47分、ヘディングシュートでゴールネットを揺らした谷口だったが……。無情にも荒木主審の判定はノーゴールだった。 写真:徳原隆元

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[J1第2ステージ12節]鳥栖2-3広島/9月17日/ベアスタ
 
 1点ビハインドで迎えた47分、直接FKを谷口博之がヘディングシュートで合わせ、ボールは広島ゴールに吸い込まれる。谷口を中心に歓喜の輪が広がり、ベストアメニティ・スタジアムにも「ゴーーーール!!!」とホームチームの得点を告げるアナウンスが一度は流れた。しかし――。 清水崇之線審はオフサイドを取り、荒木友輔主審はノーゴールと判定した。

【鳥栖2-3広島 PHOTO】 塩谷の豪快無回転シュートが炸裂!フィッカデンティ監督が退席処分に

 キッカーのキム・ミヌがボールを蹴る直前、谷口と豊田陽平はポジション取りでDFと駆け引きしている。そして、豊田がニアに動いて相手を引き付け、空いたスペースで谷口がフリーでシュートを放つのだが、キム・ミヌのキックの瞬間、谷口がわずかに広島の最終ラインよりも後ろにいた、とみなされたのだ。

 後ろからのリプレーとやや斜めからのリプレーを併せても、どちらにも見えてもおかしくないタイミングだったが、密集地帯を目の前で見ていた線審は毅然とオフサイドフラッグを挙げた。鳥栖はゴールが幻に消えて「チームが下を向きつつあった」(福田晃斗)。その後、一気に崩れて2失点したことを考えても、影響は大きかった。
 
 マッシモ・フィッカデンティ監督は、ノーゴール判定を不服として猛抗議。テクニカルエリアを飛び出してピッチに足を踏み入れ、退席処分を受けた(その後は木谷公亮コーチが指揮)。ピッチを出た後も怒りが収まらず、関係者の抑制を振り切ってメインスタンド下の通路で抗議を続けたが、判定が覆ることはなかった。谷口によれば、指揮官は試合後のロッカールームでこう話したという。
 
「イタリアでもしこんな判定ミスが起こったら、大変なことになっているぞ」

 谷口も「(試合)全体的に審判と戦ってしまった」と反省しつつ、それでも判定や審判のあり方について想いを吐露せずにはいられなかった。
「3失点してしまい、(自分たちで)上手く感情のコントロールができなかった部分があったのは確かですけど……得点(が取り消された)シーン以外にも不可解なところはあった。ホームでこういうことをされるのは厳しい。僕ら選手は(抗議やラフプレーなどで)処分されて試合に出られないことがある。もちろん人間だからミスはあるとはいえ、僕らは1試合に人生が懸かっていると言っても過言じゃない。だから、(審判にも)それぐらいの責任でやってもらいたい」
 
 第2ステージ10節終了時点で首位と1ポイント差の3位につけていた順位も、前節・浦和戦に続く敗戦で7位(首位と7ポイント差)に後退。鳥栖はステージ優勝がかなり厳しい状況に追い込まれてしまった。Jリーグの今後の発展を考えれば、谷口の言葉に耳を傾けるべき部分はあるだろう。

 もっとも、選手はプレーで語り、物事を証明していかなければいけない立場。3点ビハインドから自身のゴールを含め2点を取って追い上げた現実をプラスに考え、次の試合に向けて歩みを進めるしかない。

取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)