった感じでやっていました。3年生の時は強く声をかけることもありましたし、優しく声をかけるといった使い分けもありました。

 ただ、結果としては甲子園1回戦で負けてしまった(準優勝した龍谷大平安に4対8)ので、今思えばその時にもう少しいろんなことを考えられる自分がいれば違う結果になってたかもしれないですね。

――ということは、東北福祉大での4年間で石原選手は捕手としてのベースを作ったのですか?

石原:もう監督(伊藤 義博さん)は亡くなってしまったんです(2002年・56歳で逝去)けど、僕の野球人生の中ですごく大きい影響を与えてもらいました。

 リード面では「常にいろんなことを考えながら、最善のことをしながらやっていけ」ということを教わりましたし「石橋をたたいて渡らないと結局1試合勝てないぞ」ということもよく言われました。

 そして2年生から試合に出させてもらって、年上の人と組むことが多くても「その中でちゃんと言いたいことは言わないといけない」ということも言われました。

 僕は今年でプロ16年目ですけど、いまだに「正解っていうのはない」と思いますし、日々勉強することばかりなんですが、一つの影響として伊藤さんの言葉は大きかったと思いますね。

――広島東洋カープに2002年入団。ここで石原選手が、まず学んだことは?

石原:キャッチングに関してですね。1年目、2年目くらいは(当時、監督の)山本 浩二さんに「キャッチングが悪い、いい音が鳴らない」と言われて、「なんとかうまくなりたい」と思ってやっていました。

――現在の形になるまでは、相当時間を要したと思います。

石原:プロのピッチャーっていうのは今まで受けていたアマチュアの選手とは違いますし、なんとかちゃんと取れないとピッチャーにも迷惑が掛かります。「これじゃだめだ」というのでちゃんと取れるようになろうというのがスタートでした。

キャッチングのポイントは「投球を受け止めてあげる」

石原 慶幸選手(広島東洋カープ)

――その結果、現在では日本球界屈指のキャッチング技術を持つ石原選手ですが、そのポイントはありますか?

石原:僕の場合はまず、ピッチャーに「ここだよ」という投げるポイントをはっきり構えてあげる。そして投球は自分の方に向かって飛んでくるので「捕りに行かない」、補りというよりは「受け止めてあげる」イメージです。「受け止めたボールをそのまま見せてあげる」感覚ですね。

 その場合、投手を「上から見る」とどうしても補りにいってしまう。イメージの中ですが、なるべくピッチャーを「下から見てあげる」と補りに行くことは少なくなると思います。

 もちろん、いろんなキャッチャーのタイプがあると思います。ミットを動かすキャッチャーだったり、それがいい、悪いはないと思うんです、その人のスタイルですから。ただ、僕はあまり動かさないという風になりました。

――では、変化球に対するキャッチングのイメージは?

石原:僕はストレートと一緒です。曲がるにしろ落ちるにしろ「自分のところに来るのを待って、下から」というのをやっています。むしろそうしてないと低めも止められないですし、グラブが下がってしまうこともあるんで。

――その意識の中で体の動きがついてくるイメージですか?

石原:ミットを動かすキャッチャーであれば体の動かし方が出てくると思うんですけど、僕はあんまり動かさないんで。もちろん、多少動くことはあるんですけど、あんまり体をどうこうは思ってないんです。たとえばカーブだったら「下から止めてあげる。下から下から」というイメージですね。

――現在ではプロはもちろん、高校生でもカットボール、ツーシームなどが多くなってきているが。こういった「動くボール」の捕球は難しいものですか?

石原:難しいですね。高校生の甲子園とか見ててもいろんなボール投げるピッチャーが多い。だからこそ「補りにいったら」なおさら難しいと思います。

「早く捕りたい」いう気持ちに試合でなることは解りますが、そこで我慢して我慢して自分の受け止めるところまで待ってあげてほしいですね。

「うまく捕球しようとするのであれば今言ったことをしたらもしかしたら当てはまる子もいると思いますし、そうじゃない子もいるかもしれません」とタイプによって教え方に違いがあることを理解しつつ「今の高校生キャッチャーは140キロを投げて当たり前、フォーク・カットボール・ツーシームも投げる投手を受けるので、すごく難しいと思います。ただその分、みなさんのキャッチャーレベルも上がってると思います」と現在の高校生捕手への賞賛を惜しまない石原捕手。後編では「リード面」について話を進めていきます!

(インタビュー/文・寺下 友徳)

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