在日韓国人2世で政治学者の姜尚中(カン・サンジュン)東京大学教授が25日、東京都世田谷区の区民会館で「私と日本と韓国・北朝鮮」と題する講演を行い、「日本ではメディアが2分法で論じるため、極論がはびこっている。また、極論は『画になる』とする向きもある」と話した。

 姜氏は「“悪の枢軸”と言われる北朝鮮も、建国時にさかのぼれば、最初から今までずっと悪いわけではない。違うものが見えてくる」と指摘。無辜(むこ)の市民を拉致した北朝鮮に弁解の余地はないが、それを完全否定して向き合わなかったり、語り合うに値しないと決め付けることは解決にならないとした。

 その上で「プロのジャーナリスト、学者、専門家が正しい判断をしているわけではない。素人市民でもきちんと歴史をおさらいして、妥当性を考えることで、適切な判断ができる」と、メディアには事実無根のことも流れることに注意を促した。

 また、6カ国協議について「非常に長いプロセスになるかもしれないが、北朝鮮問題は6カ国協議で解決できる。金正日が3代目を身内から選んだら話は別だが、(強権政治だった)台湾のように変わっていくのでは」と述べた。南北和解が実現した場合については、「日韓朝に非核地帯ができ、日本の非核三原則を生かせる。日本国憲法の理念をこの地域の安全保障に応用もできる」と、護憲が保守的だと見られる傾向に、独自の視点から意見を提示した。

 姜氏は世田谷市民大学開校25周年記念事業で特別講師として招かれた。【了】