最近、リーダーシップ論を耳にする機会が多く、サッカーの岡田武史監督とラグビーの中竹竜二氏の2人にはリーダーという役割・意味で共通点があることに気づきました。それはフォロワーシップ。リーダーシップではなく、フォロワーシップ。自分がグイグイと引っ張っていくのではなく、部下（選手たち）に自ら考えさせ、意見させ、行動させて組織を活性化していくマネジメント手法。

サッカーの岡田武史監督については、このブログの読者の方ならあえて説明する必要もないでしょう。Jリーグで横浜Mなどを率い、日本代表監督としては2010年W杯でベスト16という成績を残した日本人監督しては名将中の名将。日本代表監督時代のエピソードなどはこちらの名言集（≫ カンブリア宮殿で岡田武史が言い放った22の名言 B?
）などにもありますが、本当にたくさんの示唆に富んでいておもしろい人です。

さて、そんな岡田監督ですが、現在は中国の杭州緑城で監督を務めています。ユースなども含めてクラブ全体の全権監督という立場。その中国での苦闘が今週のNumberに載っていたのですが、ここでのマネジメント手法がとても興味深いものでした。

岡田監督が初めて指揮をとった杭州緑城は今季16チーム中12位でシーズンを終えました。浮沈繰り返し、様々な苦しみがあったようなのですが、岡田監督はそのなかでチームに対していくつもの意識改革を行いました。

選手ミーティングを開かせ、自分たちで考えさせる

ある試合で杭州緑城は前半2-0から後半に3点とられるという大逆転負けを喫します。後半に入って急に消極的になったチームに対し、岡田監督は試合翌日に選手ミーティングを開かせます。人任せ、監督任せになると選手は考えなくなる、責任を持たなくなるから意見をぶつけさせて打開をはかりたかったということなのですが、選手たち自らが考える力について岡田監督の考え方はこのコメントに表れています。以下Number 818号から引用。

「自陣で敵が2人いるディフェンスで、ひとりがボールホルダーに行ったら、もうひとりはカバリングを考えたポジションをとれ、と俺は言う。でもボールホルダーがディフェンスに対しておどおどしていたなら、カバリングはいらないという判断も出てくるし、もっとおどおどしている奴だったら2人とも奪いにいけばいい。自分の責任で判断するのが選手。奪いに行ったら、意外とうまくて抜かれるということもそりゃあるよ。

でも最悪なのは、監督がここにいろって言ったからって何も考えずにカバリングしている奴。それは俺に言わせりゃ選手じゃない。日頃の生活で人に言われたことだけやっていたら、試合のなかでも責任をもって判断できなくなる」

これについては、以前の岡田監督の名言記事でも紹介しましたが、「自分の責任でリスクを冒すことが究極のエンジョイ」と言っていたことと同じですね。

選手によく話すんですけど、究極のエンジョイってのは、自分の責任でリスクを冒すことだと。要するに、監督が「ここだ」と行ってる。でも「オレはここだ」。これで成功した時にこんなに楽しいことはないんですよ。



だからギャンブルでね、自分のなけなしの金で賭けてるから、無くなったら大変だ！勝ったらこれで何を買おうかという喜びがあるわけですよね。スポーツはお金賭けないでできるギャンブル。そこが本当の楽しみなはず。最高に面白いところだぞ、ここはと。



言われたことをこなすだけじゃ面白くもクソもないだろうという言い方をするんですけど、でもリスクを冒して失敗したらオレは怒るぞと。怒るかもしれないと
言いますけどね。だからリスクなんですよ、怒られるからリスク。「リスクを冒して失敗しても褒めよう」なんてそれはリスクじゃなくなるんですよ、それは。

また、岡田監督は寮で生活する選手が多いなか、門限を撤廃したり、あらゆることを自分で管理させるようにもしたのだそう。自分たちで考える力をつけさせるために、事前に目的や意味を教えるけどあとは選手に判断させていくというやり方。リーダーシップではなく、フォロワーシップというやり方です。




中竹流の「フォロワーシップ」

ラグビーの中竹竜二氏もまた、フォロワーシップという言葉で知られるひとりです。「日本一オーラのない監督」として、早稲田大学ラグビー部を率いることになった中竹氏の考え方はこう。

「組織の中ではリーダーとフォロワーに分かれます。圧倒的にフォロワーの人数が多いでしょ。だったらフォロワーでも組織を変えることができるじゃないかと
いうのが論理の肝です。いかにフォロワーが組織の中で成長し、組織に貢献できるのかということを考えることです。フォロワーシップがしっかりしていれば、
だれがリーダーであっても組織は機能し、進化し続けます」
http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2009/20090302/9669/9676/

清宮監督というカリスマのあとを継いだ中竹氏は、それまで清宮監督の指導に従っていればいいというチームを自ら考え、行動させる集団にしていきます（ちょっと言い過ぎですが、中竹氏は「劇的に清宮さんとちがうのは、ぼくは相当、学生の意見を聞いています」とも言っている）。練習中に何か問題が発生した時には、「チームトーク」という形で選手たちだけで話し合いをさせたり、「個人面談」を行なって選手と対話し、責任感を植えつけていくのです。

中竹氏のフォロワーシップについては、ここでは書ききれないので興味がある人は中竹氏の本を読んでみると良いかもしれません。

監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利監督に期待するな 早稲田ラグビー「フォロワーシップ」の勝利
著者：中竹 竜二
販売元：講談社
(2008-02-26)
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人を育てる期待のかけ方人を育てる期待のかけ方
著者：中竹 竜二
販売元：ディスカヴァー・トゥエンティワン
(2011-08-16)
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いかがでしたでしょうか？　サッカーでいえば、モウリーニョのような強烈な個性とリーダーシップでチームを率いる人もいるし、一時期のトルシエみたいに、自分がこうだ！と思った型に選手をはめていく監督もいます。フォロワーシップが必ずしも正解だとは限りません。僕はサッカーをみる分にはリーダーシップ型のリーダーが好きですが、自分が働くならフォロワーシップ型のリーダーの方が好きです。みなさんはどうでしょうか？