SKE48終身名誉研究生の松村香織が、5月11日に岩手で開催されたAKB48の握手会に参加した。東日本大震災で被災した復興地を訪れたのはこれが初めてだ。しかし岩手県山田町の子ども達は、まだ会ったことのない松村との間にある出来事によって強いつながりが生まれていたのだ。岩手県のローカルヒーロー・マブリットキバさんが、Google+でこれまで語られることの無かった松村香織と“かおたんちゃん”と呼ばれる女の子のエピソードを綴っている。

“かおたん”こと松村香織が、SKE48の終身名誉研究生になったのは今年の4月13日のことだ。彼女は「AKB48 on Google+」での活動が認められて、AKB48の「ぐぐたす選抜」メンバーに選ばれる。その後も『週刊プレイボーイ』で「SKE48松村香織の今夜も1コメダ “ぐぐたすの輪”」が連載されるなどGoogle+をきっかけに注目を浴びると、SKE48の10thシングル「キスだって左利き」の選抜メンバーに抜擢された。

Google+では運営への不満をぶちまけたり、握手会にインフルエンザにかかったらしいファンがいると「インフルさんはお家にいて」と指摘するなど率直な内容が話題となった。そんな独特のキャラクターや打たれてもめげずに努力する姿が、彼女の魅力だ。それ故に研究生ながらファンも多く、ついに“終身名誉研究生”の称号を与えられたのである。

記者はこれまで彼女に関してその程度の認識しかなかったのだが、マブリットキバさんが5月13日に『kiba maburitto(マブリットキバ) Google+』で「松村香織さんことかおたんには語られなかった物語がある」と明かしたことで、それを改めることとなった。

震災が起きた2011年3月11日からおよそ2か月後の5月22日に、AKB48グループは岩手県大槌町と山田町を訪問してミニライブなどを行った。以降も彼女達は復興支援の一環として毎月1回、6〜7人のメンバーで東北の被災地を訪問しているのだ。

マブリットキバさんは「山田町の子ども達が応援するのは自分の町を訪問してくれたメンバーではなく、被災地訪問と支援は全てのAKBグループメンバーだと認識して応援してくれている」という。「光の当たらないところで、多くのメンバーさんやファンが勇気を与えてくれた」と証言するように、被災地訪問以外でもAKBグループが復興支援に大きく関わっていることが分かる。

そのひとつが、松村香織と後に“かおたんちゃん”と呼ばれるファンの女の子の関係だ。その女の子は被災して家族を失い、思い出の家や品物も全て流されてしまったのだ。恐怖とトラウマからくる症状は生活に支障をきたすほどで、マブリットキバさんが出会ったときには「消えそうなぐらいに心が弱っていた」そうだ。

カウンセリングを受けても改善しなかった彼女の力となったのが、松村香織の存在だった。「傷つき涙しても決して諦めず、自分の夢を追う。そして仲間とファンのために、時には自分を殺してでも訴え続ける」そんな松村香織は彼女にとって憧れだったのだ。

松村香織のファンコミュニティ“かをたんず”のメンバーがその事実を知り、「自分達に任せてください。かおたんに握手会で連番し、伝えます」と動く。そして苦労の末に握手会で松村本人に事情を伝えることができた。松村はコミュニティメンバーを通して、女の子に「怖い時があったら、わたしを思い出して」と励ましのメッセージを伝えた。

憧れの人から励まされて女の子の状態は改善していった。カウンセリングの先生が「素晴らしいです、多くの人が女の子を救った」と驚いたほどだ。その頃から彼女は“かおたんちゃん”と呼ばれて、松村香織やそのファンたちから見守られ続けている。

山田町の子ども達が作っているジオラマ「やまだまち48」(松井玲奈が命名)には、松村香織とファンへのお礼にと「メイド喫茶かおたん」と「ハヤシライス専門店松村屋〜1コメダ〜」の2つのお店が作られた。