7年と6年。ジェフユナイテッド千葉京都サンガF.C.が、それぞれJ2に降格してから過ぎた時間である。

「オリジナル10」として1993年のJリーグ開幕を迎えた千葉(当時・市原)は、2005年と2006年にナビスコカップを連覇するなどクラブとしてのひとつの成功を収めながら、2009年にJ1で最下位となると、翌年からは継続的にJ2での戦いを余儀なくされている。

 一方の京都は、1999年にJ1に初参戦。その後、何度か降格を経験しながらも、その都度、1年、もしくは2年でJ1に復帰していた。ところが、2010年に4度目の降格を味わうと、以降はJ1の舞台に戻れていない。

 J1のクラブというイメージが備わっていたのも、今や昔。両チームともに、すっかりJ2の色に染まってしまった感は否めない。

 そんな両者の対戦が、10月8日に千葉の本拠地・フクダ電子アリーナで開催された。今季の昇格争いも佳境を迎えるなか、J1復帰への気概を示したのは、アウェーの京都のほうだった。

 昨季は17位と、J1どころかJ3への転落もにわかに現実味を帯びた京都だったが、今季はこの千葉戦を迎える前の第34節終了時点で6位(13勝7敗14分)と、昇格プレーオフ進出圏内に留まっていた。

 好転の要因は、守備の安定に見出せる。第34節を終えて失点30は、リーグ3位の少なさ。開幕前にGK菅野孝憲(前・柏レイソル)らJ1でも経験豊富な実力者を獲得したのに加え、2年目を迎える石丸清隆監督のスタイルも浸透。7敗という数字が示すとおり、「負けない」チームへと生まれ変わったのだ。

 もっとも、「負けない」=「勝利」とは限らない。14引き分けはリーグで3番目の多い数字であり、「勝ち切れない」ところが、今季の京都の悩みの種だった。失点が少ないのに勝てないのは、つまり得点が取れないということ。とりわけ直近の5試合で無得点という貧打が響き、6位の座を確保することさえ危うくなっていた。

 そんななかで迎えた千葉戦は、「5試合得点のないなかで、プレッシャーを感じながら戦ったゲームだった」(石丸監督)のは間違いないだろう。ところが、その重圧は開始早々に消え去ることとなる。キックオフから2分、MF堀米勇輝があっさりと先制ゴールを奪うと、ノーゴールの呪縛から解き放たれた京都は、そこからアグレッシブな戦いを展開。24分に相手DFがもたついた隙を逃さず、FWイ・ヨンジェが追加点を奪い、後半にもFWダニエル・ロビーニョが冷静にPKを沈めて、最近の戦いが嘘のように見事なゴールラッシュを演じてみせた。

「前に行けということは、ずっと監督から言われていたんですが、これまでは僕たち選手が考えすぎてしまった」

 そう振り返るのは、今季京都に加入したFWエスクデロ競飛王。ボールを大事にしすぎるあまり、思い切ったプレーができず、得点を取れなかったのがこれまでの戦いだった。しかし、この日は奪ったボールに手数をかけずシンプルに縦に入れ、素早い攻撃を実現。ボールポゼッションはおそらく千葉のほうが勝っていたが、「前へ」の意識を保ち続けた京都が、チャンスの数では大きく上回った。

 一方で持ち前の守備も、最後まで危なげなかった。とりわけ際立っていたのは堀米、ダニエル・ロビーニョの両サイドハーフの動きだ。ボールを奪えば一気に前に飛び出し、相手ボールとなれば素早く帰陣。サイドバックとともに相手のサイド攻撃をしっかりとケアし、ボランチとCBを中央のポジションに留まらせた。この真ん中を空けない守備こそが、京都の堅守の肝だろう。ともにゴールを奪ったことも含め、攻守におけるこの両サイドの献身こそが京都の原動力となっていた。

 終わってみれば3-0のスコアで、6試合ぶりに勝利を挙げた京都。この日、7位のFC町田ゼルビアが敗れたことで、勝ち点差は7に広がり、昇格プレーオフに大きく前進した。

 その昇格プレーオフを見据えれば、やはり守備力が京都の強みとなりそうだ。昨季のアビスパ福岡も堅守を軸にプレーオフを勝ち上がっていったが、1発勝負の戦いでは第一に守備が崩れないことが肝要となる。加えて、この日魅せたようなシンプルかつスピーディな攻撃が機能すれば、J1返り咲きのシナリオも十分に実現可能だろう。

 一方で不甲斐なかったのは千葉だ。勝ち点8差の10位で迎えた京都との直接対決は、勝てば5ポイント差となり追撃態勢を整えられたはずが、敗れたことによりその差は11に拡大。数字上では可能性を残すが、逆転でのプレーオフ進出は現実的には厳しいと言わざるを得ない。

「まだチャンスがあるっていうふうに受け止めるのが正直難しい。この試合の重要性をかなり感じていましたし、3ポイントがどっちにいくかによって、プレーオフに向けて状況が大きく変わるところだった。3ポイントを取れずに、逆に京都に3ポイントを取られた。今は自分のなかで整理がつかない」

 長年チームに在籍するベテランのMF佐藤勇人は、唇を噛んだ。

 勝つことで可能性を高められる重要な一戦だったにもかかわらず、開始早々にゴールを奪われ、集中力を欠いたかのような対応から失点を重ねていく。反撃の機会もままならず、チャンスもほとんど作れない。試合後にゴール裏のサポーターが怒りを爆発させたのも致し方ないパフォーマンスだった。

 イビツァ・オシム監督のもとで、栄光を勝ち取った時代は、もはや色あせてしまった。すっかりJ2の住人となってしまった千葉の現状に、得も言われぬ詫(わ)びしさを覚えた。

原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei