改めて長打力を示した中京大中京。しかし、敗れた岐阜も収穫あり中京大中京ナイン

 名古屋市昭和区の閑静な住宅街に中京大中京はある。地下鉄の杁中駅からちょっとした坂を上るが、歩いて10分ほどでたどり着く。学校の佇まいからは、全国優勝春夏合わせて11回、日本一の甲子園勝利数を誇っている高校野球の超名門校とは思えないくらいだ。むしろ、フィギアスケートの浅田真央や安藤美姫、村上佳菜子に宇野将磨といった世界的な犬種を輩出している学校だというイメージの方がさらに強く印象づけられると言っても過言ではないくらいだ。

 しかし、日本を代表する高校野球の名門校であり、今なお、その歴史と伝統を継承しており、2009年にも堂林 翔太投手(広島)を擁して全国制覇を果たしている。昨秋も県大会を制し、堂々の自信で向った東海地区大会では、準決勝であと一つアウトを取れば、実質センバツ甲子園が決まるという場面で、そこから2点差をひっくり返されてサヨナラ負け。その悔しさをバネとして、一冬越した今のチームがある。

 高橋 源一郎監督も、「改めて、一点の重さ、一つのアウトをとる難しさを身をもって知らされました。この冬は、苦しい時は、あの口惜しさを思い出せということで、トレーニングや練習を積んできた」と言うが、チームとしては、一つのウィークポイントが捕手だった。

 春季大会以降は、その捕手に1年生の関岡君を起用。「ショートバウンドもしっかりと止められるし、総合的に見て、これでいいかなという気がしています。一つの決断です」と、関岡君に託す部分もあるようだが、一方では、関岡君を一本目で使用していくことで、鈴木 遼君や佐古君という昨秋にマスクを被っていた上級生に、刺激を与えて奮起を促すという狙いもある。こうして、各ポジションをチーム内で競い合っていくことで、ここレベルが上がっていき、チーム力もよりアップしていくということになる。

 ことに、高いレベルの部員が79人集まっている中京大中京である。そうした競い合いの中から出てきた選手が、まさにチームの代表という意識である。1年生では、この日、伊賀 功晟君も1試合目では代打で起用され、しぶとく内野安打し、2試合目は1番センターで起用され、2回には2点二塁打を放ち、自分自身もホームインするというように、しっかりとその役を果たした。

 また、投手陣ではこの日は、香村君が6回を投げて、初回には藤村君に先頭打者本塁打されたもののその後は、2回に打たれた戸本 航平君の内野安打一本身に抑えて三塁にも進めさせなかった。7回からリリーフした伊藤 稜君は、春季県大会では準決勝の東邦戦で先発して、序盤に制球を乱して掴まり大量点を許してしまっていた。その後、もう一度自分投球を見直して投げ込みも重ね、この日はいわば課題登板という形になったが、3イニングで、被安打1、6奪三振。右打者の内側に食い込んでくるようなクロスボールは効果的だった。高橋監督も、「本来は、これくらいの投球はできるはず」と、この日は合格点を与えていた。

岐阜ナイン

 打線は、初回に鵜飼君が左中間への3ランで逆転。鵜飼君は、1試合目では5打席で4打数3安打6打点で、あとは単打一本でサイクル安打となるという活躍だった。また、2試合目では8回に無死一塁という場面で代打で登場。岐阜の福村君から、中越の特大2ランを放った。この一打には、岐阜の北川 英治監督も舌を巻いていた。「鵜飼君は、やばいくらい絶好調ですよね。あの一本は、完璧でしたね。どれだけ球が見えとるんだというくらいボールをよく見て捉えていますね。普通の投手だったら、抑えられんでしょう」というくらいだったが、この春以降で20本近い本塁打を放っているという。通算では、49本塁打だ。

 中京大中京打線は、この日は伊藤 康祐君も2回に2ランを放っているし、三塁手を競う小河原君は2試合で二塁打3本を含む、9打数4安打と任を果たした。これから、6月に入ると、強化月間となり、いつもより負荷をかけていくことになるというが、そこまでで一度ピークを作って、一旦落としてからしっかりと夏へ向けて作っていくという方針だ。6月の初旬には、早稲田実業との招待し試合も控えている。

 昨秋の口惜しさもバネにして、中京大中京はしっかりと2年ぶりの夏のひのき舞台を見据えてチーム作りが進んでいると言っていいだろう。

 岐阜は、県を代表する進学校であり、北川監督も、「入学してきた生徒たちの中で、誰が何をできるのかということを見極めてチームを作っていかないといけない」と言うが、そうした中から、この日は1年生で岡田 源太郎君を9番遊撃手で起用。いくらかバタバタしたところもあったが、「守りでは使える目途がたった」と、納得していた。また、期待の2年生左腕の吉岡君が2試合目に投げて、3回から7回まで、中京大中京打線を1失点で抑えたことも、北川監督は、「相手のユニフォームに負けないで、どれだけ自分の投球が出来るのかというところも見たかったですが、今日は収穫だった。まだ細いけれども、筋力つけたらもっとよくなっていくはず」と、期待も高い。

 文武両道を実践していかなければならないという中で、ひたむきなプレーをしていく岐阜の選手たちは、毎年夏にはしっかりと仕上げてくるだけのモチベーションは持っている。

(取材・写真=手束 仁)

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