安倍改造内閣の目玉「女性大臣」が「火だるま」状態 小渕経産相は絶体絶命、松島法相も危なく、そして次は...
第2次安倍改造内閣の目玉のひとつだったはずの女性登用が、内閣の屋台骨を揺るがしかねない皮肉な事態に発展している。小渕優子経産相の政治団体が後援会関係者向けに開いた「観劇会」で費用の一部を負担していた疑いが出ている上、その額も報道機関の調査が進むにつれて膨らんでいる。
松島みどり法相は、選挙区内でうちわを配布していたことが問題視され、民主党議員が公職選挙法違反の容疑で東京地検に刑事告発した。法相が刑事告発されるのは異例で、5人いる女性閣僚のうち2人に進退問題が発生するという珍しい状態だ。
女性5人起用で「社会に変革が起こる」と自信満々だったが...
安倍首相は第2次改造内閣発足直後の2014年9月3日に開いた会見で、
「数ありきではなくて、5人が今までの最高だったから5人にするという考え方では必ずしもない」
としながらも、5人の女性閣僚に、
「この閣僚の中で女性の皆さんがしっかりと重要な仕事をやり遂げていくことによって、社会に変革が起こるということを確信している」
などと期待を込めた。これが裏目に出たのか、わずか40日後には、そのうち2人が早くも火だるま状態だ。
最初に火がついたのは松島氏。松島氏は12年から14年にかけて、選挙区(衆院東京14区)内のイベントで「経済産業副大臣・衆議院議員松島みどり」「法務大臣・衆議院議員松島みどり」といった肩書入りのうちわを配っていた。これは、公職選挙法が禁じている選挙区内の有権者に対する寄付行為にあたるとして、連日のように国会で問題視された。10月17日には民主党の階猛(しな・たけし)衆院議員が公選法違反の疑いで松島氏に対する告発状を東京地検に提出したと発表。「法の番人」が捜査対象になりかねない異常事態だ。
観劇費用を補てんしていれば「法律に引っかかるという認識は持っている」
一方の小渕氏は、10年と11年に後援会関係者向けに開いた「観劇会」で、収支報告書の収入と支出に約2600万円のズレがあることが10月16日の週刊新潮の報道などで明らかになった。仮に観劇費用の一部を小渕氏側が負担していたとすれば、有権者への利益供与を禁じた公職選挙法に違反する疑いがある。
小渕氏の方が、松島氏よりも「外堀が埋まっている」と言えそうだ。16日の参院経済産業委員会では、小渕氏は
「まず、実費を皆さん方が納めていただいているかどうかというところ大事なところではないかと思うし、私の方で、それを補てんしたということになれば、法律に引っかかるという認識は持っている」
と、調査結果によっては自らに責任が及ぶとの見解を示しており、翌17日の衆院経済産業委員会で12年の観劇会の収入と支出が同年の政治資金収支報告書に記載されていないことを指摘されると、
「知らなかったでは済まされないという思い」
と、一歩踏み込んで自らの監督責任にも言及した。
小渕氏は、現時点では「調査中」の一点張りだ。10月17日の朝日新聞朝刊によると、05年から11年の「観劇会」の収入と支出の差額は約5330万円におよぶ。「調査」の範囲は広がる見通しだが、いつまでも「調査中」で逃げ切るのは困難だとみられる。
進退問題は安倍首相が帰国する週末がヤマ?
このまま事態を放置すると、安倍首相の任命責任も問われかねないが、安倍首相はアジア欧州会議(ASEM)首脳会議出席のためイタリア・ミラノに滞在中だ。菅義偉官房長官によると、17日夕方の会見時点では小渕氏の問題について菅氏と安倍首相はまだ連絡をとっていないという。安倍首相は18日午後に帰国予定で、両大臣の進退問題は週末が「ヤマ」になりそうだ。
残る女性閣僚3人も安泰というわけではない。山谷えり子拉致担当相や高市早苗総務相は、過去に極右団体幹部と写真に納まったことが問題視された。有村治子女性活躍相は10月7日の参院予算委員会で、過去のエッセーで共働きに否定的な主張をしたとして民主党の蓮舫元行政刷新担当相から追及を受けている。仮に松島氏と小渕氏の問題を切り抜けたとしても、安倍内閣には各所に火種がくすぶっていることになる。
内閣改造の時点で、衆院5期以上、参院3期以上とされる「入閣待機組」は60人以上いたとされる。5人の中にはこの60人を押しのけ、言わば「下駄をはかされる」形で入閣したと指摘される人も複数いる。こういった女性登用の経緯があるだけに「この状況は予見されていた」と党内の不満も高まりかねない。