【北陸新幹線】地元への利益誘導!? 福井県延伸に自民党大物議員の影
北陸新幹線の金沢―長野間が3月14日、延伸開業した。東京―金沢間が最速2時間28分で結ばれ、経済波及効果は約200億円と見積もられている。
「金沢開業は悲願だった。100年に一度の節目となる」
と、谷本正憲・石川県知事は期待を込めて語り、実際、観光客の急増が見込まれるのはもちろん、移動時間の大幅な圧縮で企業進出も相次ぎ、金沢駅周辺は急ピッチで開発が進んでいる。
優先される「政治家の事情」整備新幹線は、「地元の事情」もさることながら「政治家の事情」も優先され、費用対効果の面で、「本当に必要なのか」と指摘されるような路線が少なくない。
だが、北陸新幹線は、地元の期待も経済波及効果も「地方創生」という政治家の思惑も、それなりに満足させるものだった。
ところが、“その先”には疑問符がつく。
2022年度までに開業される金沢―敦賀間である。本来、2025年度だった開業を、金沢人気に煽られるように3年前倒しにした。
それだけでも、相当、無理な予算編成だったのに、政府・与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチームのなかには、敦賀までの間にある福井県の県庁所在地の福井市までを先行開業させようという動きがある。
中心となっているのが、同プロジェクトチームの座長で福井県選出国会議員の稲田朋美・自民党政調会長だ。
「東京オリンピックが開業する20年までに福井延伸を!」安倍晋三首相と波長が合うタカ派議員で、その覚えもめでたく閣僚を歴任、昨年9月には当選3回で党3役の政調会長に就いた。
「将来は日本のサッチャー(英元首相)」と、期待する向きもある。
弁護士出身の改革派で利権誘導的なことはしない政治家と目されていたのだが、新幹線となると話は別らしい。
「東京オリンピックが開業する20年までに福井延伸を!」と声を上げ、決まってはいないものの検討課題となった。
だが、そもそも福井―東京間に、北陸新幹線が必要だろうか。
「東京から長野経由で大回りするより、在来線で米原まで出て、東海道新幹線を使った方が安くて早い」
こんな現実的な声があがるなか、折り返しの施設整備をしなければならない福井先行延伸に、どれだけの効果があるかを、理論派の稲田政調会長は再考した方がいい。
伊藤博敏ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある