試合を重ねることで生まれた自信が、苦しいときも慌てず、最後まで自分たちのサッカーを押し通すことを可能にした。勝たなければいけない試合に勝ち、点を取らなければいけない試合で点を取る。これまでならば、重圧に押し潰されていたシーンを、今大会の日本は何度も跳ね返した。それは技術的、戦術的な進歩によるところも大きいが、なによりも「精神的にタフになったこと」(オフト監督)が、日本代表をたくましく変身させた。
 今大会をもって日本代表の年内スケジュールはひとまず終了する。ナビスコカップ決勝、天皇杯を経て(一部選手はアジアのカップ戦に出場する)、W杯予選の再スタートは2月からの予定だ。2月に欧州遠征(イタリア)、3月にはキリンカップで各国の代表チームを呼び、インターナショナルAマッチを行なうことになっている。
 
「優勝はしたが、力の差は感じていない。我々には、まだやらなければいけないことがたくさんある」
 
 優勝決定後の記者会見で、オフト監督は語った。ほんの数分前まで笑顔だった監督は、ワールドカップ予選に対する質問になると、途端に厳しい表情に変わった。
 
 西アジア各国と対戦し、ワールドカップ予選に向けて、自分たちの力がどの程度かを確かめることに目標をおいた大会は、優勝という最高の成績で幕を閉じた。だが、それはアジア各国もまた、日本の力を認識したことを意味する。
 
 ビクトリーランを終えて控室に戻ると、選手たちは意外に淡々としていた。
 
「目標はもっと上にある。それに辿り着くまでは、ガムシャラにやり続ける」
 誰よりも厳しいマークを受けたカズは、そういって頬を引き締めた。準決勝終了後、笑うのは優勝してからと語っていた福田も、もう普通の表情に戻っている。
 
 この優勝で、ワールドカップ予選での日本は、さらに厳しいマークを受けることが確実となった。
 
 また、手応えを掴んだ国もある。帰国早々、中国のシュラップナー監督は、「アメリカに行くのは我々だろう」と語っているし、UAEのロバノフスキ監督も「予選までには攻撃が完成する」と、不気味な笑みを浮かべていた。
 
 UAEで行なわれるワールドカップ予選の第2ラウンドには、広島のような熱狂的な応援は望めない。これまでとまったく逆の、守備的に試合を進めることも、必要となってくるだろう。
 
 ただ、ひとつ言えることは、今大会で日本は、日本しか掴むことができないもの、自信を得ることができた。