浦和レッズサポーターのブーイング騒動　応援する側にも「伝える努力」が必要

2015年3月8日 7時0分

サッカーのアジア王者を決める大会、アジアチャンピオンズリーグにおいて、日本勢の苦戦がつづいています。4日に行なわれた1次リーグG組、浦和レッズVSブリスベン・ロアー戦においては、ホームで敗れた浦和の戦いぶりにサポーターからブーイングも飛び出しました。

その際、試合内容やブーイング以上に議論の的となったのは、これに対する選手たちの反応でした。試合後の報道によると、「試合中のブーイングは選手としても一緒に戦っている気分にはならないので、少し残念」「俺たちを応援してくれよ」など、選手側からブーイングに苦言を呈するかのようなコメントが出たといいます。

不甲斐ない戦いぶりに対してブーイングをする光景は、浦和レッズに限らず見られるものです。その是非についての意見は、応援する側でも、応援される側でもさまざまです。「不甲斐ない戦いにはブーイングをして当然」という意見もあれば、「劣勢のときほど前向きに応援すべき」という意見もあります。ブーイングをチカラに変える選手もいれば、今回のように前向きな応援を求める選手もいるでしょう。

同じような議論を呼んだ事例として、テニスのクルム伊達公子さんの「ため息」事件が挙げられます。試合中のミスに対して「ため息」を漏らす日本の観客に苦言を呈し、「ため息ばっかり！」「プレーが気持ちよくできるよう、ため息のないサポートをお願いします」などのメッセージを発信した伊達さんのケースも、今回のブーイング事例と同類のものでしょう。選手の求めるサポートの在り様と、観客の行動とがマッチしていないという意味において。

いずれのケースも、根底には応援の気持ちがあるはずです。贔屓のチームに勝ってほしいからブーイングもするし、贔屓の選手に勝ってほしいからミスに落胆もするのでしょう。それ自体はごく自然な反応であり、試合を楽しむ行為の一部と言えるものです。ただ、結果的にその想いが届かないケースはあるということです。いかなプロフェッショナルと言えども、すべての選手が罵倒・落胆・失望を含めたあらゆる反応を自分のエネルギーに変換できるわけではないのです。

結局これはブーイング自体の是非ではなく、コミュニケーションの問題ではないでしょうか。

子どもに対する躾や、新入社員に対する指導・研修などでも、叱ればいいというものでもなければ、褒めればいいというものでもありません。「伝える」という最終目的を果たすために、アプローチの仕方は変えていくべきものでしょう。結局、相手に真意が伝わらなければ「愛のムチ」は「タダのムチ」になるのですから。

その意味では、ブーイングという応援スタイルの是非を考えるよりも、「この選手には今、ブーイングが効果的なのか、前向きな激励が効果的なのか」の見極めに注力するほうが建設的。「ブーイングで奮い立たないヤツはプロじゃない」などというマッチョな価値観を押しつけても、選手との関係がこじれるだけで、せっかくの応援も逆効果でしょう。

サポーター側からクラブやリーグのエライ人に「説明不足」を指摘するケースとは逆に、今回は選手側から「応援の気持ちが伝わってこないんだよね」という説明不足を指摘されたケースと捉えてはどうでしょうか。選手の理解力を嘆くだけでなく、応援する側にも「伝える努力」が必要でしょう。

伝わるブーイングは是であり、伝わらないブーイングは非なのです。その意味で、とりあえず「ブー」と言うのは止めて、言葉で伝えたほうが効果的かもしれませんね。