■クラブが増えてきたら東西分割という構想も

1月29日、Jリーグは東京都内でJ3の開催概要などに関する記者会見を開催した。

「J3の創設はまさに百年構想を具現化する施策」と語った大東和美チェアマンは、「J3についてはちょっと前からずっと作りたいと思ってやってきた」と語り、退任間近での最後の仕事について力を込めて語った。

いくつかキーとなりそうなワードがあったので拾っておこう。まずクラブ数については、「J3については(12チームでのスタートとなるが)14、16というところまでは増やしていけると思う。12という数字にこだわってはいない」と明言。「多数のクラブから(参加の)希望がある」とチェアマン自ら語ったように、このJ3参加クラブは希望してきたクラブを一定数はね除けて決まったもの。将来的な拡充は元より議論の対象だったが、拡大の方向が公の場で明言されることとなった。

また、「将来的にJ4創設というのは考えておらず、クラブが増えてきたら東西分割という構想がある」とも語った。47都道府県すべてにJクラブのある「100クラブ構想」を一つの目標としているJリーグだが(今季は36都道府県51クラブ)、J4への拡大は否定。縦方向ではなく水平方向に広げていく構想を明らかにしている。J3に下から上がってくることはあっても、J3から下へと成績によって転落することはない、かつてのJ2のような「降格のないリーグ」という位置付けになるということではないだろうか。

もちろん、大東チェアマンが会見の席上でも強調したように「1月で退任することが決まっている」立場からの発言ではある。ただ、ことJ3に関してその方向性は当面変わらないだろう。基本は拡大路線であり、そしてそれは水平方向へのクラブ数拡充ということになりそうだ。

■U-22選抜の高畠監督「できるだけメンバーは固定したい」

またこの会見ではJリーグ・U-22選抜の高畠勉監督、このプロジェクトを推し進めてきた原博実JFA専務理事も登壇。「やるからには優勝を目指す」と語った高畠監督の威勢の良いコメントが自然と強調されることとなったが、原専務理事も熱を込めてこのチーム結成の意義を語った。

特に強調されたのがリオ五輪代表に対する危機感である。先のAFC・U-22選手権では準々決勝でイラクの前に敗退。「日本の選手が持っている個人能力はイラクにも負けないものがあると思っている」と語りつつ、「経験」の差が大きかったことを強調。「向こうはA代表に選ばれている選手が10人もいる。こちらはJ2で出ているか、J1で出ているかどうかという選手ばかりだった」と語り、「実戦経験の場が大事」と語った。

とはいえ、「J1で出ているかどうかくらい」と、「J3で試合に出る」効果の間に果たしてどれほどの差が生じるかは、正直な話、やってみないと分からない部分も多い。ただ、当初は各クラブの有望選手をローテーションして起用するのではないかと見られていたチームについて「それはない」と明言した意味は小さくない。

「そうはいかない場合もあるのは分かっているが、できるだけ固定したい。あくまで選べる選手の中のベストを選ぶ」と、可能な限り“五輪代表”に近いメンバーで戦うことを示唆したわけで、何となく集まって何となく解散し、チームの位置付けが曖昧になったままダラダラとシーズンを過ごすような心配はなさそうだ。W杯中断期間中もJ3リーグは開催されるだけに、この期間中に関してはほぼベストの布陣をそろえて試合をこなすことも可能だろう。この会見を通じて、U-22選抜が「五輪代表強化」を最大目的とするチームであるということは明確になった。

■著者プロフィール
川端暁彦
1979年8月7日生まれ、 大分県出身。元「エル・ゴラッソ」編集長。現在はフリーとして活動。