わずか3ヶ月で25万ID登録を突破した『艦隊これくしょん−艦これ−』(以下、『艦これ』)を筆頭に、最近、“ブラウザゲーム”が話題となっている。

文字通り、パソコンのブラウザ上でできるゲームで、ソフトのダウンロードといっためんどくさい作業も必要なし。会員登録後、すぐに遊べる手軽さがウリのブラウザゲームだが、なぜ、ここにきて業界が活況となっているのか?

ファミコン時代から第一線で活躍を続けるゲームライターの野安ゆきお氏はこう分析する。

「ゲーム業界全体の市場は以前より拡大していますが、近年はゲーム専用機のパッケージソフトの売り上げが減少しています。5年ぐらい前まではパッケージソフトだけでも会社全体で利益を出せていたんですが、今はそれが難しいというのが大きな要因でしょう」

特にPlayStation系のゲームは、一昨年、昨年、今年と国内で一本も100万本超えのヒットを出せていないという苦境が続いている。

「その売り上げ減少分を補填しようと、少し前まではメーカー各社がスマホ、タブレットPC用のゲーム制作に乗り出す傾向がありました。日本国内だけで数千万人が所有しているというプラットホームは、やはり魅力的でしたからね。ただスマホ、タブレットPC用のゲーム市場は一気に拡大しすぎたため、供給過多で飽和状態となって一時よりうまみがなくなってきているのが現状。そういった背景があり、今まではブラウザゲームの土俵で戦っていたのは小さなメーカーぐらいだったんですが、最近はメジャーメーカーらも参入し始めました」(野安氏)

その国内のメジャーメーカーが、人気シリーズのブラウザゲーム版を作るのも最近のトレンドになっていると野安氏は言う。

「例えばスクウェア・エニックスなら『キングダム ハーツ』の新作、セガなら『戦場のヴァルキュリア』の新作をそれぞれ出しているんですよ。これには今まで培ってきたそのブランド力を使い、シリーズファンやライトユーザーをブラウザゲームに引っ張ってこようという狙いもあるのでは」

ゲーム専用機ソフトに比べ、ブラウザゲームの開発コストは安く抑えられる。そのため、実験的なゲーム制作にもチャレンジしやすいうえ、ヒット作が出れば利益率も高い。

「今、主流の基本プレイ無料・アイテム課金制の損益分岐点はゲームごとにまちまちではありますが、例えば登録ID数が数万単位だとして、そのうち10%でも課金してくれれば黒字になるという規模だったりするので、『艦これ』のように25万ID突破ともなれば利益率も相当大きいはず」(野安氏)

今が黎明期ともいえるブラウザゲーム。来年、再来年とますます市場は大きくなりそうだ。

(取材/昌谷大介[A4studio])