パリ北部にある丘、モンマルトルにそびえる白亜の聖堂「サクレ・クール」。

ユトリロをはじめとする多くの芸術家たちがこの聖堂に魅せられ、その姿を描いてきました。

近年では、2001年に公開し大ヒットしたフランス映画「アメリ」の舞台となったことでも知られています。

「サクレ・クール」とは「聖なる心」という意味。

普仏戦争やパリ・コミューンの崩壊で亡くなった市民の慰霊を第一の目的に建設されたもので、40年の歳月をかけて1919年に完成しました。

凱旋門やルーブル美術館といった名所がひしめく観光の中心部からやや外れたこの界隈は気取らない下町的な雰囲気があり、ノスタルジックなパリが味わえます。

ふもとから聖堂までは長い階段をのぼる以外にケーブルカー、「フニキュレール」を利用することもできます。

フニキュレールの切符はメトロと共通なので、1枚単位で買う場合は1.8ユーロ、カルネ(回数券)利用の場合は1.4ユーロと料金も手頃。


ケーブルカーで坂を上るのはちょっとしたアトラクション気分で楽しいので、上りはフニキュレール、下りは階段を利用するのがおすすめです。

パリのいたるところからその姿を望むことができますが、いざ間近でみるとその大きさ、存在感に圧倒されます。

パリでは珍しいビザンチン様式の3つのドームが特徴的で、パリの他の教会とはまったく異なる印象を受けます。

純白の外観のみならず、その内部も実に印象的。

なかでも圧巻なのが天井や壁面に施されたモザイク画です。

キリストの聖なる心とそれをたたえる聖母マリアを題材にした中央の丸天井のモザイク画は世界最大級の大きさ。

離れてみると普通の天井画のように見えますが、実際には一つひとつの小さな角片が一体となってひとつの絵画を形作っています。

丸天井のモザイク画に近づいて見ることはできませんが、私たちの目線に近い壁面のモザイク画を観察してみるとその様子がよくわかります。

その精巧さと色鮮やかさにはただただ感嘆するしかありません。

壁面や床も色大理石を用いた装飾が施された豪華なつくりになっています。

さらにはまばゆい光を放つステンドグラスや穏やかな表情を浮かべた聖人たちの像の数々…

これほどさまざまな要素で彩られていながらも不思議と派手な感じは一切なく、感じられるのは純粋さと神聖さなのです。

侵しがたい厳かさをたたえながらも、優しさと温かさを兼ね備えた独特の雰囲気がそこにあります。

パリの人々を癒すために造られたからなのでしょうか。

そのたたずまいにはパリの街を優しく見守る大いなる母のような慈悲深さが感じられます。

聖堂を見学した後は、大聖堂前のテラスからの眺望を楽しみましょう。

パリでもっとも高い丘に位置するだけあって、市街を一望することができます。

歴史的な景観を守るため建物の高さに制限が設けられているパリでは、高層ビルが郊外に限定されているのが高台から見るとよくわかりますね。

さらに高いところからの景色を眺めたいという場合は、有料(6ユーロ)で聖堂のドームにのぼることもできます。

大聖堂前の公園は、白亜の聖堂と緑の芝生のコントラストが美しい絶好の撮影スポットとなっていて、観光客や地元の人々が思い思いにくつろいでいます。

外から見ても、中から見てもその美しさに心奪われるサクレ・クール聖堂。

パリに行くなら絶対に外せないスポットのひとつといえるでしょう。

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