新華社によると、スリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相は14日、中国資本によるコロンボ港整備工事の再開を認めることを明らかにした。シリセナ大統領は中国との関係を再検討する動きを見せていた。(イメージ写真提供:123RF。コロンボ港の様子)

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 新華社によると、スリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相は14日、中国の易先良駐スリランカ大使に、中国資本によるコロンボ港整備工事の再開を認めると通達した。中国はスリランカと、前ラジャパクサ大統領時代(在任:2005年11月-15年1月)の時代に密接な関係を構築したが、後任のシリセナ大統領は中国との関係を再検討する動きを見せていた。

 中国の存在は南アジア情勢にも大きく影響している。まず、南アジアの政治情勢を決定する最大の要因は、インドとパキスタンの対立だ。両国は1947-48年、65年、71年と、領土問題と東パキスタン(現:バングラディシュ)独立を巡り、第1-3次の印パ戦争を戦った。カシミール地域における国境紛争は現在も続いている。

 中国とインドの間では、領土問題やインドがダライラマの亡命を認めたことなどにより、1962年に戦争が勃発した。国境を巡る中印の対立は現在も続いており、インド側が「中国軍が実効支配ラインを超えて進出」と非難することも珍しくない。

 中国は一方で、インドと敵対関係にあるパキスタンと極めて親密な関係を構築してきた。カシミール地区における国境紛争でも、中国はパキスタン側が自国領と主張する領域について自国側の主張を取り下げることで中パの国境問題を終結させた。

 スリランカは歴史や文化でつながりが強い近隣の大国のインドと、良好な関係の維持に努めてきた。スリランカと中国が急速に接近した場合、南アジアでの政治・軍事のバランスが変化する可能性もある。また、中国はスリランカをインド洋における自国海軍の寄港地として利用しようとしている可能性が高い。

 中国からの“ラブコール”に応え、スリランカのラジャパクサ前大統領は両国の密接な関係を構築したが、中国資本絡みで進めた港湾などインフラ整備計画が「汚職がらみ」との批判を受けた。三選を禁止していた憲法を改正してまで臨んだ2015年の大統領選でシリセナ大統領に敗北したのは、露骨な親中政策や独裁・汚職体質に対する国民の批判が本人の想定以上に強かったからとされる。

 シリセナ大統領は就任直後の2015年3月に、中国企業の中国交通建設集団が投資して進めていたコロンボ港の整備工事について、「手続きに不備があった」、「環境評価が必要」との理由で、許可を取り消した。約1年後の16年3月14日になり、「9日の閣議で、工事を進める諸条件が整ったとして、再開が認められた」として、首相名義で中国の易駐スリランカ大使に、工事再開を許可する旨を伝えた。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF。コロンボ港の様子)