早稲田実業vs国士舘
福嶋の代打逆転満塁弾!早稲田実8回怒涛の猛攻で13年ぶりの関東大会出場決定
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秋季都大会の準決勝と同一カード。この時は、9−0の7回コールドで早稲田実業が勝っている。準々決勝で関東一を破り勢いに乗る国士舘としては、秋のリベンジ、少なくとも、秋よりは成長した姿をみせたいところ。試合は一時、国士舘がコールド勝ちの勢いであったが、思わぬ方向に展開していった。
早稲田実業の先発は背番号12の石井 豪。国士舘は背番号11の石井 崚太。ともに左腕の石井が先発した。
左腕投手は立ち上がり不安定なことがある。早稲田実業の石井の立ち上がりはまさにそうで、国士舘の1番・片岡将也の左前安打の後、犠打を挟んで、四死球が3個続き、押し出し。さらに今大会当たっている6番・嶋崎優介が中堅手の右翼側を抜ける三塁打を放ち、満塁の走者が生還した。
ここで早稲田実業は先発の石井から、右腕の池田 徹にスウィッチ。池田も国士舘の7番・田中勇祐に右中間を破る二塁打を打たれ、1回表、国士舘は5点を入れた。それでも清宮 幸太郎主将が、「1点ずつ返せばいい」と言うように、早稲田実業は慌てない。
その裏、早稲田実業も安打2本と四球で二死満塁のチャンスをつかみ、6番・西田 燎太の三塁線を破る適時打で2点を返した。
国士舘は2回表に1番・片岡がレフトに本塁打を放ち、突き放そうとするが、3回裏に早稲田実業は、主砲・清宮がライトに特大の本塁打を放って追撃する。「最近では一番感触が良くて、気持ち良かったです」と清宮は言う。
5回表、国士舘は四球2個に暴投が絡み二死一、三塁とし、6番・嶋崎の5球目にまたも暴投。1点を追加する。さらに次の球でエンドランをかけて嶋崎は左前安打。二塁走者が還って1点を追加した。
国士舘は6回表も、四球と野選、内野安打で無死満塁のチャンスを作る。ここで得点が入れば、国士舘のコールド勝ちも見えてくるような場面だ。
2番・眞崎甲太郎は浅い左飛で、満塁の走者はそのまま。続く3番・水野谷孝一郎は二ゴロ。4-6-3と渡る併殺で無得点に終わった。「あそこで追加点を入れていれば、決定的だったのですが」と、国士舘の永田昌弘監督が悔やむ場面であった。
このピンチを脱したことで、流れは、早稲田実業に行く。6回裏、早稲田実業は代打・板谷竜太が四球、さらに代打・小西 優喜が左前安打と代打攻勢で作ったチャンスで、1番・野田 優人が左中間柵越えの3ランを放ち、2点差に迫る。
7回表、国士舘は4番・山本恵太の二塁打など、安打3本を放つが、走塁ミスもあり得点できない。そうなると、球場の雰囲気も早稲田実業を後押しし、国士舘の選手は浮足立つ。
国士舘のマウンドには7回表から長身のエース・深澤 史遠が上がる。8回表、早稲田実業は、安打2本と敵失で二死満塁。ここで深澤は7番・橘内 俊治に死球で押し出し。1点差に迫る。勝負どころとみた早稲田実業ベンチは、7回から登板のエース・服部 雅生に代えて、代打に福嶋壮を送る。6回に板谷と小西を代打に送ったことで、福嶋は自分に出番があることを確信していた。「無心になって振ろうと思いました」と福嶋が語る。その初球を叩くと、ライトの柵越えの逆転満塁本塁打になった。本塁打は練習試合を含めても初めてという。それでも、「ホームランより、チームが逆転できたことがうれしかったです」と福嶋は言う。
さらに左前安打の小西を、野田が二塁打で還して1点。ここで国士舘は深澤に代えて草薙柊太をマウンドに送ったが、2番・雪山 幹太に死球の後、3番・清宮はセンターに清宮独特の高い飛球。これを中堅手が落球して2人が還り、この回8点目。さらに4番・野村 大樹がセンター柵越えの2ランを放ち、気が付けば、コールドゲームが成立した。
5回が終わって5点差、8回表が終わってなお国士舘が2点リードしていた試合は、その裏、早稲田実業が10点を入れてコールド勝ちするという、激しく揺れ動いた試合になった。
それにしても、どんな劣勢な展開でも自分たちのペースに持ってくる早稲田実業は、底力がある。これで早稲田実業は13年ぶり14回目の関東大会出場を決めた。ただその前に、27日、ナイターで行われる決勝戦がある。早稲田実業は、春は意外と優勝しておらず、優勝すれば荒木大輔投手を擁して優勝した1982年以来、35年ぶり9回目となる。「夏に向けての財産にもなるし、ぜひ優勝したい」と清宮主将は力強く語った。
一方、前半試合を優勢に進めながらコールド負けを喫した国士舘の永田監督は厳しい表情で、「自滅です。守りの野球ができなかった」と語り、「大ナタを振るうしかありません」と、夏に向けての大幅なチーム改革をほのめかした。少なくとも、準々決勝までの試合を観る限り、力があるチームであることは確かだ。とはいえ、甲子園に行くには、足りない点はある。西東京の強豪であることは確かなだけに、夏に向けてチームとしての成長を期待したい。
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(文=大島 裕史・写真=編集部)