【コラム】浦和レッズ、真の新時代到来へ――ルヴァンカップV戦士たちが語り尽くした「ミシャの偉大さ」とは
同時にキャプテンに指名されて5シーズン目。恩師の下で「まだ何も成し遂げていない」という言葉が口グセだった35歳は、右手の親指と人さし指を数センチほど離し、笑顔を浮かべながら「ほんのちょっとだけどね」とタイトル獲得の目標を成就できた喜びを表した。
「大会の名前は変わりましたけど、ギネスブックにも認定されている長い歴史の大会であるルヴァンカップを贈れたことはすごくうれしい。それでも監督も目指しているものがあると思うし、ここで喜んで失速だけはしないように。合言葉はそれでしょう。さらなる弾みにしなきゃいけないし、そうできるかどうかは僕たち次第だと思っているので」
「言葉はなかったです。まあ普通にハグをしただけ、という感じですよ」
そこに言葉は不要だったのだろう。以心伝心の固い絆が伝わってくる。ファンやサポーターから「なぜタイトルを取れないのか」と批判を浴びせられた時には、常にその矢面に立って「責任はすべて私にある」と守ってきた指揮官は、自ら愛情を込めて「息子たち」と呼ぶ選手たちからさまざまな形で伝えられた、タイトル獲得に対する祝福の思いに表情を綻ばせる。
「最初のタイトルを取るのは難しいと言われる。ガンバの(長谷川)監督も以前はシルバーコレクターと呼ばれたが、一つ取ってからはタイトルを積み重ねていった。私にもそれが起こるといい」
今シーズンの開幕前、ペトロヴィッチ監督は「昨シーズンの結果をすべて上回りたい」とミーティングで檄を飛ばした。ACLはラウンド16で敗退したものの、国内三大タイトルでは準々決勝で新潟の前に敗退したYBCルヴァンカップ(当時ヤマザキナビスコカップ)を超えた。残るJリーグチャンピオンシップは準決勝で姿を消し、天皇杯では準優勝だった。指揮官の目標成就は、すなわち2000シーズンの鹿島、2014シーズンのG大阪に次ぐ史上3チーム目の国内三冠獲得へ限りなく近づくことを意味している。クラブにとっては2007年のACL以来となるタイトル獲得。ペトロヴィッチ監督が“子供たち”とともに手にした初めての栄冠は、浦和レッズに新時代の到来を予感させるものとなった。
文=藤江直人