UAE戦、さらに言えば、後半18分に交代したイラク戦も、遠藤が下がる前より、下がった後の方が、日本のサッカーは良くなっている。アジアの格下(ヨルダン、パレスチナ)はともかく、中堅クラス(UAE、イラク)との戦いに大きな活躍ができなかった事実を踏まえると、今回のアジアカップが代表での最後のプレイになる可能性は少なくない。

本田 4年前のアジアカップより、若干パワーダウンしたかに見えるが、半年前、ブラジルW杯時に比べると、状態は大幅に回復した。得点の予感を最も抱かせる選手、シュートを飛ばす能力に最も長けた選手。まさに大黒柱として活躍した。今回のチームは本田で持っているようなもの。まさに本田ジャパンだった。オレオレ的なプレイを見せる反面、右ウイングの位置をカバーしながら、ゴール前に進出していく秀逸なポジション感覚も発揮。攻守のバランス維持に貢献した。日本代表から本田がいなくなるとどうなるか。心配になる。

乾 つい、右の本田に比べてしまうためその未熟さ、淡泊で単調な動きは余計に目立ってしまった。1、2戦では、ボールが来ないといたたまれず、ザックジャパン時代の香川のように、中に入ってしまい、全体のバランスを乱す原因になったが、3戦、4戦では、そうした癖は解消。バランス維持に貢献した。が、彼によいボールが出る機会は少なかった。逆サイドでフリーの状態であっても、だ。それは彼の問題というより、中盤の乏しい展開力に負うところが大きい。

岡崎 得点は4試合でわずか1。物足りない数字に見えるが、相変わらず貢献度は高かった。技術的にも、少しずつではあるが、相変わらず進歩を遂げている。しかし、スタメンを張れている最大の理由は、ライバルがいないことだ。岡崎以上の選手が現れないと2018年は苦しい。

柴崎 アギーレの監督就任とともに代表入り。スタメン出場を飾った。が、10月にシンガポールで行われたブラジル戦を機にベンチ要員に。遠藤にポジションを奪われることになった。原因は、ブラジル戦での、まずいボールの奪われ方にあったと考えられる。Jリーグという緩い環境の中でプレイしている弊害を見た気がするが、交代出場した今大会でも、甘いプレイは散見された。が、その一方で、パスセンスも披露。遠藤に代わって交代出場した準々決勝のUAE戦では、けれんみのないプレイで、チームを活性化させた。遠藤との違いは、パスの長さ。逆サイドまで目が届く視野の広さと展開力にある。甘さの解消が急がれる。

今野 遠藤に代わって出場したイラク戦で存在感を発揮。ドタバタとしていたチームに、安定感をもたらした。アギーレ式4−3−3は、前にも述べたがビルドアップの段になると、長谷部が最終ライン近くまで下がる。中盤フラット型3−4−3に近いものになる。だが、4(中盤)の真ん中に位置することになる遠藤と香川は攻撃型の選手。センターハーフ的ではない。なので、その3-4-3の4は、フラットというより上方向に反ったアーチ型を描きやすくなる。最終ラインとの間に、スペースができやすい傾向がある。イラク戦の今野は、そこを上手く埋めた。繋ぎも円滑になった。しかし、その試合終了間際、今野は負傷。貴重な戦力を失うことになった。

武藤 乾にスタメンの座を奪われ、交代要員に甘んじた。グループリーグまでは、交代の一番手の座も清武に奪われた。FWとして5番目の選手だった。デビュー当時より評価を下げた恰好だったが、最後のUAE戦では、清武を抑えて出場。若干盛り返すことに成功した。悪くはないが、絶対的な武器がない。何でも起用にこなすが、得意なパターンがまだ見えない。下からの追い上げがないので、今後も代表に選ばれるだろうが、このままでは、日本のレベルアップに貢献できそうもない。

豊田 交代選手として2試合(パレスチナ戦、UAE戦)に出場。UAE戦では惜しいプレイもあったが、方向違いのヘディングで決定機も逃している。答えを出せずに終わった。最後の選手として一か八か投入される選手から、どんな状況でも、交代の選択肢になる選手に順番を上げたかといえばノー。もう少しプレイの幅、ボールの絡み方を多彩にしたい。

清武 アギーレ就任後、初招集。初戦パレスチナ戦では後半の頭から、交代の一番手として出場した。アギーレは期待を持って送り出したわけだが、4戦目のUEA戦では、出番に恵まれず、尻すぼみに終わった。横には動くが縦がない。乾に代わって出場した時は、怖さをアピールできなかった。パレスチナ戦では、途中から、遠藤のポジションでも試されたが、それと同時にチームは失速。インサイドハーフ、左ウイングとも、適性がない印象を受けた。どこで起用されれば、力を発揮するのか。依然として五里霧中の状態にある。